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新NISAでS&P500以外の投資デビュー、相性の良い組み合わせは?

トウシル / 2023年10月20日 7時30分

新NISAでS&P500以外の投資デビュー、相性の良い組み合わせは?

新NISAでS&P500以外の投資デビュー、相性の良い組み合わせは?

 最近個人投資家の方から、「新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)でも本当にS&P500種指数に連動する投資信託を積み立てるだけでよいのか」、あるいは「個別株デビューをするにしても何を買えばよいか分からない」という質問を受けることが増えました。

 S&P500を選んだこと自体、著名なユーチューバーや知人に勧められたからという理由の方も多いため、慣れない銘柄選択に不安を覚えることはごもっともだと思います。

 本稿ではこの、(1)新NISAでもS&P500を積み立てるだけでよいのか、(2)S&P500以外に投資するならどのように銘柄を選べばいいのか、の2点について考察してみます。

注:新NISAでは、つみたて投資枠で最大1,800万円(1年あたり120万円)、成長投資枠で最大1,200万円(1年あたり240万円)、合計で最大1,800万円の運用が可能です。

疑問(1):新NISAでもS&P500を積み立てるだけでよいのか?

 S&P500に連動する投資信託は、NISAで積立投資をする個人投資家から圧倒的な人気を集めています。芸術的なまでにきれいで迷いのない長期成長を続けていること、優良企業が集まりやすい米国上場企業の中でさらに厳選した500の成長企業で構成していること、人気ランキングでトップクラスのためネットワーク効果でさらに人が集まりやすいことなど、この「大NISA時代」にあり、まさに時代の寵児と言える投資対象です。

 私も、S&P500は投資対象として極めて魅力的だと考えています。米国株セミナーで優良銘柄をご紹介する際も、ほとんどS&P500の構成銘柄から選んでいます。というより、米国で有望な銘柄を選ぶと、「ふたを開けてみればS&P500の構成銘柄だった」ということがほとんどなのです。

 そのため「S&P500を積み立てているだけで良いのか」という疑問に答えるなら、自信の無い商品にあれこれ手を出すよりは、基本的にはS&P500の一本積みで良い、と考えます。成長投資枠でもS&P500に連動する投資信託やETF(上場投資信託)は買付可能ですし、不安なまま他商品に手を出す必要はありません。

注:S&P500に連動する投資信託の積立なら、つみたて投資枠でも成長投資枠でも買付が可能です。

 ただ、S&P500を新NISAで中長期的に積み立てるに際し、ひとつ注意したいことがあります。それはS&P500に連動する主要な投資信託は分配金が出ないということです。分配金を出さないということは、その分を再投資しているわけで、基本的に何か損をしているわけではありません。

 ただはやりの「高配当投資」のように、定期的に現金収入を得ることがS&P500の積立のみでは難しいのです。投資信託ではなくETFなら分配金が出るものも多いですが、その利回りも1%台が多く「高配当」とは呼べません。

 本来NISAで配当を受け取ることの意義は大きく、これを享受しづらいことは難点です。というのも、NISAの非課税メリットはそもそも保有商品が値上がりして含み益となることが前提だからです。含み損で売却すると、NISAゆえの非課税メリットは関係なくなります。しかし配当や分配金が出れば、途中経過でもこれらが非課税の対象となり、NISAの恩恵を受けられます。非課税制度を無駄なく活用したいなら、配当は重要な位置を占めるのです。

 そのため、定期的な現金収入を受け取り、NISAの非課税メリットも無駄なく活用するためには、S&P500以外の投資対象も検討する必要があると言えます。

注)米国上場の銘柄をNISAで保有する場合、配当金の日本での課税分(約20%)は非課税ですが、現地課税分(約10%)は非課税にならず源泉徴収されることに注意してください。通常は外国税額控除の手続きをすれば現地課税分を取り戻すことも可能ですが、NISAではそもそも日本で税金を払わないため、この現地課税の10%は戻りません。これは米国株に投資する国内投資信託や国内上場のETFも同様で、国内課税分から自動的に控除されていた外国源泉税はNISAで分配金が非課税となるために取り戻すことはできません。

注:NISA保有の米国株の配当金は、国内課税は非課税ですが、現地課税で約10%が源泉徴収されます。

疑問(2):S&P500と相性の良い組み合わせは?

 では、S&P500と組み合わせて相性の良い銘柄は何かというと、金利上昇に強い銀行や、景気後退に強い日用品などのセクターです。

 S&P500自体、多様な業種の500銘柄に分散されているので、ことさらこれ以上のリスク分散を図る必要性は薄いです。とはいえ実際問題、アップルやエヌビディアなど巨大なハイテク銘柄だけで構成比の20%近くを占めているのが現状で、ハイテク銘柄の影響を大きく受けている指数といえます。そのためここにアップルやエヌビディアを個別に買い増していくというのは、さすがに特定業種へのリスク偏重が気になります。

 こうしたハイテク銘柄に共通するリスクは、金利上昇です。成長性が高いため収益予測のうち将来に占める割合が高く、金利が上昇してしまうと、その将来の収益に基づく企業価値が大きく割り引いて計算されてしまうためです。そのため金利上昇にある程度の耐性がある銘柄を選ぶと、S&P500との組み合わせでリスクが偏ることを避けられます。

 金利上昇に強く、高配当、かつ時価総額も大きい大型銘柄となると、日米で以下のようなセクターと銘柄が挙げられます。

銀行関連 融資事業の利ざや拡大  
コード 銘柄名 株価 配当利回り
8306 三菱UFJFG 1,237.5円 3.28%
8316 三井住友FG 7,292円 3.46%
日用品関連 景気後退の影響を受けづらい  
ティッカー 銘柄名 株価 配当利回り
KO コカ・コーラ 52.81ドル 3.42%
PG プロクター・アンド・ギャンブル 143.32ドル 2.63%
注1:株価と配当利回りは10/13時点。
注2:NISA保有の米国株の配当金は、国内課税は非課税ですが、現地課税で約10%が源泉徴収されます。

 そもそも株式全般は金利上昇に弱く、これら銘柄も、あくまで金利上昇を収益拡大につなげる機会があるとか、金利の影響を受けづらいということにすぎません。景気後退懸念が極度に高まれば、これら銘柄でも成すすべなく下落します。

 とはいえS&P500と併せて高配当を狙う上では無難な組み合わせだと思います。三菱UFJや三井住友は長らく日本的な低金利環境下での割安バリュー株と評価されていたため、ここ1年ほど、少しでも国内の金利上昇を匂わせるニュースが出ると、素直に株価も上がる場面が多かったです。

 景気の影響を受けやすい投資銀行部門が主力の米国大手銀行グループと比べ、金利上昇耐性は高いと言えます。国内株のためNISAで配当金が完全に非課税になるのも大きなメリットです。

 コカ・コーラとP&Gも、米国で配当貴族(25年間連続で増配を続ける銘柄)としても知られ、配当面での評価が非常に高いです。一般の方からの知名度も高く、初めて個別の米国株に挑戦する際にはおすすめの銘柄です。

 ひとつ留意が必要なのは、コカ・コーラとP&Gのように米国で有名な大型銘柄を選ぶと、たいていそれ自身がS&P500の構成銘柄であるということです。こうした銘柄をS&P500と組み合わせるのは一見リスク分散という意味で不適切なようにも感じます。

 ですがこれはハイテク銘柄に偏り過ぎた構成比を自分のポートフォリオの中で整え直しているとも解釈でき、組み合わせとしてのリスク分散をしていることは変わらないと思います。

 まとめると、新NISAといえど、基本的にはS&P500の投資信託やETFの積立を軸にし続けて良いと思います。とはいえ定期的な現金収入を得たい方、含み損になってもNISAの非課税メリットを無駄なく活用したい方は、ここでご紹介したような、金利上昇に強くS&P500との相性が良い高配当銘柄を組み合わせてみてください!

(森 謙翔)

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