年内500万円あるか?~10月のビットコイン見通し~
トウシル / 2023年10月6日 10時9分
年内500万円あるか?~10月のビットコイン見通し~
9月のビットコインイベント
NEW! 9月10日 | インド、今後数カ月で暗号資産に対するスタンスを決定 |
NEW! 9月19日 | 野村ホールディングス、子会社でBTCファンド提供 |
NEW! 9月28日 | SEC、ブラックロック申請分などのETF可否判断再延期 |
*2023年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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材料面から見た10月見通し
9月の振り返り
9月のビットコイン価格(円)とイベント
9月のBTCは下に行って来いの展開。
8月29日に付けた2万8,000ドル台から失速、9月12日にFTXの保有トークン売却懸念で付けた2万5,000ドル割れまで値を下げた。しかし、そこから切り返すと10月2日には2万8,000ドル台まで値を戻している。
8月末のグレースケールの勝訴で、BTCは2万8,000ドルを付けたが、ブラックロック申請分のETF(上場投資信託)の1回目の回答を延期したことが嫌気され、8月末から9月頭にかけてBTCは2万6,000ドル近辺に失速した。
すると、FTXが保有する暗号資産を債権者への支払いのために売却するとのうわさが出回り、BTCは下落。8月の安値を割り込み、一時2万4,000ドル台に値を下げたが、6月の安値でサポートされた。
しかし、インド政府が今後数カ月内に同国の暗号資産に対する方針を策定することを受け、BTCは反発した。それまでのインド当局は、中央銀行が暗号資産の全面禁止を主張するなど、グローバルなスタンダードより厳しめの態度をとっていたが、議長国としてG20の方針に沿った対応にかじを切る兆候と好感されたもようだ。
前述のFTXの売却が裁判所より認められたが、むしろBuy the Fact気味に上昇した。
さらに、野村ホールディングスがスイス子会社を通じてBTCファンドを提供するとの報や、Mt.GOXの残余BTCの債権者への償還が1年延期されるとのうわさなどもあり、8月29日の高値をトライしたが、達しなかった。
FOMCメンバーの金利予想比較(黄:9月 灰色:6月)
FOMC(米連邦公開市場委員会)では、予想通り利上げが見送られたが、参加メンバーの先行きの金利予想であるドットチャートで、2024年末・2025年末の水準が上方修正されたことを嫌気し、またMt.GOXの支払い延期決定によるSell the Factもあり、2万6,000ドル割れに失速した。
しかし、月末にかけて米会計新年度予算審議が難航、にわかに政府閉鎖の懸念が浮上。閉鎖長期化による景気悪化の思惑から米長期金利が低下、BTCは上昇に転じた。
28日木曜日辺りから、米政府でも閉鎖に向けた準備が進み始め、SECは10月半ばに延期されていたブラックロックらのETF申請をあらかじめ延期したが、BTCは下げ渋った。
結局、現地時間の30日午後に45日間のつなぎ予算が可決され、閉鎖は回避されたが、週明け10月2日の先物市場オープン時に米株先物が高寄りするなど、リスクオンムードが広がる中、BTCは2万8,000ドルに急伸、8月29日の高値を更新している。
地合いの好転
8月末から10月頭までで見ると、BTCは2万8,000ドル台から2万5,000ドル割れに値を下げて、2万8,000ドルに値を戻す展開だった。その中で象徴的だったのが、ブラックロックが申請したBTC現物ETFの審査状況だ。
8月29日にグレースケールがSECに勝訴、SECが先物ETFを認めて現物ETFを認めないのは気まぐれで恣意(しい)的だと断罪した。これを受け、BTCは2万8,000ドル超えに値を伸ばしたが、31日(日本時間9月1日)ブラックロックの判断延期を受け急落した。ところが、9月28日に同じ申請の2回目の延期をした際には、BTCはほとんど売られなかった。
ETFの申請は、官報に記載されてから最初の45日以内に回答期限を迎え、その後、最大240日まで延長が可能とされ、ブラックロックの申請の場合、最大で来年の3月15日まで延長が可能だ。
確かに、グレースケールの判決後に承認される期待が高まったが、9月頭の第1回目の期日に承認されると思っていた参加者は、さほど多くなかった印象だ。それでも1回目の延期ではBTCは売られ、政府閉鎖が理由だとしても、2回目の延期ではBTCでは売られなかった。
もう一つ、今月の相場を象徴する出来事があった。月末の政府閉鎖懸念と回避によるリスクオンだ。面白いことに、こちらも材料視はされながら、閉鎖懸念で米長期金利が低下するとリスクオン気味にBTCは買われ、閉鎖が回避されてもリスクオン気味にBTCは買われた。要はどちらに転んでもBTCは買われた訳だ。
これらは、BTCを巡る地合いの変化を表している。すなわち8月末から9月前半までは同じ材料にネガティブに反応しやすく、月末ごろから市場の雰囲気が回復しポジティブに反応しやすくなっていた。これはアノマリー的に8月から9月にかけてBTC市場が弱い時期であることも影響していると考える。
利上げ打ち止めを織り込みに
ただ、もう少し俯瞰してみると、別の背景が見えてくる。FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策の変化だ。新たな「お金」として設計されたBTCは、法定通貨の代替投資としての性格を持ち、特にコロナ対策の無制限緩和に対し、インフレヘッジとして米投資家の一部が買い始めて以降、FRBの金融政策に非常に反応するようになった。
BTC/JPYと米金融政策
FRBがテーパリング、非常時の金融緩和の正常化にかじを切った2021年11月にBTCはピークを迎えた。そして、FRBが利上げ幅を75bpから50bpに縮小するという観測が浮上した2022年11月に下げ止まった。さらに50bpから25bpに縮小するとの観測が浮上した2023年1月に上昇に転じた。
2023年3月の金融不安で利上げ打ち止め観測が浮上、BTCは3万ドルに達し、6月のFOMCで実際に利上げを見送ると年初来高値を付けた。しかし、7月FOMCで再利上げ、利上げを打ち止めたのではなく、利上げペースを緩めただけだとすると、8月から9月にかけて下降トレンドに入った。
しかし、WSJがFRBがリスク評価を中立に戻しつつあると報じ、NY連邦準備銀行のウイリアムズ総裁が金利はピークかその近くにあるとするなど、利上げは最終局面を迎えている。前述のドットチャートでも、FOMCメンバーは年内あと1回の利上げを想定し、来年以降の利上げは予想していない。
すなわち、3月や6月に不発だった利上げ打ち止めの織り込みに行く相場が始まった可能性がある。
足元の焦点は11月1日のFOMCでの利上げの有無で、これは今月発表される雇用統計やCPI(消費者物価指数)次第だ。もし11月の利上げを見送るとすれば、データ次第で利上げの可能性を留保しつつも、7月から利上げ打ち止め局面に入った可能性が高まる。
一方、11月に利上げに踏み切ったとすれば、利上げ打ち止め感はさらに高まる。いずれにせよ、BTCは利上げ打ち止めを織り込みに行く動きから、年初来高値を試しにいく展開が予想される。
今月の数字が弱く前者であれば今月中にも、数字が強めで後者のシナリオとなれば来月にも3万2,000ドルをトライするのではないだろうか。
現物ETFは承認されるか
ちなみに、今回判断が延期された現物ETFは、年内は微妙だが、来年中には承認される可能性が高いと考える。というのは、SECは業界も投資家も切望する現物ETFを価格操作を理由に拒んできた。いわば法(ルール)を盾に首を縦に振らなかった。
しかし、このSECの法解釈を裁判所は一蹴し、その理屈を言い出したクレイトン前SEC委員長まで「今の状況に照らし合わせれば承認は不可避」と言い始めた。すでにSECの論理は破綻、四面楚歌の状態だ。残るは、バックに控えるとされる民主党左派への配慮や面目を保つために反対しているにすぎない。
しかし、そうしたある意味、非合理的な要素にこだわって、来年3月の最終期限にブラックロックの申請を否認するようなことになれば、ウォール街を敵に回しかねず、後のキャリアに影響しかねない。ゴールドマンサックス出身のゲンスラー委員長は、そうした損得勘定に長けていると考える。
テクニカル面で見たBTC相場見通し
BTC/USD(パターン分析と200日移動平均線)
テクニカル的には9月は下に行って来いで、下値を確認して反発、さまざまなレジスタンスを抜け、下降トレンドからの反転が鮮明になった。
先月「下方向は6月安値程度まで下値余地がありそう」で「上方向は200日移動平均線の2万7,000ドル台半ば(2万8,000ドル台に上昇)、さらに2万8,300ドル辺りは強めのレジスタンス」と申し上げたが、その6月の安値でサポートされ、10月に入って2万8,000ドル台の200日移動平均線(2万8,000ドル)、8月29日の戻り高値(2万8,200ドル)、半値戻し(2万8,400ドル)をブレークしている。
この結果、7月からの下降トレンド線を上抜け、トレンド転換が鮮明となった。
タイミングが10月中になるか、11月となるかは経済指標など他の材料次第だが、3万2,000ドル手前の年初来高値更新が視野に入ってきた。
BTC/JPY (一目均衡表)
一目均衡表も、弱気相場からの脱却が鮮明になりつつある。8月に雲を下抜け、9月頭には3役逆転の売りサインが点灯した。しかし2万5,000ドル割れで切り返すと、しばらくは雲の下限に上値を押さえられたが、10月に入り雲を上抜け、3役好転の買いサインが一時点灯した。
足元では雲の中に再突入、まだダマしの可能性も残るが、雲の上限が徐々に下がってくることから、このまま横ばいでも雲の上に出て買いサインが再点灯することとなる。
BTC月別騰落一覧
恒例の月別の騰落率で見ると、8月9月は1年で最もパフォーマンスが悪い時期。1回目と2回目など微妙な違いはあるものの、同じブラックロックのETF申請の判断が延期されても、9月頭はBTCが大きく売られ、9月末は動じなかったのは、この季節性も影響したか。
小職が、この月別の騰落率を紹介し始めて数年たつが、当初はこの市場で「アノマリー」や「カレンダー効果」を指摘する声はあまりなかった。しかし、昨今はこうした見方が広まり、多くの参加者が意識するようになったことから、自己実現的に8月から9月にかけて地合いが悪化しているのかもしれない。
要は投資家心理に影響を与えている可能性がある。そうでなくとも、やはりマイナーの供給が一定のBTC相場は取引が細る夏場に下がりやすい。こうした売りの季節を通過し、2月・4月に次いで強い10月を迎えた。
BTC/USD 3万~4万ドルはやれやれ売りが出やすいゾーン
以前から申し上げているように、3万ドルから4万ドルは、2021年から残るロングポジションのやれやれ売りが出やすいゾーンで、年末には3万ドル前後に収束すると予想しているが、この10月から11月にかけて、3万2,000ドルを少し超えた水準、例えば3万3,000ドル程度まで上値を追う展開が予想される。
まとめ
まとめると、10月のBTC相場は上値余地を探る展開を予想する。
足元の上昇はFRBの利上げ打ち止めを織り込みに行く動きで、もし10月の雇用統計やCPIが弱く11月利上げ見送りが確実視されるようになれば、10月中にも年初来高値をトライ、3万2,000ドルないしもう少し上値を伸ばす可能性がある。
逆に10月の数字が強く、11月に予防的に利上げを行ったとしても、それ以降はしばらく利上げを見送る可能性が高い。少なくともFOMC参加メンバーの多くはそう考えている。その場合は11月中に3万3,000ドル程度まで値を伸ばす展開になるかもしれない。
3万3,000ドルをドル/円150円で計算すれば約500万円。数字次第でタイミングは前後しそうだが、今後2カ月の間にこの水準まで達すると予想している。
2023年 時事イベントと暗号資産イベント(最新順)
8月31日 | SEC、ブラックロック申請分などのETF可否判断延期 |
8月29日 | グレースケール、SECに勝訴 |
8月17日 | スペースX、保有BTC売却 |
8月2日 | ライトコイン半減期 |
7月13日 | リップル、SECに部分勝訴 |
7月6日 | ブラックロックCEO、BTCは国際的資産 |
6月15日 | ブラックロック、BTC現物ETFを申請 |
6月6日 | SEC、コインベースを提訴 |
6月5日 | SEC、バイナンスを提訴 |
5月23日 | 香港当局、個人向け暗号資産取引解禁・CCTVが報道 |
5月22日 | ビットコイン・ピザデー |
5月8日 | PEPE騒動の影響でBinanceで入出金停止 |
4月25日 | コインベース、SECを提訴 |
4月24日 | ファーストリパブリック銀行決算発表で1,000億ドルの預金流出判明 |
4月19日 | SEC委員長、下院公聴会で批判集まる |
4月12日 | ETH上海アップデート |
3月27日 | CFTC、Binanceを提訴 |
3月22日 | コインベース、SECから訴追予告受け取る |
3月22日 | SEC、ジャスティン・サン氏らを起訴 |
3月12日 | シグニチャー銀行が経営破綻、閉鎖へ |
3月8日 | シルバーゲート銀行清算を持ち株会社が発表 |
2月23日 | ゲンスラーSEC委員長、BTC以外は証券に該当する可能性 |
2月13日 | パクソス、Binance USD(BUSD)発行停止 |
2月9日 | クラーケン、ステーキング停止 |
1月19日 | ジェネシス・グローバル・ホールドコ、チャプター11申請 |
1月17日 | 香港拠点のBitzlatoのCEOを米当局が逮捕 |
*マイニングとは:暗号資産(仮想通貨)は一般的にブロックチェーンと呼ばれるネットワーク参加者が誰でも見られる元帳上に取引を記録していきます。そのブロックチェーン上に取引データを記録する際に、膨大な計算を行うことで新たなブロックを生成する暗号を見つけ出し、その報酬としてコインを手に入れる行為のことです。マイニングの主な役割は「暗号資産の新規発行」と「取引の承認」です。
**BlockFiとは:暗号資産融資プラットフォームBlockFi(ブロックファイ)が提供する暗号資産を預かって利息を払うサービス(レンディング)が証券法に違反したと提訴された事件に関する和解として、SEC(米国証券取引委員会)に1億ドル(約115億円)を支払うと発表。
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(松田 康生)
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