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NISAで新興国株に分散投資。ある国を除く理由とは?鍵は「働きざかり」

トウシル / 2023年12月15日 7時0分

NISAで新興国株に分散投資。ある国を除く理由とは?鍵は「働きざかり」

NISAで新興国株に分散投資。ある国を除く理由とは?鍵は「働きざかり」

米国市場は「2024年のピボット(金融政策転換)」を視野に

 米国市場では今週もS&P500種指数、ダウ工業株30種平均、ナスダック総合指数が年初来高値を更新しました。S&P500は節目とされていた4,600ポイントを超え、年初来騰落率は+22.6%に達しています。また、ダウ平均は3万7,090ドルと史上最高値を更新しました(13日)。

 今週注目されていた11月・CPI(消費者物価指数)は市場予想に沿った伸び(前年同月比+3.1%)となり、11月・PPI(生産者物価指数)の伸び(同+0.9%)は前月(+1.3%)より減速しました。FOMC(米連邦公開市場委員会)は13日、市場予想通り政策金利を2001年以来の高水準で据え置くことを全会一致で決定。金利据え置きは3会合連続でした。

 FOMCメンバーによる「経済・金利見通し」(予測中央値)は2024年に合計で0.75ポイントの利下げを実施するとの見方を示し、積極的な利上げキャンペーンが終了したとのシグナルをこれまでで最も明確に発しました。

 FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が記者会見で「FOMCで利下げのタイミングも議論した」と認めるなど想定以上にハト派だったことを受け、米国株は大幅高で応じました。長期金利(10年国債利回り)は4%を割り込んでいます(日本時間14日)。市場は2024年におけるFRBのピボット(金融政策転換)を織り込み始めています。

 図表1は、シカゴで取引されているFF金利先物価格から逆算した「2024年の政策金利予想」です(FOMC直後)。市場が「当局は2024年央までに利下げに転じる」との動きを先読みしていることを示しています。

<図表1>先物市場は2024年の利下げ傾向を視野に入れている

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年12月13日)

NISAで「新興国株にも分散投資したい」とのニーズを検討

 来年1月から始まる新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)に向け、先進国株式だけでなく成長期待が高い「新興国株式」に分散投資したいニーズもあります。

 長期市場実績を振り返ると、米国市場で金利低下やドル安が見込まれる状況になると、「金利上昇」や「ドル高」が重しとなりやすい新興国市場のパフォーマンスが改善した経験則があります。ブルームバーグは5日、「米金利低下やドル安で新興国ETF (上場投資信託)に資金流入が拡大している」と報道しました。

 特に、「(中国を除く)新興国株式ETFは、運用資産の総額が2023年第4四半期(10-12月)に50%超の増加を示し、2021年9月以降で最も高い伸び率を示している」と指摘しました。

 実際、MSCI新興国株指数の時価総額ウエートで約3割を占める中国では、不動産不況による景気への懸念が根強く、20%を超えるとされる若年者層の失業率、物価指標のデフレ傾向、一党独裁体制への不安などが重なりMSCI中国株指数は年初来で15.4%下落する低調となっています(13日)。

 図表2は、MSCI新興国株指数と「中国を除くMSCI新興国株指数」の相対推移を年初来で比較したものです。中国を除く新興国株に投資マネーが向かっていることを示しています。そのけん引役とされているのがインド株式です。

 インド市場の代表的株価指数であるSENSEX指数は12月11日に史上最高値を更新しました。インドは今年前半に総人口(約14億2,000万人台)で中国を抜いたとみられ、平均年齢も28歳であることから「人口ボーナス期」と呼ばれる高度経済成長期を迎えています。

 内需拡大への期待が高まる中、現モディ政権が推進する「メイク・イン・インディア」の効果もあり、欧米や日本などの多国籍企業(グローバル企業)がインドでの生産拠点や販売網を拡充する動きが鮮明となっています。

<図表2>「中国を除く新興国株指数」が優勢となっている

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年初~2023年12月13日)

「働きざかり」(労働人口成長国)への分散投資に注目

 上述した新興国株式への分散投資ニーズに応える追加型投資信託があります。「iTrust新興国株式」の愛称は「働きざかり~労働人口増加国限定~」です(運用:ピクテ・ジャパン)。同ファンドは新興国株式に分散投資するアクティブ型ファンドで、特徴として「労働人口(15~64歳の生産年齢人口)が伸びている国のみに分散投資をする」との運用方針が挙げられます。

 若くて消費意欲が旺盛な労働人口が増加する国では、労働力や消費市場の拡大に注目した国内外の企業からの投資を引き寄せ、生産活動が活発化しやすいとされます。雇用や所得の増加を経て、貯蓄や消費の拡大につながるサイクルを通じて「労働人口成長国は中長期で高い経済成長が期待できる」との考えで運用されています。

 従って、MSCIの分類上で「新興国」とされる国々でも、労働人口が減少に転じている中国、ロシア、韓国、台湾は投資対象にしていません。同ファンドの最近の投資対象は労働人口が伸びているインド、ブラジル、南アフリカ、メキシコ、インドネシアなどの株式となっています

 例えば、メキシコは2023年上期(1-6月)に「米国の国別輸入金額(6カ月累計)」で中国を抜き首位となりました。米中対立を背景に、米国が進める友好国とのサプライチェーン(供給網)構築がメキシコからの輸入拡大の追い風です。

 また、米国企業が生産拠点を消費地の近隣国に移転する「ニアショアリング」の流れがメキシコでの投資活性化に寄与しています。図表3は、「働きざかり」(労働人口が成長している新興国株式)に分散投資する「iTrust新興国株式」の基準価額と日経平均株価(225種)の推移を比較したものです(2021年初=100)。

 同ファンドのリスク(リターンのブレ)は比較的高いものの、リターンが優勢だったことが分かります。コア・サテライト投資戦略を構築するにあたり、サテライト部分で新興国株式への分散投資に活用できる追加型投信として注目したいと思います(同投信は新NISAの「成長投資枠」対象ファンドです)。

<図表3>労働人口成長国のみに分散投資する追加型投信に注目

*上記は過去の市場実績であり将来の投資成果を保証するものではありません。
*上記ファンドは原則として為替ヘッジをしません。管理費用(信託報酬を含む)は年率1.0895%です。
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年初~2023年12月13日)

▼著者おすすめのバックナンバー

2023年12月8日:「NISAのインデックス投資は「オールカントリー」と「S&P500」のどちらがいい?(香川睦)
2023年12月1日:「2024年の米国株式見通し:リスクシナリオは?(香川睦)
2023年11月24日:「驚きの米国株指数!?「FANG+指数」に分散投資する方法(香川睦)

(香川 睦)

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