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10年国債、金利が1%上昇したら、何%値下がり?

トウシル / 2023年12月2日 8時0分

10年国債、金利が1%上昇したら、何%値下がり?

10年国債、金利が1%上昇したら、何%値下がり?

「クイズでわかる!資産形成」(毎週土曜日に掲載)の第6回をお届けします。資産形成をきちんと学びたい方に、ぜひお読みいただきたい内容です。

 毎回一つクイズを解いてもらいます。クイズの答え合わせをしながら、資産形成に必要な知識を一つずつ身に付けていってください。

債券投資をしっかり学びましょう

「資産形成について学ぶ」というと、株について勉強すると思う方が多く、債券についてしっかり学ぼうとする方はあまりいません。株は難しいけれど債券は簡単、と勘違いしている方が多いからでしょうか?

 今日は、債券についてしっかり学べるクイズを出します。「株は値上がりと値下がりが激しく、リスクが高いので難しい。債券は確定利回りで簡単だ」と思っている方の誤解を解くことが目的です。

 たしかに「個人向け国債」のように大きく値動きしない仕組みの債券もありますが、同じ国債でも固定利付きの長期債は価格が大きく動きます。

 日本の国債でも、30年債とか、40年債とか、額面金額が払い戻される償還日までの年数が非常に長いものは、金利や信用リスクの変動によって価格が大きく動きます。満期まで保有するなら、日本国が破綻しない限り(破綻しないものとして話を進めます)額面金額で償還されるので、確定利回りです。

 ただし、30年も40年も持ち続けられるか、分かりません。満期日前に途中で売却する可能性もあります。その時、買い値を下回る価格で売却して損失が出る可能性もあります。それを理解しながら、長期債にも分散投資していくと良いと思います。

 なお、今日のクイズで取り上げるのは、一般の国債(償還までの表面利率が発行時に決まっている固定利付き債)です。途中売却で損失が出にくいように設計されている「個人向け国債」とは異なります。値動きが大きい代わりに、利回りが個人向け国債よりも高くなる可能性があります。

今日のクイズ:10年国債、金利が上昇すると何%値下がりする?

<クイズ>10年新発国債(表面利率1%)を、額面100円で100万円購入しました。

 購入時点で1%だった長期金利(10年新発国債利回り)が購入直後2%に上昇すると、購入したばかりの表面利率1%の国債は時価で約何%値下がりするでしょうか?以下の選択肢【1】、【2】、【3】から一つ、選んでください。

 【1】約3%値下がりして、97円になる
 【2】約9%値下がりして、91円になる
 【3】約15%値下がりして、85円になる

(注)2023年11月28日時点で、10年新発国債利回りは約0.76%です。クイズでは分かりやすくするために、1%と2%に設定しています。利回りは全て、単利ベース。

日本国債の利回りは、40年債なら約2%も

 正解に進む前に一つ、見ていただきたいものがあります。11月28日の日本国債利回り一覧です。償還までの年数によって、利回りが異なります。

<日本国債の利回り(固定利付き債、単利):2023年11月28日15時>

出所:QUICK

 30年国債なら利回りが1.7%あります。40年債ならば約2%です。魅力的な利回りです。ただし、30年、40年先まで持ち続ければ、額面金額で償還されるので確定利回りですが、それまで持ち続けられるか分かりません。途中でお金が必要になって時価で売却するかもしれません。

 途中で売却する時に値下がりしていなければ良いですが、値下がりしている可能性もあります。一番心配しなくてはならないのは、金利上昇リスクです。市場金利が上昇すると、長期国債は値下がりします。もし1%金利が上昇すると、どのくらい、値下がりするのでしょうか。それを考えるのが、今日のクイズです。10年国債を例としてクイズにしました。

クイズの正解:約9%値下がりして、91円になる

 正解は、【2】約9%値下がりして、91円になる、です。けっこう大きく値下がりします。満期の10年後に額面100円で償還されるのですが、時価では91円まで値下がりします。

 この10年新発国債の、金利上昇前と金利上昇後の利回りを計算してみましょう(単利で計算)。説明を分かりやすくするために、額面100円の国債を100円で買ったものとして説明します(実際には100円では売買できません)。

<金利上昇前:10年新発国債利回りが1%の時>
 投資額(額面)=100円
 1年間の利息=1円 
 10年目に受け取る償還金(額面金額)=100円
 これを表に書くと、以下の通りです。

 この国債に100円投資して、10年間で110円得られます。つまり、10年間のリターンは合計10円です。額面金額100円で10年間に10円のリターンですから、年利回りは(10円÷10年)÷100円=1%です。

 それでは、ここで突然、長期(10年)金利が突然1%上昇して、2%になったとします。日本国が新規に10年国債を発行しようとすると、額面金額(100円)当たり2円の利息を付けないと、発行できないことになります。

 そうなると、元々あった1年に1円の利息しか付けない、上記国債をそのまま額面(100円)で買う人はいなくなります。この国債は、値下げをしないと売れません。いくらまで値下げしたら売れるでしょうか? その答えが、約91円です。

 91円に値下がりした国債を買った人の年利回りは約2%となります。

<金利上昇後:10年新発国債利回りが2%になった後>
 投資額(額面よりも値下がり)=91円
 1年間の利息=1円 
 10年目に受け取る償還金(額面金額)=100円
 これを表に書くと、以下の通りです。

 この国債に投資すると、投資額91円で、10年間に110円得られます。10年間のリターン合計は110-91=19円です。19円のうち、10円は受け取り利息で、9円は償還差益です。91円で購入した国債が100円で償還されるので9円の償還差益が得られます。

 10年間で19円のリターンがあるので、1年当たりでは1.9円のリターンとなります。

 したがって、年利回り=1.9円÷91円=2.08%(約2%)です。

長期国債は金利が低下すると値上がり

 前段で、固定利付きの10年国債が、市場金利が1%から2%に上昇すると値下がりすることを説明しました。逆にいえば、固定利付きの10年国債は、市場金利が2%から1%に低下すれば値上がりします。

 一般的に以下の傾向があります。

  1. 景気が良い時→金利が上昇→長期国債が値下がり
  2. 景気が悪い時→金利が低下→長期国債が値上がり

長期国債と株に同時投資で分散効果

 株は、これとは逆の動きをすることが多いので、株と長期国債に同時に投資することで分散投資効果が働くことが多いと言えます。

  1. 景気が良い時→株が上昇→金利が上昇→長期国債は値下がり
  2. 景気が悪い時→株が下落→金利が低下→長期国債は値上がり

 上記の関係が成り立つことが多いので、株と長期国債に分散投資することは、長期的な資産形成におけるリスク管理として有効です。

 ただし、上記関係がいつも必ず成り立つわけではありません。不況下の株高や、好況下の株安もあります。株と債券が同時に上昇したり、同時に下がったりすることもあります。それでも、長期の資産形成では、株と債券に分散しておいた方がリスク管理上有効であることには変わりません。 

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(窪田 真之)

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