日経平均4万円、早ければ2年で到達と予想する理由(窪田真之)
トウシル / 2023年11月16日 8時0分
日経平均4万円、早ければ2年で到達と予想する理由(窪田真之)
日本の株価・地価・物価・賃金は国際比較で「割安」と考える
日経平均株価が年初来高値に迫る中、「バブルだ、もと来た道だ」と警鐘を鳴らす人もいます。私はそうは思いません。日本株は割安で、日経平均は早ければ2年、遅くとも4年以内に4万円まで上昇すると予想しています。
日本株がバブル相場だった1989年と今では、日本企業の財務内容・収益力・ビジネスモデル・ガバナンスがまったく異なるからです。日本株のPER(株価収益率)・PBR(株価純資産倍率)は当時に比べて低く、配当利回りは高くなりました。日本株は当時と比べて、格段に割安になったと判断しています。
30年前、日本の株価・地価・物価・賃金は、国際的に比較して極めて「高い」水準にありました。今は、その逆です。株価・地価・物価・賃金は、国際的に比較して「割安」になっていると思います。割安な株価が評価されて、日経平均は4万円に向けて上昇すると予想しています。
<日経平均(年次推移):1973~2023年(11月15日)>
1973年当時、日経平均は5,000円前後でした。東証一部のPERは約13倍でした。この時の日本株は「割安」でした。
ところが、その後、日経平均はどんどん上がり続け、1989年(平成元年)末には3万8,915円の史上最高値をつけました。この時、東証一部のPERは約70倍まで上昇し、10~20倍が妥当と考える世界の常識をはるかに超えた「バブル」となりました。
バブルは、平成に入ってから崩壊しました(1989年)。ただし、「平成の構造改革」で復活した日本株は2009年以降、再び、上昇トレンドに戻りました。今、東証プライム市場の予想PERは約15倍に低下し、再び割安になったと判断しています。
私は「日本株は割安で長期的に良い買い場を迎えている」と考えていることをいつもお話ししています。ただし、割安な株を買えば、いつでも上昇するというわけではありません。世界景気の変動にともなって、世界景気敏感株である日本株は、外国人の売りや買いによって急落・急騰を繰り返します。
したがって、リスク管理は大切です。時間分散しながら、日本株に投資していくことが、長期の資産形成に寄与すると考えています。
日経平均が4年以内に4万円に上昇すると予想する根拠
私は、平成の構造改革で投資価値が高くなった日本株は令和時代にさらに飛躍すると予想しています。日経平均は、4年以内に史上最高値(1989年12月末の3万8,915円)を超え、4万円に到達すると予想しています。
EPS(1株当たり利益)の増加が、日経平均の上昇をけん引すると予想しています。バブルではなく、企業価値の増加によって株価が上がっていくと予想しています。その根拠をお話しします。
まず、前提条件ですが、楽天証券経済研究所では4年後までに東京証券取引所上場企業のEPS(加重平均)が25.7%増加すると予想しています。年率平均で5.9%の上昇を予想です。これにより、TOPIX(東証株価指数)が4年で25.7%上昇、日経平均もこれに連動することを前提としています。
日経平均の11月15日終値は3万3,519円です。そこから25.7%上昇すると4万2,133円となります。それが、4年以内に日経平均が4万円に到達すると予想する理由です。
ただし、早ければ日経平均は2年で4万円に到達する可能性もあると考えています。PERを切り上げながら上昇すると2年での到達もあり得ます。1株当たり利益が年率5.9%増加し、PERが15倍から16倍に切り上がると、2年で日経平均は4万円に到達します。
東証上場企業のEPSを増加させるドライバー
EPSを増加させるドライバーが3つあります。【1】海外での利益成長、【2】インフレ、【3】自社株買いです。この3つを合わせて、EPSは年率平均5.9%増加すると予想しています。それが4年続くと、EPSは25.7%増加します。
<東証上場企業のEPS増加要因>
【1】海外事業による利益成長:年率寄与度(予想)2.2%
「人口が減少する日本の株は魅力がない」と言う人がいます。もし、日本企業が日本国内だけでビジネスを行っているのならばその通りですが、実際には日本企業は人口が増加するアジアや米国などで幅広くビジネスをやっています。これからも巨額M&A(買収や合併)で海外企業の買収を積極的に進めていくと思います。
日本企業の海外事業の成長が、東証上場企業のEPSを年率2.2%増加させると予想しています。
【2】インフレ(CPI総合指数の上昇率):年率寄与度(予想)2.3%
日本のインフレ復活が、日本の企業業績・株価を上昇させる要因となります。日本企業は長年にわたり、ゼロ・インフレに苦しんできました。コアコア・インフレ率(生鮮食品およびエネルギーを除くインフレ率)が2023年9月時点で4.2%まで上昇したことは、企業業績にとって干天の慈雨となります。
<日本の総合インフレ率、コアコア・インフレ率の推移:2020年1月~2023年9月>
日本のインフレ率は一時的要因で高くなっており、中期的には年率2.3%に低下すると予想しています。それでもゼロ・インフレには戻らないと考えています。サービス価格の上昇が続くと予想しています。
【3】自社株買い:年率寄与度1.3%
東証上場企業は、毎年10兆円の自社株買いをやると予想しています。自社株買いによって、毎年EPSが約1.3%増加します。
10兆円は発行済み株式数の約1.3%に相当します。10兆円の自社株買いをやると、発行済み株式数が平均で約1.3%減少します。発行済み株式総数が約1.3%減少するので、利益総額が変わらないでも、EPSは約1.3%増加します。
日本企業は、米国企業に比べて、これまで自社株買いに積極的ではありませんでした。それは日米のカルチャーの違いもあります。日本企業は、経営危機になった時でも従業員を解雇せずに生き延びられるように財務余力を残そうとする傾向があるからです。
目いっぱい自社株買いをして株価を上昇させて、経営危機になったら簡単に破綻する米国企業とは異なります。そのカルチャーは簡単には変わらないと思います。
ただし、日本企業の財務的ゆとりがかなり大きくなったにもかかわらず、自社株買いをやらないために株価低迷が続き、PBR1倍割れ企業が半数を超える状況が続いています。この現状を憂慮して、東京証券取引所がPBR1倍割れ企業に対して株主価値改善策の開示・実施を要請したことが、話題になっています。
こうした変化を受けて、今後は日本企業でも年間10兆円くらいの自社株買いが行われるようになると予想しています。10兆円は控えめの見通しです。実際にはもっと自社株買いは増える可能性があります。
ただし、日本企業の経営者が経営危機に備えて財務余力を温存しようとするカルチャー自体は変わらないと思います。そういう中で、年間10兆円くらいの自社株買いと予想しました。
ここで一つ、極論をお話しします。日本の上場企業は、互いに株を持ち合う「株式持ち合い」をやっています。米国経営者ならば、即座に持ち合い株式を全て売って自社株買いを行うと考えられます。日本企業の経営者が全て米国流経営に染まって、全ての企業が全ての持ち合い株式を売却して、自社株買いに充てるとどうなるでしょう。
持ち合い株式の比率は諸説ありますが、平均して3割あると仮定します。それが全て売却されて自社株買いに充てられると、日本企業の発行済み株式数は約3割減少し、利益総額が変わらないでも、1株当たり利益は43%上昇します。そうなると、日経平均は理論上43%上昇して、4万7,900円程度になります。
以上は極論です。現実には起こり得ないと思います。日本企業の経営者は、米国流の自社株買いはやらないと思います。それでも、株価低迷が長期化している企業を中心に自社株買いは今後増加し、年間10兆円程度と予想しています。
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