[今週の日本株]来週のイベントを控えて「勝負」は持ち越し?循環物色で乗り切れるか
トウシル / 2023年6月5日 14時0分
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[今週の日本株]来週のイベントを控えて「勝負」は持ち越し?循環物色で乗り切れるか
日経平均の6月最初の週末は33年ぶりの高値を更新
「月またぎ」で6月相場入りとなった先週の国内株市場ですが、週末2日(金)の日経平均株価は3万1,524円と、3万1,500円台に乗せて取引を終えました。前週末5月26日(金)終値(3万916円)からは608円高、週足ベースでも8週連続の上昇です。
図1 日経平均(日足)とMACDの動き (2023年6月2日取引終了時点)
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/b/f/-/img_bf904b115d8f15735c423622100cf66f93751.png)
あらためて先週の値動きを振り返ると、週初の29日(月)に、3万1,500円台乗せの一段高でスタートした日経平均は、週の半ばにかけて売りに押される場面が目立ったものの、週末の2日(金)に再び上昇に転じて終了しました。
「上昇から下落、そして週末に再び上昇」という展開は前週と似たような動きでしたが、週末の上昇の勢いについては前週よりも強い結果となりました。
2日(金)のローソク足が引けにかけて上値を伸ばして、大きな陽線を形成したこと、終値ベースでもしっかり3万1,500円台に乗せて約33年ぶりの高値を更新したこと、そして、下段のMACDもシグナルの下抜けを回避したことなど、買い意欲の強さがうかがえます。
さらに、2日(金)の現物取引終了後の先物取引市場では、日経225先物取引が大取で3万1,970円、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)で3万1,965円と、3万2,000円台水準まで上昇しているため、今週の日本株は上値を伸ばしてスタートする可能性が高そうです。
こうした足元の相場の強さを受け、相場の解説記事や投資家からのコメントなどを見ると、「日本株が大相場となるのでは?」といった見方が増えてきている印象です。大相場となった際の日経平均の上値目標については、以前のレポートで触れているので、そちらを参照していただければと思いますが、今週の焦点となるのは、上昇スタート後の展開です。
このまま株価上昇の勢いが続くのか、それとも、高値をつけた後にいったん調整や様子見となるのかが気になるところですが、そのためにはいくつかの確認したいポイントがあります。
スケジュール的には週末のメジャーSQと来週の米国イベントに焦点
まず一つ目のポイントはスケジュール感です。今週の国内株市場は、週末の9日(金)にメジャーSQが予定されているため、需給的な要因で株価が上下に振れやすい可能性がある中、経済指標などのイベントは少なく、海外株市場の動きに影響されやすくなりそうです。
その海外市場ですが、米国のISM(サプライマネジメント協会)非製造業景況感指数や、消費者信用残高、中国のインフレ関連指標(消費者物価指数)など、5月分の経済指標が予定されています。
しかし、市場の注目は、6月13~14日に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)をはじめ、米5月消費者物価指数(13日)、米5月小売売上高(15日)などが集中する来週に向かっており、今週は来週に向けての思惑が働いて、方向感が出にくくなる展開、ひとまず手じまいの動きなども想定しておく必要があり、読みにくい状況が考えられます。
循環物色の流れもポイント
仮に方向感が出にくい展開となった場合、今週の日本株は、利益確定売りをこなしてさらに上を目指せる地合いを維持できるかが注目されることになりますが、そのカギを握るのが二つめのポイントとなる「物色銘柄の循環と広がり」です。
図2 6月2日の日経平均寄与度ランキング(6月2日終値ベース)
<値上がり寄与度上位>
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/4/f/-/img_4fede6b152c95cf4c7fb91ee4bbdea4e23187.png)
<値下がり寄与度上位>
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/e/a/-/img_ea436342346968d559308edd33c066a734921.png)
図2は、先週末2日(金)の日経平均に対する寄与度ランキングの上位10銘柄です。上が上昇に寄与した銘柄、下が下落に寄与した銘柄になります。
2日(金)の取引では、最近の相場のけん引役だった半導体関連銘柄の東京エレクトロンとアドバンテストが、そろって下落の寄与度上位にランクインしていることが分かります。つまり、先週末の株価上昇は、別の銘柄の上昇でカバーされた格好です。
では実際に、この2銘柄の動きについて見ていきます。
図3 東京エレクトロン(8035)(日足)の動き (2023年6月2日取引終了時点)
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/c/8/-/img_c825724b3dda33506375955ff423bfe2132011.png)
先週の東京エレクトロンですが、週初の29日(月)に高値(2万600円)をつけた後に伸び悩み、ちょっと失速しているようにも見えます。
また、昨年1月の高値と10月の安値を基準とする「ギャン・アングル」で見ても、8×1ラインが節目となって上値が抑えられたような格好となっており、いったん天井を付けたような格好のため、もうしばらくは押し目を探り、再び上値をトライできるかが注目されます。
図4 アドバンテスト(6857)(日足)の動き (2023年6月2日取引終了時点)
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/d/0/-/img_d00972febdfb29dbbcf91c41e1e85f1c85736.png)
アドバンテストについては、直近の株価上昇で上場来の高値を更新したわけですが、こちらも1万8,000円台が節目となって上値が抑えられている格好です。
先ほどの東京エレクトロンのような失速感は感じられないため、1万8,000円台を上抜けできれば、一段高の可能性も残されてはいますが、上値の重たさを乗り越える買いの強さが求められます。
そして、この2銘柄の株価上昇のきっかけとなった、米半導体関連銘柄のエヌビディアについても見ていきます。
図5 米エヌビディア(NVDA)(日足)の動き (2023年6月2日取引終了時点)
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/2/1/-/img_2108e2cf7fd3cd2b47e5ff81a8741d3c102246.png)
米エヌビディア株も、良好な決算や「AIブーム」への期待感を受けて一段高となった後、400ドルの節目を意識した展開となっています。
また、図5下段の200日移動平均線乖離(かいり)率を見ると、現在のエヌビディアの株価は、200日移動平均線から100%あたりまで乖離が進んでいることがわかります。
米国で吹き始めたAIブームの追い風は、確かに今後も期待が持てる分野ではあるものの、エヌビディア株については、200日移動平均線の株価水準の倍近くまで上昇した足元のピッチは少し早すぎの面があるほか、決算発表の前後で株価が大きな「窓」を空けていることもあり、調整を想定しておく必要があるかもしれません。
とはいえ、AIブームを背景とした物色の対象は広がっており、これまでのけん引役だった東京エレクトロンやアドバンテスト、米エヌビディア以外に出遅れている他の半導体関連銘柄や、AIブームの追い風を受けそうな銘柄が買われるかが注目されそうです。
実際に、図2の日経平均上昇寄与度ランキングトップのソフトバンクグループはAIブームの追い風に乗る格好で、先週の株価を大きく上昇させています。
さらには、日本株で言えば鉄鋼や海運株などバリュー系の業種にも資金が向かって、グロース株とバリュー株の「循環物色」の流れが進む状況となれば、相場全体の基調は崩れにくいと見て良さそうです。
米国株市場はやや楽観過ぎるか?…雇用統計の反応
そして、もう一つ気を付けておきたいポイントが米国市場の動向です。
足元の米国株市場を取り巻く環境は楽観に傾いているようです。先週の米国では、懸念されていた債務上限の引き上げ問題が峠を越し、次回のFOMCについても、「利上げがいったん見送られそう」という記事が、FRB(米連邦準備制度理事会)ウオッチャーの記者から報じられるなど、市場に安心感をもたらす材料が相次ぎました。
週末の2日(金)には、米5月の雇用統計が公表され、NYダウ(ダウ工業株30種平均)が今年最大の上昇幅、ナスダック総合指数(ナスダック)が年初来高値を更新するなどの初期反応を見せました。
このように今週の米国株市場も良好なムードで迎えることになりますが、先ほどのスケジュール感でも触れたように、市場の関心が来週に向かっており、株価が大きく上昇する展開となっても、週末にかけて手じまいの売りがでてくるかもしれません。
また、初期反応は良好だった米5月雇用統計の結果ですが、ここで注目したいのが失業率です。前回(3.4%)から3.7%に上昇しましたが、過去の米失業率と景気後退局面の状況を示したのが下の図です。
図6 米失業率の推移と景気後退局面の状況
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/3/8/-/img_380d9f045b5558302f7e2f07d960474c79037.png)
図で灰色に塗られた箇所が景気後退局面ですが、いずれも失業率の低下が底を打ち、上昇に転じたタイミングで景気後退局面に入っていたことが分かります。
米国では、景況感の悪化懸念が昨年から長い期間にわたってくすぶってきましたが、今回の失業率の上昇が次回以降も傾向として続くようになると、株式市場が景気後退を意識し始めるかもしれないことは、足元のムードが楽観的なだけに、注意しておきたいところです。
目先の日経平均の想定レンジは3万2,000~3万300円
以上のポイントを踏まえると、今週の日本株は来週の米国発のイベントを前に、大相場への「勝負」がいったん持ち越しとなる可能性が高く、株価が上昇しても、下落しても、週末にかけての手じまいによる寄り戻しが考えられ、一定のレンジ内での推移が基本シナリオとなりそうです。
また、想定されるレンジを日経平均で探った場合、下の図7にある25日移動平均線乖離率をボリンジャーバンド化したもので確認していきます。
図7 日経平均25日移動平均線乖離率のボリンジャーバンド(2023年6月2日取引終了時点)
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/2/c/-/img_2cd9722b396d5b42717a5eef3c83cbf954307.png)
先週末2日(金)時点の25日移動平均線乖離率はプラス4.89%で、25日移動平均線の値は3万54円でした。
これをベースにボリンジャーバンドの幅である、プラス2σ(シグマ)からマイナス2σの範囲を計算すると、大体3万2,000円から3万300円あたりが今週の想定レンジとなりそうです。
(土信田 雅之)
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