どこまで上がる?~12月のビットコイン見通し~
トウシル / 2023年12月7日 15時40分
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どこまで上がる?~12月のビットコイン見通し~
11月のビットコインイベント
NEW! 11月20日 | アルゼンチン大統領選でペソ廃止派ミレイ氏勝利、ペソ建てBTC史上最高値 |
NEW! 11月21日 | バイナンス、テロ資金供与認め43億ドル罰金、CZ氏退任 |
NEW! 11月22日 | SEC、ETF実現に向けグレースケール・ブラックロックと協議 |
*2023年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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材料面から見た12月見通し
11月の振り返り
11月のビットコイン価格(円)とイベント
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11月のBTCは続伸
月初のFOMC(米連邦公開市場委員会)で2会合連続の金利据え置きとなった。さらに3日の雇用統計が弱く出たことで利上げ打ち止めが既定路線となり、BTCはじりじりと値を上げ始めた。
するとBTCの現物ETF(上場投資信託)を巡り、グレースケールとSEC(米証券取引委員会)とが協議を始めたとコインデスクが報じ、さらにブラックロックがETH現物ETFを申請、ETHに連れ高となる形でBTCは年初来高値を更新して3万8,000ドル手前まで上昇した。
同水準でのやれやれ売りに3万5,000ドル割れにまで押し戻されたが、CPI(消費者物価指数)・PPI(生産者物価指数)がともに弱く、利上げ打ち止めが決定的となり、また懸念されていた米政府閉鎖が回避されたことで急反発した。再び3万8,000ドルをトライするも失敗すると、しばらく3万6,000ドルを挟んでのもみ合い推移となった。
するとアルゼンチンの大統領選で下馬評を覆してペソ廃止を主張するミレイ氏が勝利、同氏が8月に予備選で勝利した際にペソが切り下げられ、逃避フローが出たこともありBTCは3万7,000ドル後半に上昇した。
しかし、バイナンスが、アルカイダ、イスラム国、ハマスへのテロ資金供与に加担していたことを認め、米当局に43億ドル支払うことで和解。CZ(仮想通貨取引所バイナンスの元CEO)氏も有罪を認めCEOを退いたことを受け、3万5,000ドル台に失速した。
ところが、今度はグレースケールやブラックロックがETFを巡り、SECと協議を始めたと伝わり、ETF承認は近いとの見方からBTCは再び3万8,000ドル手前に値を伸ばした。
すると、ハマスとイスラエルがカタールの仲介で4日間の一時停戦と人質交換に合意、実際に人質の解放が始まると、一時3万8,000ドル台半ばに上昇したが、戻り売りに押されて3万6,000ドル台に値を下げた。
しかし、11月末から12月頭にかけて、タカ派のウォラーFRB(米連邦準備制度理事会)理事が利下げの可能性に言及、弱めのISM(米サプライマネジメント協会)製造業景況感指数に続いてパウエルFRB議長講演もハト派と受け止められ、来年3月FOMCでの利下げ織り込みが進んだ。
またブルームバーグのアナリストを中心に、来年1月8日から10日辺りにETFが承認されるとの見通しが広まったこともあり、BTCは4万ドル乗せに成功している。
材料面から見たBTC見通し
11月のBTC市場では多くの材料が交錯する中、3万6,000~3万8,000ドルの年初来高値付近でのもみ合いが続いたが、FRBの利上げ打ち止め観測とBTC現物ETFの承認期待を契機に月末にかけてクリアに上抜けすると、4万2,000ドル近辺まで上昇した。
利上げの有無から利下げの時期へ
まず前者だが、月初のFOMCでの2会合連続の利上げ見送りと弱めの雇用統計とCPIを受けて、先物市場の追加利上げの織り込みが消滅、利上げ打ち止めが確実視されることとなった。これでこの材料での上昇は一服、次は利下げ時期が焦点となったが、月末近くにウォラー理事が数カ月以内に利下げする可能性に言及したことで、利下げを織り込みに行く展開となった。
FF先物2024年1月FOMCでの利上げ・利下げの織り込み
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ウォラー理事は、FRBが金融政策を決める上で指標としている実質金利(名目金利―インフレ率)はインフレ率が下がれば上昇するので名目金利を下げる可能性があるという当たり前の理屈を述べただけだが、タカ派筆頭と目された理事の発言だったことで注目を集めた。
その後のパウエル議長のコメントもバランスの取れた内容だったが、市場はハト派に受け取り、4万ドル乗せの原動力となった。
1990年代からの平均で見ると最後の利上げから最初の利上げまでの期間は約9カ月。今年7月が最後の利上げなら、最初の利下げが3月でも不思議はない。ただ、3月にどうするかは来年の景気動向によるので、ようやく利上げ打ち止め感が出てきた現時点で議論するのには少し無理がある。そういう意味では今回の上昇はやや行き過ぎ感が否めない。
FF金利(連続利上げ終了後、最初の利下げまでの日数)
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ETF承認期待
もう一つの上昇の原動力はETFの承認期待だ。11月9日コインデスクがグレースケールとSECがGBTC(グレースケールが提供するビットコイン投資信託)のETFへの転換を巡り、協議を始めたと報じた。
その際の市場の反応は限定的だったが、22日から23日にかけて、グレースケールに加えブラックロックも同様の協議が行われていると報じられるとBTCは3万8,000ドルに肉薄した。25日にはETF承認の織り込み度合いを示唆するGBTCのネガティブプレミアムは▲8%近くに低下した。
GBTCプレミアム(市場価格/純資産価格-1)とBTC/USD価格
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グレースケールが運営するBTCファンドGBTCは、保有しているBTCの時価に対して、店頭市場で取引されているファンドの株式の価格が下回っている。これがネガティブプレミアムだ。元々、GBTCの株式がプレミアムで取引されていた経緯にある。このネガティブプレミアムがETFにシフトすれば解消すると見込まれている。
なぜ解消するかといえば、マーケットメーカーが裁定取引を行うからだ。マーケットメーカーは、運営会社との間で新規の設定や償還でポジションを清算する。今回、SECとブラックロックとが協議していたのは、この裁定取引の方法についてと報じられている。
そうであるならば、ETFを認めるか否かではなく、認めることを前提とした議論が始まっており、承認は時間の問題だという見方からBTCは上昇した。
12月に入りETF承認は1月8~10日辺りとの観測が出回り、BTCの4万ドル乗せの一因となった。ただし、この際に、先月ご紹介したETF承認の織り込みを示す、GBTCのネガティブプレミアムは▲8%まで低下した後、あまり進んでいない。すなわち、ETF承認期待や利下げ観測以外に相場を押し上げた要因があるはずだ。
戻り売り一巡
このように、12月に入って利下げやETF承認の織り込みが一服しているのにBTCが4万2,000ドルまで上昇したのはなぜか? その理由の一つは3万~4万ドルのやれやれ売りをこなしたからだと考える。
BTC/USD 月足
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滞空時間が長かったこのゾーンには、塩漬けとなっているロングポジションが多く、今年4月に3万ドル台に乗せてからは、新値を付けるたびに戻り売りに押し戻される展開が続いた。
しかし、徐々にこの水準での売りをこなし、ついに売り方の弾が尽きたイメージか。言い方を変えれば、2021~2022年前半の18カ月のうち、12カ月滞在したこのエリアを4月から8カ月かけて通過した格好だ。
半減期サイクル
もう一つの理由は半減期への期待だ。半減期というのは、4年に一度BTCの供給が半分に減るイベントで、来年の4月ごろに予定されている。それゆえ、相場は4年サイクルで上昇してきており、そうした本格的な上昇が始まったのではないかという期待だ。
ちょうど2017年11月や2020年12月辺りの上昇に似ているとの見方だ。小職は2025年に10万から15万ドル程度に上昇すると予想しているが、2024年内ないし4月の半減期前に10万ドルに到達するといった強気の見方まで出回った。
BTC/USD(週足2017年)
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BTC/USD(週足2020年)
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しかし、過去の例でも相場のピークは半減期の1年~1年半後に到来している。仮に市場参加者の多くが意識するようになって、ピークが前倒しになったとしても、実際に供給が減っている訳でもない半減期前に大相場が到来すると考えるのは勇み足だろう。
実はそうした例は過去にもあって、半減期前の2016年6月や2019年6月にも小さめの急騰相場があったが、いずれも前回のピークを更新できずに失速している。面白いことに、いずれも半減期後のピークの3分の2程度まで上昇しており、前回のピークが6万9,000ドルだったので、今回でいえば4万6,000ドル前後が上値のめどとなるか。
BTC/USD(週足2016年)
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BTC/USD(週足2019年)
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中東情勢
中東情勢にもBTC市場は振り回された。しかし、この問題については、好転すればリスクオンでBTC買い、悪化しても米ドルに代わる質への逃避需要でさほど売られず、どちらに転んでもBTCは底堅い状況を作った。
下旬に4日間の一時停戦が成立し、休戦に向けた第一歩と好感され、その後も延長されるたびにリスクオン気味に反応したが、12月1日に停戦の更新ができず戦闘が再開した。しかし、週明けにゴールドや円などが買われる中、BTCも上昇、4万ドル乗せの一因となった。
バイナンス問題
バイナンスの問題も、中東情勢と無関係ではないかもしれない。先月7日の越境攻撃を受けて、バイナンスがハマス関連の暗号資産口座を凍結した。
暗号資産業界の一部は、バイナンスがイスラエル当局に協力しハマスの資金調達をストップしたかのように扱ったが、ウォール・ストリート・ジャーナル はハマスが暗号資産で資金調達していると報じ、エリザベス・ウォーレン議員(米国民主党所属、上院議員)などはそれ見たことかと規制の強化を訴えている。
暗号資産業界はバイナンスの罰金とCZ氏の退任でみそぎがすんだつもりでいるかもしれないが、本件を受けた規制強化はまぬがれないと考えた方がいいだろう。長い目で見れば業界の浄化を一歩進めた格好だが、短期的には売り要因となりかねない。
テクニカル面で見たBTC相場見通し
BTC/USD MACD・RSI
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テクニカル分析では少し不思議な動きが見られた。上記はMACD(移動平均収束拡散手法)とRSI(相対力指数)だが、相場が上昇しているのに両者が下向きとなるダイバージェンスが発生し、典型的なトレンド転換を示唆するサインが出ていた。
調整が入るのは時間の問題と見ていたところ、相場は逆に大きく上昇。この結果、MACDやRSIが相場に合わせる形で上向きになった。もうこれでダイバージェンスが解消したと見るか、近いうちにトレンド転換が出るのかは正直申し上げてよく分からない。そうした動きだった。
BTC/USD 一目均衡表・ボリンジャーバンド
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![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/8/1/-/img_815793ea14134226d9e557110fb1660328997.png)
一目均衡表やボリンジャーバンドは強い形。遅行線がローソク足に近づき、3役好転が解消しそうになっていたところで急上昇、しばらくは買いサインが続きそうな格好。ボリンジャーバンドも拡大、上のバンドにローソク足が重なるバンドウォークの強いサインが点灯している。短期的には上値余地がありそうな格好だ。
BTC月別騰落一覧
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恒例の月別の騰落率で見ると、12月は過去12年で6勝6敗(6回上昇、6回下落)と五分五分。月別で負け越している3月、8月、9月に次いでパフォーマンスが悪い。とはいえ勝率5割だし、3カ月連続で陽線が続いた過去12回のうち、翌月が陰線となったのは3回だけだ。一方で、直近5年間で4回下げているのが気になるところで、季節性でどうこうとは言い難い。
まとめ
まとめると、12月のBTC相場は上に行って来いの展開か。
すでに月初に大きく上昇しており、もう少し上昇余地がありそうだが、上値のめどは4万6,000ドル辺り。期待先行の買いで調整売りに注意したい。ETFの承認は1月になるとの見方が優勢だが、承認後はSell the Fact(「うわさで買って事実で売る」という投資格言)が出る可能性が強い。
2023年 時事イベントと暗号資産イベント(最新順)
10月17日 | ブラックロックCEO BTCは「質への逃避」 |
10月16日 | ブラックロック分BTC ETF承認誤報 |
10月14日 | SEC、グレースケール裁判の控訴断念 |
9月28日 | SEC、ブラックロック申請分などのETF可否判断再延期 |
9月19日 | 野村ホールディングス、子会社でBTCファンド提供 |
9月10日 | インド、今後数カ月で暗号資産に対するスタンスを決定 |
8月31日 | SEC、ブラックロック申請分などのETF可否判断延期 |
8月29日 | グレースケール、SECに勝訴 |
8月17日 | スペースX、保有BTC売却 |
8月2日 | ライトコイン半減期 |
7月13日 | リップル、SECに部分勝訴 |
7月6日 | ブラックロックCEO、BTCは国際的資産 |
6月15日 | ブラックロック、BTC現物ETFを申請 |
6月6日 | SEC、コインベースを提訴 |
6月5日 | SEC、バイナンスを提訴 |
5月23日 | 香港当局、個人向け暗号資産取引解禁・CCTVが報道 |
5月22日 | ビットコイン・ピザデー |
5月8日 | PEPE騒動の影響でBinanceで入出金停止 |
4月25日 | コインベース、SECを提訴 |
4月24日 | ファーストリパブリック銀行決算発表で1,000億ドルの預金流出判明 |
4月19日 | SEC委員長、下院公聴会で批判集まる |
4月12日 | ETH上海アップデート |
3月27日 | CFTC、Binanceを提訴 |
3月22日 | コインベース、SECから訴追予告受け取る |
3月22日 | SEC、ジャスティン・サン氏らを起訴 |
3月12日 | シグニチャー銀行が経営破綻、閉鎖へ |
3月8日 | シルバーゲート銀行清算を持ち株会社が発表 |
2月23日 | ゲンスラーSEC委員長、BTC以外は証券に該当する可能性 |
2月13日 | パクソス、Binance USD(BUSD)発行停止 |
2月9日 | クラーケン、ステーキング停止 |
1月19日 | ジェネシス・グローバル・ホールドコ、チャプター11申請 |
1月17日 | 香港拠点のBitzlatoのCEOを米当局が逮捕 |
*マイニングとは:暗号資産(仮想通貨)は一般的にブロックチェーンと呼ばれるネットワーク参加者が誰でも見られる元帳上に取引を記録していきます。そのブロックチェーン上に取引データを記録する際に、膨大な計算を行うことで新たなブロックを生成する暗号を見つけ出し、その報酬としてコインを手に入れる行為のことです。マイニングの主な役割は「暗号資産の新規発行」と「取引の承認」です。
**BlockFiとは:暗号資産融資プラットフォームBlockFi(ブロックファイ)が提供する暗号資産を預かって利息を払うサービス(レンディング)が証券法に違反したと提訴された事件に関する和解として、SEC(米国証券取引委員会)に1億ドル(約115億円)を支払うと発表。
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(松田 康生)
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