ファンダメンタル分析は絶対ではない~ファンダメンタル分析の重要点(3)
トウシル / 2023年8月10日 17時1分
![ファンダメンタル分析は絶対ではない~ファンダメンタル分析の重要点(3)](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushiru/toushiru_42319_0-small.jpg)
ファンダメンタル分析は絶対ではない~ファンダメンタル分析の重要点(3)
そもそもファンダメンタル分析は必要か?不要か?
拙著の代表作である「株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書」(ダイヤモンド社)「株を買うなら最低限知っておきたい 株価チャートの教科書」(同)から、筆者がファンダメンタル分析において、個人投資家の皆さまに伝えたい重要な内容をお伝えしているシリーズ。
最終回となる第3回は、個人投資家がそもそもファンダメンタル分析をどのように活用すべきかという本質論についてお伝えします。
本質論というと何だか抽象的な話に思われるかもしれませんが、実は最も重要な論点と筆者は考えています。
そもそも個人投資家にとってファンダメンタル分析は必要なのでしょうか。
「ファンダメンタル分析こそ株式投資に必須の知識であり、株価チャートなど無用だ」という見解もあれば、「個人投資家はテクニカル分析で十分。ファンダメンタル分析など不要だ」という見解もあります。
実は私たち個人投資家は、ファンダメンタル必要論・不要論に巻き込まれることをまず避けなければいけません。なぜなら、ファンダメンタル分析が必要と思っている人と、ファンダメンタル分析が不要と思っている人の投資スタンスはそれぞれ異なるからです。
つまり、自分自身の投資スタンスによって、ファンダメンタル分析が必要かどうかは異なってくるのです。
アベノミクス相場で一変。筆者がファンダメンタル分析に本腰を入れた理由
個人投資家がファンダメンタル分析を必要とするかどうかについての筆者の考え方は、「必ずしも必要とまでは言えないが、ファンダメンタル分析を行った方が断然優位」というものです。
なぜ必ずしも必要とまで言えないかといえば、実際にファンダメンタル分析を行わずに株式投資の成果を出している個人投資家もいますし、筆者も株式投資を始めたころ(25年前)は、ファンダメンタル分析はほとんどせず、株価チャート主体で行っていたからです。
ところが、アベノミクス相場がスタートした2013年以降、それまでの「上がるときはどの株も上がり、下がるときはどの株も下がる」という動きから、「業績が良ければ上がるが、業績が悪いとてこでも上がらない」という動きに変化しました。
ですから、ファンダメンタル分析を行って、業績が良い銘柄を選ぶようにしないと、日経平均株価など株価指数がどんなに上昇しても、投資した個別銘柄はさっぱり上がらない、という状況になったのです。
そのため、筆者もファンダメンタル分析に本腰を入れるようになりました。
長期投資ほど、ファンダメンタル分析が重要
また、ファンダメンタル分析の重要度は、投資スタンス、ここでは投資期間の長短により大きく異なります。
長期投資になればなるほどファンダメンタル分析の重要度が増し、デイトレードなど短期投資になればなるほどファンダメンタル分析の重要度が下がります。
なぜなら、長期的な株価の変動要因は企業業績であるのに対し、1日単位といった短期的な株価の変動要因は主に需要と供給の力関係によるところが大きいからです。
ですから、バイ・アンドホールドのような、一度買ったらよほどのことがない限り売らない、という長期投資では、ファンダメンタル分析をしっかり行わないと、塩漬け株の発生など大きな失敗をしてしまうことになります。
個人投資家のファンダメンタル分析には限界がある
このように、投資期間が長くなればなるほどファンダメンタル分析の重要度が高まるわけですが、その一方で必ず押さえておかなければならない極めて重要な事実があります。それが、「個人投資家のファンダメンタル分析の精度はプロ投資家より低い」ということです。
プロ投資家に比べて個人投資家は、ファンダメンタル分析にかけることのできる時間が圧倒的に少ないですし、ファンダメンタル分析に関する知識や、個別銘柄について得られる情報も限られます。
時折、個人投資家もプロと同じようなレベルのファンダメンタル分析をすべきだ、と主張する専門家の方もいますが、ほとんどの投資家にとっては、それは無理な話です。
では、個人投資家はプロのようなファンダメンタル分析ができないのだから、ファンダメンタル分析そのものが不要なのか、といえば、そうではありません。
上で述べたように、業績が良い銘柄でないと株価が上昇しにくいのは紛れもない事実なので、ファンダメンタル分析は必要なのです。その精度がプロよりも劣る、というだけです。
ただ、個人投資家の行うファンダメンタル分析の精度がプロより劣ることを意識していないと、例えば自身がファンダメンタル分析により「業績が伸びる」と思って投資した銘柄の株価が下落した時、「それはおかしい」とそのまま我慢して持ち続けたり、時にはナンピン買いをしてしまい、さらなる株価下落で大きな損失を被ってしまいかねません。
個人投資家の弱点は、株価チャートの確認で補える
ではどうすべきなのか? それは個人投資家のファンダメンタル分析がプロより劣ることを補完する「何か」を活用すればよいのです。
その「何か」として筆者が個人投資家にお勧めし、かつ筆者も活用しているのが株価チャートなのです。
例えば上の例で、自分自身がファンダメンタル分析で「業績が伸びる」と思っている銘柄の株価が下げ続けるという状況は、プロ投資家をはじめ多くの投資家はその銘柄を買っているのではなく売っていることを表します。
そして、なぜ売っているかといえば、プロ投資家はその銘柄の業績が伸びるとは思っていないからです。
つまり、株価チャートを確認して株価の動きを見ておけば、プロ投資家はじめ大口投資家が、その銘柄に対して買い目線なのか、売り目線なのかを推測することができるのです。
ですから、自分自身が「この銘柄は業績が伸びるから買おう!」と思ったとしても、株価が下落を続けているような場合は、自分以外の投資家はこの銘柄を売っていることが分かる、言い換えれば自分自身のファンダメンタル分析が誤っている可能性が高いことが分かるのです。したがって、そうした銘柄への投資を控えることができるのです。
筆者は、個人投資家はファンダメンタル分析+株価チャート分析を用いたハイブリッド投資が有効だと思っています。ファンダメンタル分析に過信することなく、株価チャートも併用して、より良い投資成果をぜひ目指してください。
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(足立 武志)
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