銀行株の今後は?日銀政策修正で大相場が始まったのか?
トウシル / 2023年11月7日 7時30分
銀行株の今後は?日銀政策修正で大相場が始まったのか?
1.銀行株の大相場が始まったのか?
日本の銀行株のアウトパフォーマンスが始まった
昨年12月の日本銀行金融政策決定会合において、YCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)の修正が発表されて以降、日本の銀行株のパフォーマンスが好調です。図表1は、東証銀行業株価指数、TOPIX(東証株価指数)、および、両者の相対株価の推移です。
昨年12月20日に「YCCの運用幅拡大」が発表された直後に、東証銀行業株価指数が急上昇しました。理由としては、10年国債利回りの変動幅が拡大されることで長短金利差が拡大し、利ザヤが拡大、今後の銀行業の収益が改善することを期待したためと思われます。
その後、今年3月には米シリコンバレー銀行の突然の経営破たんに伴う金融システム不安から、スピード調整する局面もありましたが、4月に植田和男氏が日銀新総裁に就任して以降は、さらなる政策修正期待から再び銀行株のパフォーマンスが改善しました。
そして、7月の日銀金融政策決定会合において、「YCC運用の柔軟化」が発表されるとさらにパフォーマンスが好調になるなど、銀行株への市場の関心が高まっています。では、この調子で銀行株の好パフォーマンスは続くのでしょうか?
[図表1]東証銀行業株価指数、TOPIX、相対株価の近年の推移
2.銀行株のアウトパフォーマンスは始まったばかり
長期的に振り返ると、銀行株は長期低迷から抜け出したばかりである
図表2は、東証銀行業株価指数、TOPIX、および、両者の相対株価の長期的推移です。2008年のリーマンショックの頃までは、両者間のパフォーマンス格差は勝ち負けを繰り返しており、相対株価も上下動が繰り返されました。
しかし、リーマンショック後に、日銀による大幅な金融緩和が実行され、その状態が長期的に継続された結果、東証銀行業株価指数のパフォーマンスはTOPIXを大幅に下回り、両者の相対株価は、一時、リーマンショック時の半分以下に下落しました。
このように、日銀による超金融緩和によって銀行株のパフォーマンスが長期低迷してきたわけですが、前述したとおり、日銀の超金融緩和路線に変化が見られ始めたことで、大幅に劣後していたパフォーマンスが改善に向かい始めました。
長期的に俯瞰(ふかん)する限りは、その水準はまだまだ出始めに過ぎず、今後に日銀による緩和路線が修正されていくに従い、銀行株のパフォーマンスの改善も持続するものと見ています。対TOPIXの相対株価は、グラフ上では足元は46となっていますが、リーマンショック時の80~90、あるいは、それ以前の100程度に回復する可能性も否定できないと見ています。
銀行株のアウトパフォーマンスは始まったばかりではないでしょうか?
[図表2]東証銀行業株価指数、TOPIX、相対株価の長期的推移
3.長短金利差の拡大が始まった
銀行株のパフォーマンスへの影響が大きい長短金利差が拡大し始めている
銀行業の基本的な収益源は「資金利益(あるいは預貸利ざや)」ですが、単純に言ってしまえば、集めた預金金利と住宅ローンのような貸出金利の差です。昨今の報道などにあるように、国内長期金利が上昇したことで住宅ローンの金利も引き上げられていますが、一方で、預金金利はほとんど上がっていません。
図表3は、国内の10年国債利回り、1カ月物短期金利、そして、長短金利差(両者の差)ですが、前掲した銀行業の対TOPIX相対株価と長短金利差は非常に似た動きとなっていることが分かります。その理由は、上述したように、銀行業の基本的な収益源がこの長短金利差に大きく依存するためです。長短金利差が拡大すれば銀行業の収益が拡大し、株価が上がるという構図です。
足元では、長短金利差の拡大が始まったことで銀行株の対TOPIX相対株価が急回復していますが、先ほど説明したリーマンショック当時やそれ以前の水準に相対株価が回復する条件の一つが、当時の長短金利差に戻ることであると考えています。
その長短金利差の水準は1.0~1.5%程度の水準であり、短期金利のゼロ金利政策が続き、10年国債利回りが1.0~1.5%に達すれば、実現可能であり、そう遠い未来ではないように考えます。銀行株の大相場が始まったのではないでしょうか?
[図表3]国内金利の長期的推移
<関連銘柄>
NEXT FUNDS 東証銀行業株価指数連動型上場投信(証券コード:1615)
NEXT FUNDS 銀行(TOPIX-17)上場投信(証券コード:1631)
<当資料で使用した指数と著作権等について>
●東証銀行業株価指数やTOPIX(東証株価指数)の指数値及び東証銀行業株価指数やTOPIXに係る標章又は商標は、株式会社JPX総研又は株式会社JPX総研の関連会社(以下「JPX」という。)の知的財産であり、指数の算出、指数値の公表、利用など東証銀行業株価指数やTOPIXに関するすべての権利・ノウハウ及び東証銀行業株価指数やTOPIXに係る標章又は商標に関するすべての権利はJPXが有します。JPXは、東証銀行業株価指数やTOPIXの指数値の算出又は公表の誤謬、遅延又は中断に対し、責任を負いません。
(阪井 徹史)
この記事に関連するニュース
-
トランプ次期政権と良い相性が期待できる日本株の業種は?
トウシル / 2024年11月22日 7時30分
-
年内最後の値動きに期待!東証グロース株5選~新NISA、年末の使い方をおさらい~
トウシル / 2024年11月20日 16時0分
-
三菱UFJ・三井住友FG「買い」継続。金利上昇が追い風、二期連続の最高益(窪田真之)
トウシル / 2024年11月19日 8時0分
-
Jリートの今後の見通しは?見直されるべきと改めて考える三つの理由
トウシル / 2024年11月8日 7時30分
-
日本株は「徐々にレンジを切り上げる展開」を予想 ~先月の金融市場の振り返りと見通し【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジスト】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月7日 9時50分
ランキング
-
1電気・ガス料金高止まり「風呂キャンセル」「設定温度1℃」で何円変わる? “ちょっとした”節約術をご紹介【Nスタ解説】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月29日 21時59分
-
2行列スキップ「ファストパス」飲食店で拡大!食材費や人件費の補填や、ドタキャン対策にも【Nスタ解説】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月29日 21時30分
-
3ワークマンは「8800円ランドセル」で勝負…「過去最悪の少子化」でも異業種がランドセル市場に続々参入するワケ
プレジデントオンライン / 2024年11月29日 16時15分
-
4高級タワマン老人ホームへ引っ越しました!…慶應卒・78歳同期の元常務から届いた満面の笑みの年賀状。年金月30万円・元部長は即座に画像検索「脅威の入居金額」に悶絶
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月29日 10時45分
-
5為替相場 30日(日本時間 7時)
共同通信 / 2024年11月30日 7時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください