投資で成功する人は、失敗談から学んでいる
トウシル / 2023年12月26日 7時30分
投資で成功する人は、失敗談から学んでいる
投資の成功譚、本当に参考になるか
投資について学び始めるとき、いろんな情報を収集すると思います。投資の理論の基本について学んだり、商品特性について学んだりします。
このとき、教科書的に書籍を読むのではなく、最近は動画配信サイト「YouTube」やブログ、SNS(交流サイト)などの投稿も大きな情報源となっています。
トウシルの調査によれば、投資の情報源としているソースは「YouTube」「インターネットの検索」「SNS」が3大トップでした。書籍や新聞・雑誌、ニュースメディアはそのあとに続きます。
情報源の多様性についてはよいことですが、情報の正確性や信頼性をどう担保していくかは難しいところですから注意したいもの。このとき、もうひとつ注意したい投資情報の見極めポイントに「成功譚」の読み解き方があります。
投資に成功した人たちのテクニックやノウハウを開示しつつ、自分の成功体験を語る読み物には一定の人気があります。確かに成功譚は「面白い」。それは間違いありません。
誰かが投資で成功した話、特に一時期は失敗もして破産寸前までいった人が高いリスクを取った「大ばくち」を打って最後に成功するような話は痛快ですし、引き込まれます。
しかし、誰かの成功譚から投資を学ぶことはあまり賢いことではないように思っています。特に投資未経験者、初心者ほどそうです。
むしろ「失敗談」のほうが役に立つのではないでしょうか。
成功譚より重要なのは失敗談である理由
成功譚よりも、失敗に関する情報のほうが有用ではないかと思う理由はいくつかあります。
まず、失敗談のほうが学びとしては役に立つということです。成功譚はしばしば自慢話になっていることがあります。
大正・昭和期の財テクの神様と言われた本多静六氏は、収入の25%を天引きして投資し続ける、今で言えば積立投資を提案していますが、自伝はやはり自慢話が目につきます(生活費が足りなくても25%の積立投資は辞めなかった。妻にはおかずがなければごま塩でも振って食べさせろと、言ったとか)。
それでも本多氏の積立投資は今に参考になるところが多いわけですが、成功自慢をしつつ、再現性はあまりない話を披露されている投資読み物もあり、これはあまり初心者には役立ちません。
それならむしろ、失敗談のほうが再現性が高いといえます。成功は「たまたま」の要素が少なからずあっても、失敗にはそれなりの説明をつけられることが多いからです。
また、成功譚の多くはリスクが過剰です。教科書的コンテンツは失敗を減らすこと、失敗したときのインパクトを小さいものとすること、に目配りされていることがあります。
例えば「あなたの資産の何割を投資に回すべきか」というような教科書的記事は、リターンの極大化を目指す読者にとってはほとんど無価値のようですが、リスクをコントロールする意味では重要です。ただし、成功譚を読むよりは「つまらない」ものとなってしまいます。
面白さや投機的スリリングで成功譚を読むことには、初心者にとって危うさがあるわけです。その点、失敗談はこうした投資原則を外してしまったことによる大ダメージを他人の経験から学ぶことにもなります。
他人の失敗の経験談を意識的に読んでみよう
たまにマネー雑誌が「失敗特集」を組むことがあります。これは読み物としても面白く、また教科書的記事よりリアリティのある学びとして役立ちます。もし失敗特集を組んでいる雑誌があったら、チェックしてみてください。
他山の石、といいますが、他人の失敗は自分を磨くためのヒントになりえます。
金額的に自分がトライできない投資の失敗例は、まだ経験ができない投資の参考情報として大きく役立ちます。銘柄選択や売買タイミングでのミスなども誰かの失敗は、経験を積んでいない人ほど参考になるものです。
ただし、雑誌特集の性格上、近年の市場にフォーカスすることになりますので、情報タイミングが限定されることには注意が必要です。例えば2022年の失敗例の多くが「円安基調を見誤った」のような話になりがちで、紹介例の多くがFXで大きなポジションを取ってしまった失敗談になってしまう、という感じです。
また、上昇基調にある時期は失敗特集が成り立たないので(ほとんどの人がもうかっているので)、学びを得られないこともあります。
そして、自分の失敗から学ぶことで成長したい(でも失敗は小さくしたい)
もうひとつ、学びの糧としたいのは「自分の失敗」です。これは誰かに話すことはほとんどないですから「失敗[談]」ではありませんが、自分がやってしまった失敗を、自分が生かさなければ、投資のステップアップにはなりませんから、目を背けたいときもできるだけ向き合って、未来に同じ失敗をしないようにしたいところです。
私の例であれば、2000年代初頭、初めて買った投資信託2本(10万円くらい)が、ITバブル崩壊のあおりで30%下落したことがあります。すぐには売らなかったのですが、もちろん追加の投資もせずじまいでした。その後、なかなか株価の回復がなく、10%マイナスくらいで諦めて売ってしまいました。
当然ながら、その後売却した投資信託の基準価額は上昇、もし持ち続けていればはるかに上回るところに資産価値は上昇していたはずです。
私はここから、以下のような教訓を得たと思っています。
- 過去の推移や収益分配金の実績が将来も保証されると甘く判断していた
- 自分の投資判断に過剰な自信を持っていた(オーバーコンフィデンス)
- 下落後も、長期的には市場が回復しうるというスパンを想定していなかったため手放してしまった
- 追加の投資資金を積立継続しておけばよかった
こうした学びは、感覚的なものも多いので、理屈だけでは学べない部分です。自分自身の失敗経験から得たことを、自分の学びとしたいところです。
私自身、その失敗経験をiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の長期積立分散投資の徹底、という形で生かしました。リーマンショック時も一度も売らず、むしろ少額の積立投資の継続で乗り越えたのです。
もし、自分の失敗を経験値としたいのであれば、とにかく早く投資実経験を踏むことと、投資金額は小さめにしておくことです。それこそ100~1,000円単位で投資信託をいくつか売り買いしてみてもいいのです。
今回は「あえて成功より失敗から学ぶ」という話をしてみました。あなたも自分の失敗と他人の失敗から学び、投資家として一段成長をしてみてはいかがでしょうか。
(山崎 俊輔)
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