高配当狙いの株式投資~ファンダメンタル分析の重要点(2)
トウシル / 2023年8月3日 14時0分
![高配当狙いの株式投資~ファンダメンタル分析の重要点(2)](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushiru/toushiru_42212_0-small.jpg)
高配当狙いの株式投資~ファンダメンタル分析の重要点(2)
キャピタルゲインを狙うか、それともインカムゲインか?
拙著の代表作である「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」(ダイヤモンド社)「株を買うなら最低限知っておきたい 株価チャートの教科書」(同)から、筆者がファンダメンタル分析において、個人投資家の皆さまに伝えたい重要な内容をお伝えしているシリーズ。第2回は、配当金狙いの株式投資についてです。
株式投資に限らず、投資の世界では、利益の源泉をどこに求めるかによって、「キャピタルゲイン重視」と「インカムゲイン重視」の2種類の手法があります。
株式投資でいえば、成長株や割安株を買って株価の値上がりを狙うのはキャピタルゲイン重視の考え方です。一方、配当利回りが高かったり、今後の配当金の増額が見込まれる銘柄の株を買い、配当金で利益を得ようとするのがインカムゲイン重視の考え方です。
キャピタルゲイン重視とインカムゲイン重視の、どちらが正しいとか、どちらが間違っているということはありません。二つの方法はいずれも正しいやり方をすれば成果を上げることができるからです。
ただ、配当金による利益を目的としたインカムゲイン重視の手法は、リスクを過度に取らないのであれば、得られる配当利回りはせいぜい数%程度なので、それほど大きなリターンが見込まれないという欠点がありました。
高配当利回り銘柄のパフォーマンスが高い!
しかし、足元の個別銘柄の動きをみると、配当利回りが高い銘柄の多くの株価が上昇しています。配当狙いの個人投資家は、特に値上がり益は期待していないと思われますが、株価上昇となれば、インカムゲインに加えキャピタルゲインも得られるわけですから一石二鳥です。
裏を返すと、高配当利回り銘柄の株価が上昇しているということは、1株当たり配当金が増額とならない限り、株価上昇により配当利回りは低下することになります。
7月28日時点で、配当利回りランキングのトップ銘柄の利回りは6.35%。6%超えは3銘柄しかありません。
以前は配当利回り7%超えの銘柄もそこそこありましたから、高配当利回り銘柄の株価が底上げされた結果、利回りが全体的に低下したと考えられます。
株価がまだあまり上昇していないうちに買うことができた個人投資家は非常にラッキーだったと言えますが、では高配当利回り銘柄が全体的に底上げとなった現在から、新たに高配当利回り銘柄へ投資することについてはどのようなリスクが考えられるのでしょうか。
高配当銘柄の利回り低下=「割高になった」ということ
例えばもともと株価1,000円、1株当たり配当金60円の銘柄(配当利回り6%)の株価が上昇し1,500円まで上昇したら、配当利回りは4%に低下します。
企業実態に大きな変化がないとすれば、配当利回り6%だったのが4%に低下したということは、それだけ株価が割高になったことを意味します。
配当金狙いの株式投資に限らず、不動産などもそうですが、インカムゲイン重視の投資では、「いくらで買うか」がとても重要です。
上の例でいえば、配当金に変動がないとすると、株価1,000円のときに買えば利回り6%が続く一方、株価1,500円のときに買えば利回りはずっと4%の水準のままなのです。
ですから、配当利回り6%だった銘柄が、株価上昇により4%まで利回りが下がっている場合、「まだ利回り4%もあるから十分買える」と安易に考えるよりも、「だいぶ株価が上がって割高になったから見送ろう」とか「だいぶ割高になったからあまり多くの金額を投資しないようにしておいて、株価が下がったら追加買いできるようにしよう」と考えておいた方が無難だと思います。
株価が大きく上昇した高配当銘柄を保有している場合は?
中には、高配当利回り銘柄を買った後、株価が大きく上昇している、という状況となっている個人投資家の方もいると思います。
配当利回りを目的に買ったものの、株価が大きく上昇した場合、どのように考えればよいのでしょうか。
例えば次のようなケースで考えてみましょう。
・1年前に1株当たり配当金50円、株価1,000円のA株を3,000株購入(300万円)。
・株価が1年間で50%上昇して1,500円となった。
もしA株の1株当たり配当金の水準が今後も50円だとすると、A株を持ち続けることで、毎年5%の配当利回りで配当金を受け取ることができます。
一方、A株の株価は1年間で500円(50%)上昇しました。これを配当金に換算すると10年分となります。
つまり、A株の株価が上昇したところで株を売却すると、実質的には配当金を10年分先取りするのと同じ効果が得られるのです。
もし、A株の株価が天井を付け、翌年1,000円まで戻ってしまったとしたら、A株を持ち続けることで5%の配当利回りを得ることはできますが、1株当たり500円の値上がり益を得ることはできません。
でも、株価が1,500円のところで売却し、1,000円まで下がったところで買い直せば、1株当たり500円の値上がり益を得られ、かつ5%の配当利回りを得ることができます。
正直、1,000円だった銘柄の株価が1,500円まで上昇した後、再び1,000円まで下がるかどうかは分かりませんし、将来的な配当金の額の変動によっても株価は上下します。
それでも、株価が大きく値上がりして、今売却すれば配当金10年分の利益を得られるというのであれば、いったん利益を確定して、株価が下がったら買い直す、という選択肢は十分検討に値すると思います。
特に、景気敏感株など、配当金が業績などの変動に連動して、将来株価や配当金が大きく下がるリスクがあるような銘柄については、「利食い千人力」で対応するのが良いのではないか、というのが筆者の見解です。
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(足立 武志)
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