[最終回!]穂高唯希のFIRE&人生相談 Vol.4「FIRE後の人生、何をして過ごしてる?」編
トウシル / 2023年12月21日 8時0分
[最終回!]穂高唯希のFIRE&人生相談 Vol.4「FIRE後の人生、何をして過ごしてる?」編
トウシルアンケートにて、「FIRE」(経済的自立&早期退職)したいと思いますか?というアンケートを取ったところ、なんと85%が「YES」と答えました。
このアンケートでは、「FIREした人に聞いてみたいことは?」というフリーアンサーも募集。寄せられた質問を「FIREの仕方」「FIREの決断」「FIRE後の資金」「FIRE後の人生」の4回に分けて、FIREブームの火付け役となった先駆者・穂高唯希(ほたかゆいき)さんが回答していきます。今回は最終回の「FIRE後の人生」。穂高さんの現在の暮らし方、今後目指したいことなどを率直にご回答いただきました!
▼Profile
穂高唯希さん(34歳)
14歳で金融に興味を持ち、慶應義塾大学在学中、北京大学に留学。卒業後、大手企業に就職、入社当日セミリタイアを計画。以降、給与の8割を高配当株・連続増配株に投資し、金融資産7,000万円を達成。2019年30歳でFIREを実現した。
ブログ『三菱サラリーマンが株式投資でセミリタイア目指してみた』を運営。FIREムーブメントの第一人者として新聞・TVなど多数メディアで取り上げられる。会社に縛られない生き方や、社会に貢献する公益投資など、新しい人生観を提唱。著書に『本気でFIREをめざす人のための資産形成入門 -30歳でセミリタイアした私の高配当・増配株投資法-』『経済・精神の自由を手に入れる主体的思考法 #シンFIRE論』がある。
Vol.4「FIRE後の人生、何をして過ごしていますか?」
Q:FIRE後、毎日何をして過ごしていますか?
A:時期によって、日によって、過ごし方はばらばらです。
FIRE1年目は1冊目の本『本気でFIREをめざす人のための資産形成入門』の執筆、各種メディア出演などでFIRE前と同じかそれ以上に忙しかったように思います。
2年目は農業法人に勤めて障害者支援と農業の勉強をしました。冬は大型特殊免許や車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の作業免許を取得して除雪車に乗って除雪に挑戦、林業を体験するなどに注力しました。
3年目は自家菜園をはじめました。さらに、23都道府県を旅し、現地の農家民宿や資料館、史跡、博物館などを訪問し、充実した時間を過ごしました。一方で好きなゲームをやり込むなどにも時間を費やしました。
4年目は2冊目の本『#シンFIRE論』を執筆、音声番組にレギュラー出演、ブログ読者と「お金の相談会」を開催するなど、情報発信に全力投球しました。
何年目であっても共通して注力しているのは、ブログを書くこと、投資やライフスタイルの相談に対するブログやメール・通話での回答、メディアからの取材や寄稿、連載コラム、講演、ラジオ出演などの情報発信です。また、旅行、家族のことも大事にしています。平日は料理や洗濯・掃除などの主夫業もこなしており、時おり実家を訪問して親の様子を見に行ったりもします。それ以外では、水泳やテニス、ハイキング、英語や中国語で外国人と交流するなどを楽しんでいます。
Q:FIRE後、暇を持て余したりしていないのでしょうか?
A:私は人一倍好奇心が強く、主体的に物事を決めていく性格のせいか、実は「暇を持て余す」という感覚がぴんときません。人生は短く、やりたいことは無限にあるのです。
ただ、私も一時期ゲームをやりすぎて「今日なんもせんかったな…」とぼうぜんとした時期もありました(笑)。
ただ、FIREした後は、「今日は誰と会おうか、何をしようか」という期待とともに目覚めることが多いです。変化と充実に富む、至福の日々です。
よくある1日としては、自然のなかで体を動かし、自家菜園でとれたて野菜を食し、ブログに生きざまを刻み、ブログに寄せられるご相談に応えて他者へ貢献する活動をし、金融市場ではしっかり稼ぎ、国内消費にしっかり使う…という風に過ごすことが多いです。
Q:自由な時間が増えると支出も増えるのでは? 今の趣味や楽しみは何ですか?
A:確かに、旅行や食事会などが多い月は支出が増えます。また、快適な空間や時間(例:グリーン車など)を得るための支出も増えました。
しかし、趣味の1つであるスポーツ(水泳、テニス、登山)はさほどお金がかかりません。
お金がある、ないにかかわらず、いろんな人に会って、おいしいものを食べて、人や映画、書物などあらゆるものを通じて、多様な価値観や考えに触れることはとても楽しく、大切なことです。
また、私が主宰する「お金の相談会」を通じたブログ読者との交流や相談への回答を考え、返信・通話することは、その方と深くかかわることができるという点で、大きなやりがいを感じています。
Q:FIRE前とFIRE後、生き方や人生観、優先順位は変わりましたか?
A:FIRE前と後とで、変わらないのは、「人間いつ死ぬかわからない」という死生観です。
そのため、お金を切り詰めて「資産額」という数字の拡大を追い求めるようなことはしていません。
旅行や食事、人との出会い、家族、健康、快適な移動など、価値を感じるものにはお金を惜しまない「支出の最適化」はFIRE後も変わりません。
また、お金より時間のほうがはるかに貴重との考えから30歳、7,000万円でのFIREに踏み切ったわけですが、その考えは今も変わりません。
人生には年代ごとに「旬」があると思います。20代はがむしゃらに駆け抜け、30代は味わう。そうやって、そのときどきの旬をまっとうしたいと思っています。
Q:勤労所得がなくなると、下げ相場はかなりメンタルに来るのでは?どうメンタル維持していますか?
A:勤労所得がなくなったかわりに、文筆などによる新たな収入が生まれました。
ただ、コロナショックは予期できず、一時的に資産は3割ほど減りました。
このときは正直しんどく感じたこともありましたが、金融市場が荒れていても目前の現実世界は何事もなかったため、不思議な感覚を覚えたものです。しょせん貨幣は媒介手段に過ぎない、そんなこともあらためて感じました。
下げ相場について思うのは、「株を安く買う」ということは、「多くの人が売りたい状況で買い向かう」ということなんだ、ということです。
したがって私の場合、「下げ相場はチャンスだ」ととらえて買い向かいました。コロナショックでは下落時に買い増しをして、2022年の下落局面では空売りをして10月に買い戻しました。
ただ、2023年は下落に備えていたところ、予想に反して堅調。結果、機会損失となりました。そこで、年央から日本株を大きく買いました。
この経験で学んだことは以下のようなことです。
- 平時から相場がどちらに転んでもよいように資金管理をしておく
- 株を安く買うにはみなが売りたいときに買い向かう必要があることを念頭に下げ相場に臨む
FIREする、しないにかかわらず、こうした姿勢があれば、下げ相場を動揺せず乗り切れるのではないかと思います。
FIREしてもしなくても、人生で感じる不安要素は変わらない
先日、FIRE後の生活について別の取材があり、次のような質問を受けました。
(1)FIRE後の生活は飽きませんか?
(2)今後、金融市場や物価などの変化にどう対応しますか?
(3)家族構成の変化(教育費などの支出増加)に対してどう対応しますか?
トウシルで集まった質問と重複しています。おそらく多くの方が気になる点なのだと推察します。
しかしよくよく考えてみると、これら質問はFIREする、しないという前提は関係なく、普遍的に人々が感じる、人生全般における不安や疑問ではないかと思います
つまり、人生における普遍的な命題は同じだということです。
(1)については、FIREしようがしまいが、みずから主体的に人生を舵取りしていく気概があったほうが、日常が変化に富むので飽きることもなく、人生をより深くたのしみ味わえます。
(2)についても、時代や環境の変化に対応できたほうが望ましいと思います。
(3)についても、教育費は住む地域・教育方針・子の特性などによって千差万別であり、業界・時代・国などによって求められる能力も一変するため、結局そのときどきに臨機応変に対応することになります。
私にとっては、FIREは「ゴール」というよりは、「新たなスタート」かもしれません。新たに素晴らしい日々をみずから描いていく生活を始められたのです。
人の性格や特性自体が千差万別である以上、FIRE後の人生も千差万別です。FIREして得た「経済・時間・精神の自由」を活かすも殺すも自分次第です。
生き方も投資手法も同じ。絶対解は存在しない
生き方も投資手法と同じで、万人に対する絶対解は存在せず、みずから模索して探り当てることが求められます。
FIRE後の人生を充実させるためにキーワードとなるのは、「主体性」と「好奇心」だと私は思います。
そのためには、FIRE後も自分から積極的に人々や社会と関わり続けていくことが必要です。
自分からどんどん興味を持って新たな活動をはじめたり、いろんな場に参加したり、おもしろそうだとおもったことをとりあえずやってみたり。そうするなかで新たな発見や出会いが生まれ、変化に富む躍動感のある人生になっていくのだと思います。
(いや自分は陰キャやし、そんなんマジ無理…)
と思う人もいるかもしれませんが、人間が「社会的な動物」である以上、社会的な欠乏を感じれば、自分から自然に求めていくでしょう。
FIREしてよかった!そう言い切れる理由
先日、友人たちと食事会をしていました。
友人のひとりが駅から徒歩20分のところに住んでいたので、「え、めっちゃ歩けるやん!」と思った通りのことを言うと、みな一様に「ポジティブぅ〜!笑」との反応がありました。
もしかすると、そうした物事のとらえかたが、私が「FIRE後の人生」を存分に楽しめている要因なのかもしれません。お金がいくらあるかどうかよりも。
お金と同じかそれ以上に大事になるのは、「目の前に起きた出来事をどうとらえるか」という点かと思います。
そして、人間が「社会的な動物」である以上、良好な人間関係、そしてだれかに認められ、自分に自信を持てる自己肯定感の高さが幸福度を大きく左右します。この普遍的な原理はFIRE後も変わらないでしょう。
FIRE後、胸を張って誰かの役に立っている(と自分で思える)活動をブログや書籍などを通して続けてきました。そうした活動は、自己肯定感に直結すると思います。
そして前述のとおり、好奇心と興味のおもむくままに主体的に生きてきました。「FIREした決断は結果として正しかった」と一片の悔いなく絶対的な自信を持って言い切れます。
FIREしてよかったかどうかは、その後の生き方で決まる
FIREしたい、と思っている人へ、伝えたいことは次のようになると思います。
まず、体は一つなので、FIREした人生としなかった人生の両方を同時に生きることはできない、ということです。
FIREをするということは、会社員としての人生を手放し、自由と責任ある人生を得るということです。
そして、物事のよしあしは決断した時点で決まるのではなく、その後の生き方によって決まるものと思います。
FIREにかぎらず、人生でなんらかの選択をしたならば、その選択が最善であったと思えるような日々を積み重ねていくこと。
そして自分の感覚を信じて、主体的に考えて考え抜いた決断ならば後悔はないと思います。あとは自分で選んだその後の人生を存分に味わうだけです。
FIRE後の人生、それはまちがいなく私にとってこれ以上ない最高の日々です。
ただ、私の考えるFIREの概念は、世間と少し異なるかもしれません。詳しくは新刊『#シンFIRE論』で感じとっていただけると思います。
人生は青春と似ていて、当時はその一瞬とも言える貴重な日々であったことに気づかず、のちに振り返ってなんと貴重な日々であったかを悟る。そんなものかもしれません。そして人生はいつ終えるともわかりません。
このコラムをお読みの方々が、悔いなき日々を、1日でも長く過ごせることを願っています。
過去3回の連載をもう一度読む!
穂高唯希のFIRE&人生相談 Vol.1「FIREの仕方」編
穂高唯希のFIRE&人生相談 Vol.2「FIREの決断」編
穂高唯希のFIRE&人生相談 Vol.3「FIRE後の資金、どうしてる?」編
穂高唯希さんの書籍はこちら
(トウシル編集チーム)
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