その株、リスクを取り過ぎていませんか?無意識の投資行動に要注意
トウシル / 2023年8月31日 12時0分
その株、リスクを取り過ぎていませんか?無意識の投資行動に要注意
投資はローリスク・ローリターン、ハイリスク・ハイリターンが原則
株式投資に限らず、投資・資産運用では、リスクを取ってリターンを得ることが求められます。
一般的には「ローリスク・ローリターン」、「ハイリスク・ハイリターン」が原則であり、リスクをあまりとりたくないのであれば、大きなリターンも期待できないことになります。
ただ、マーケット環境が好調で、株式市場であれば上昇局面が続くような場合だと、知らず知らずに過大なリスクを負ってしまう個人投資家もよく見かけます。
今回は、ある事例をもとに、リスクを取り過ぎるとはどういうことなのか、そしてリスクを取り過ぎるとどのような結末が待ち構えているのかをお話したいと思います。
気付かぬうちにリスクを取り過ぎてしまった事例
甲さんは100万円を担保に信用取引を行うことにしました。この100万円以外、投資に回せるお金はありません。
業績が伸び、将来有望と思えるA社の株と、B社の株を信用取引でそれぞれ買うことにしました。
A社は1株5,000円で200株、B社は1株4,000円で200株買いました。
その後A社、B社とも順調に株価が上昇し、A社の株価は8,000円、B社の株価は6,000円となりました。
ファンダメンタルを調べるとB社の業績は絶好調、株価はまだまだ伸びそうと感じられ、決算発表でさらに株価が吹きあがりそうと考え、決算発表の直前にB社株を6,000円で200株買い増ししました。
その結果、現在の甲さんのポートフォリオは次のようになっています。
A社株:5,000円×200株 (時価8,000円)
B社株:4,000円×200株、6,000円×200株 (時価6,000円)
ところが、B社の決算発表にて、利益成長が一気に鈍化したことが明らかになり、株価は数日のストップ安比例配分を経て3,000円にまで急落してしまいました。
A社の株価はいまのところ8,000円ですが、明日決算発表の予定です。
もし崖っぷちに立たされたら「生き残ること」を最優先に考える
もし皆さんが甲さんのような状況だったら、どのように行動しますか?
すでにB社の株価は決算発表により急落し、B社株の含み損は80万円に達しています。一方、A社株は含み益が60万円あり、決算発表の数値が良ければさらなる株価上昇も大いに期待できます。
筆者なら、A社の決算発表を待たずに、A社の株を全て売却します。なぜなら、それが「生き残るための最適解」だからです。
確かにA社の決算発表によりA社の株価が大きく上昇したら、B社株の損失をカバーできるだけの利益を得られることになります。
でも、逆にA社の決算発表の数値がイマイチで、株価が半値の4,000円まで急落したらどうなるでしょうか?
B社株の損失80万円に加え、A社株も20万円の損失となりますから、担保を追加で差し入れることができなければ、証券会社による強制決済により、信用取引で差し入れた100万円の担保が吹き飛ぶことになってしまいます。つまり一文無しです。
でも、今A社株を全て売却し、B社株も売却して精算すれば、A社株の利益60万円と、B社株の損失80万円の差し引き20万円の損失で抑えられます。
証拠金100万円に対して損失が20万円ですから、残り80万円で再スタートを切ることができるのです。
その行為は「大きな損失につながる可能性があるか」を考えて行動しよう
筆者は、甲さんに「なぜこんなリスクが高い行為をしたのか」と聞いてみました。すると甲さんの答えは、「A社もB社も株価が順調に上昇していたので、さらに上昇するのではないかと思いレバレッジをかけて買ってしまった。過剰にリスクを取ったつもりはなかった。」というものでした。
ちなみに、甲さんは最悪の事態を回避するため、A社が決算発表をする前にA社株を全て売却したそうです。
A社の決算発表により、発表翌日の株価は上昇したものの、そこから大きく下落に転じました。もし甲さんが決算発表前にA社株を売却していなかったら、追証(証拠金の追加差し入れ義務)を履行できず、証券会社の強制決済で、資金の大部分を失っていたことでしょう。
この甲さんのように、特に投資経験がそれほど長くなく、〇〇ショックといった大暴落を経験していない個人投資家は、気づかぬうちに過剰なリスクを取ってしまいます。
それが平時であれば、リスクがあまり表面化せず、事なきを得ることも多いのですが、決算発表をきっかけにした急落や、マーケット全体の大暴落が起きたりすると、過大なリスクを取っていることが大きな損失に直結するのです。
問題点は何だったのか?
甲さんのケースでは、問題のある行為として真っ先に次の二点が挙げられます。
〇信用取引を使い、マックスのレバレッジがかかった状態で投資していた
〇A社とB社の2銘柄に集中投資していた
また、B社は追加投資していますが、これが決算発表の直前だったこともリスク要因です。決算発表により株価が急落する可能性はかなり高いので、過剰なリスクを取りたくなければ決算発表直前の新規買いはできるだけ控えるべきなのです。
無論、ご自身で大きなリスクを覚悟で、信用取引でレバレッジをかけて、少数の銘柄に集中投資することで、大きなリターンを目指しにいくのだ、という意識があるのなら、筆者はお勧めしませんがそれも一つの戦略です。
しかし、今回の甲さんのように、自身がしている投資行動が、実は非常に大きなリスクを抱えるものであり、裏目に出た場合に一発退場、一文無しにつながるような危険性を大いにはらんでいると理解しないまま行動しているケースも少なくありません。
株式投資で大きな失敗をしたくないのであれば、ご自身がしている行為、これからしようとしている行動が、大きな損失につながるものではないかを常に意識するようにしてください。平時であればリスクが表面化しにくいですが、マーケットが急落したときには、ハイリスクな投資をしている個人投資家に対して一気に牙をむいて襲い掛かってきます。
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(足立 武志)
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