6月のビットコインは大きく上昇、7月もトレンド継続か~7月のビットコイン見通し
トウシル / 2023年7月5日 18時0分
6月のビットコインは大きく上昇、7月もトレンド継続か~7月のビットコイン見通し
6月のビットコインイベント
NEW! 6月5日 | SEC、バイナンスを提訴 |
NEW! 6月6日 | SEC、コインベースを提訴 |
NEW! 6月15日 | ブラックロック、BTC現物ETFを申請 |
*2023年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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6月の振り返り
6月のビットコイン価格(円)とイベント
急反発
6月のBTC(ビットコイン)は大きく上昇。
3月から続いた2万5,000~3万1,000ドルのレンジをいったん下抜けたが、そこから急反発、レンジの上限を上抜け、年初来高値を更新、折からの円安も手伝って、450万円にワンタッチした。
米国債のデフォルトが回避され、6月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ見送りが確実視される中、BTCは2万7,000ドル台で底堅く推移していたが、6月5日に米SEC(証券取引委員会)が世界最大手の交換所バイナンスとCEOのCZ氏らを提訴したことで2万5,000ドル台に急落した。
翌6日にSECは米最大手交換所コインベースも提訴、悪材料出尽くし感もあり相場はいったん反発したが、ゲンスラーSEC委員長はCNBCで「これ以上、デジタル資産は要らない」「暗号資産業界は詐欺師やねずみ講だらけだ」と反暗号資産姿勢を鮮明に打ち出し、またSECに「証券」に該当すると名指しされた暗号資産の取扱いを停止する交換所が続出し、BTCはじりじりと値を下げていった。
6月FOMCでは予想通り利上げが見送られたが、参加メンバーによる金利予想、いわゆるドットチャートで年内2回の利上げが想定され、議長も今回の利上げ見送りは停止でなくペースダウンだと示唆、「タカ派スキップ」という見方からBTCはレンジの下限を下抜け、2万4,000ドル台半ばに値を下げた。
しかし、世界最大の運用会社ブラックロックがBTC現物ETF(上場投資信託)を申請すると風向きが一変する。続いてドイツ銀行やクレディ・アグリコルが暗号資産カストディを申請、フィデリティやシタデル、チャールズシュワブが出資する交換所EDXが始動、現物ETFの申請も相次ぐなどさまざまな形態での金融機関の暗号資産参入の動きが続き、BTCは一気に年初来高値を更新した。
ただし、3万ドルを超えた水準では2021年から2022年に塩漬けになったロングポジションのやれやれ売りもあり、やや伸び悩んでいる。
急騰した理由
BTC現物ETFの重要性
この急騰を理解するには、少し予備知識が必要だ。個人を中心に発展したBTC市場は法人、特に機関投資家マネーが流入すれば大化けすると言われてきた。2020年後半から2021年にかけてヘッジファンドやファミリービジネスなど米投資家の一部が参入してブームに至ったが、銀行や証券、保険や年金など伝統的な金融機関はBTCの保管方法に問題があり参入は進まなかった。
金価格推移
かつての金でも保管の問題があり、2000年代初頭のETF誕生により金価格は数倍に跳ね上がった。米国でETFが承認されればBTCでも同じことが起こるのではないかと期待されている。実はこのBTC現物ETFを実現させようという試みは2017年ごろから始まっており、Bloombergによれば既に30件以上の申請がなされ、そのいずれも否認もしくは取り下げされている。
2021年にはカナダで現物ETFが承認され期待が高まったが、米国ではCFTCの監督下にあるCME(シカゴ先物取引所)の先物ベースのETFが承認されたものの、いまだに現物ベースのETFは承認されていない。
ブラックロックの申請
今回、資産運用最大手のブラックロックが申請したことで、承認の可能性が高まったと期待する声も聞かれる。ではこの申請が通るかと言えば、そんなに容易な話ではなさそうだ。従来よりSECは現物ETFを認めない理由としてカストディと相場操縦を挙げていた。
前者は徐々に整備されつつあるが、後者はまだ手付かずだ。ブラックロックは、この点をCMEなどとの価格監視協定を盛り込むことでクリアしようとしているが、今までの経緯を見るにそういう問題なのか疑問が残る。
BTCとSECに証券と名指しされたソラナSOL・カルダノADA・ポリゴンMATIC
加えて、SECのゲンスラー委員長は暗号資産への締め付けを強めている。ソラナ・カルダノ・ポリゴンといったメジャーな暗号資産を突然「証券」とみなして、バイナンスとコインベースを証券法違反で訴追した。
後者は昨年から何が証券に該当して何がしないのか基準を明確にしてほしいと嘆願していたのに、これに回答せず、さらに裁判所からの回答指示も拒否しながら、提訴に踏み切る強硬姿勢を見せている。
上記でも述べた通り、委員長は「これ以上、デジタル資産は必要ない」「暗号資産業界は詐欺師やねずみ講ばかりだ」と業界に対し対決姿勢を鮮明にした。ブラックロックの申請といえども、この委員長がすんなり承認するとは考えにくい。
SEC委員長がこうしたかたくなな姿勢を見せ始めたのには反暗号資産軍を標榜する上院民主党左派の中心人物ウォーレン議員がいると指摘されている。
消費者保護の大家である同氏は以前からそうした姿勢を貫いているが、悪いことに民主党の大統領候補ケネディJrや共和党の有力候補デサンティス・フロリダ州知事がバイデン政権のこうした暗号資産への締め付け強化を批判し始めた結果、にわかに暗号資産の取扱いが来年の大統領選挙の争点に浮上してしまい、それ故、ゲンスラー委員長が態度を硬化させたとも指摘される。
このように、政治問題になったために話が複雑になったのだが、政治問題だからこそ政治力で糸口が見えるかもしれないという希望も生まれつつある。ブラックロックの申請は民主党の有力支持者であるフィンクCEOがゲンスラー委員長の姿勢に同意しないという意思表示ではないかと市場の雰囲気が一変した。
すなわち、SECが「投資家保護」を理由に暗号資産を実質的に禁止に追い込もうとしても、民主党の支持基盤であるウォール街から異論が噴出し、そんなことにはなりそうにないと市場が安堵(あんど)したことが今回の急騰の背景にあると思われる。
見方を変えれば、SECから証券とみなされていないBTCは大丈夫だという安心感とも解釈でき、実際時価総額におけるBTCのシェアが5割を超えた。
実際時価総額におけるBTCのシェア(ドミナンス)
7月見通し
材料面から見た7月見通し
このように6月の急騰は月初のSECの強硬姿勢からの反発という性格があり、さらにここから上を目指していくにはやや力不足と考える。特に、3万~4万ドルの水準は2021~2022年に長く滞空したエリアであり、新値を更新する度に塩漬けになっていたロングポジションの「やれやれ売り」で上値を重くしそうだ。
今回、ブラックロックを手始めに、ドイツ銀行、フィデリティ、シタデル、チャールズシュワブ、クレディ・アグリコル、HSBCとそうそうたるグッドネームが暗号資産ビジネスに参入してきた。
ただ、金融機関が機関投資家参入のハードルを下げたところで、投資家の需要が伴わなければ実際の買いにつながらない。需要面で重要となる米金融政策は、最終コーナーを回り始めたとはいえ、まだ引き締め局面で、このままブーム的な上昇につながると考えるのは少し気が早いと考える。
ただ、ブラックロックのETFが8月にも承認される可能性を指摘する声もある。30日にWSJはSECが同社の申請を不十分として差し戻したと報じ、一時BTCが急落した。しかし、一部ではこれは承認に向けた一歩だと評価する声すら聞こえる。
いずれにせよ、少なくとも7月中は結論が出ないため、期待感で値を上げていき、仮に否認となれば急落する、そうした展開が予想される。では、仮に承認された場合はいったんは大きく上昇するも、現在の金融引き締めが終わり切っていない段階ではまだ十分な買いが集まらずSell the Fact気味に失速するのではないかと考えている。
2021年10月の先物ETF承認時も、承認までは相場は上昇したが、翌月のテーパリング開始で下降トレンドが始まっている。
すなわち、7月のBTC相場はETFへの期待感で底堅く推移しそうだが、金融緩和に転じるほどの経済指標の悪化がない限り、大きな上昇は見込めないか。
テクニカル面もあわせた7月見通し
BTC/JPY パターン分析
BTC/USD パターン分析
テクニカルで見ると、BTCは円建てで3カ月続いたレンジを上抜け、ドル建てでは下降チャネルを上抜け、上昇フラッグの形が完成。いずれも上値余地を探る展開となっている。このレンジ上抜けによる上昇は一服しているが、トレンド系のテクニカル指標は上昇トレンドの継続を示唆している。
BTCドミナンス(時価総額に占めるBTCの割合)
一方で、3万~4万ドルの水準は2021年1月~2022年6月の18カ月のうち実に12カ月滞空した水準。通常、こうしたレンジを上抜けすると相場が走りがちだが、今回に関しては当時から塩漬けになっているロングポジションの「やれやれ売り」をこなしていく必要があり、思ったほど相場が走らないことが特徴的だ。
BTC月別騰落一覧
アノマリー的には7月は8勝4敗、勝率6割強と強めの月。過去12年で陰線から陽線に転じた30回のうち陽線が2回続いたのは19回と6割強。アノマリー的には7月は強め、続く8月9月は弱めと出ている。
まとめると、7月のBTC相場は材料的にもテクニカル的にももう少し上値余地がありそうだ。
2023年 時事イベントと暗号資産イベント(最新順)
5月23日 | 香港当局、個人向け暗号資産取引解禁・CCTVが報道 |
5月22日 | ビットコイン・ピザデー |
5月8日 | PEPE騒動の影響でBinanceで入出金停止 |
4月25日 | コインベース、SECを提訴 |
4月24日 | ファーストリパブリック銀行決算発表で1,000億ドルの預金流出判明 |
4月19日 | SEC委員長、下院公聴会で批判集まる |
4月12日 | ETH上海アップデート |
3月27日 | CFTC、Binanceを提訴 |
3月22日 | コインベース、SECから訴追予告受け取る |
3月22日 | SEC、ジャスティン・サン氏らを起訴 |
3月12日 | シグニチャー銀行が経営破綻、閉鎖へ |
3月8日 | シルバーゲート銀行清算を持ち株会社が発表 |
2月23日 | ゲンスラーSEC委員長、BTC以外は証券に該当する可能性 |
2月13日 | パクソス、Binance USD(BUSD)発行停止 |
2月9日 | クラーケン、ステーキング停止 |
1月19日 | ジェネシス・グローバル・ホールドコ、チャプター11申請 |
1月17日 | 香港拠点のBitzlatoのCEOを米当局が逮捕 |
*マイニングとは:暗号資産(仮想通貨)は一般的にブロックチェーンと呼ばれるネットワーク参加者が誰でも見られる元帳上に取引を記録していきます。そのブロックチェーン上に取引データを記録する際に、膨大な計算を行うことで新たなブロックを生成する暗号を見つけ出し、その報酬としてコインを手に入れる行為のことです。マイニングの主な役割は「暗号資産の新規発行」と「取引の承認」です。
**BlockFiとは:暗号資産融資プラットフォームBlockFi(ブロックファイ)が提供する暗号資産を預かって利息を払うサービス(レンディング)が証券法に違反したと提訴された事件に関する和解として、SEC(米国証券取引委員会)に1億ドル(約115億円)を支払うと発表。
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(松田 康生)
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