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令和5年分からの注意点!税制改正で使えなくなる「配当金の有利な確定申告」とは

トウシル / 2023年12月29日 11時0分

令和5年分からの注意点!税制改正で使えなくなる「配当金の有利な確定申告」とは

令和5年分からの注意点!税制改正で使えなくなる「配当金の有利な確定申告」とは

令和6年度税制改正では証券税制関連の大きな改正は無し

 先日、令和6年度税制改正大綱が発表されました。これを見る限り、今回の税制改正では証券税制関連で大きな改正は見当たりませんでした。

 令和5年度の税制改正にて決定された、現行制度より大幅にパワーアップされた新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)制度がいよいよ令和6年から始まりますから、今回の税制改正で特に目玉となるものがないのは想定内です。

 しかし、忘れてはいけない大きな改正点、しかも結果的に増税・負担増につながるケースが多い改正が令和5年分(令和6年3月15日申告期日)の確定申告から実施されることを知らない投資家の方がとても多いです。

 今回は、多くの投資家の方に影響を及ぼすことが必至な改正点について解説したいと思います。

令和4年分の確定申告と令和5年分の確定申告の大きな違いとは?

 令和4年分の確定申告までは、上場株式などの配当所得、利子所得、譲渡所得(源泉徴収ありの特定口座で生じたものに限る)につき、所得税と住民税とで異なる方式を選択することができました。

 例えば配当所得であれば、次の3つの方式から課税方式を納税者が自由に選択することができます。

  1. 確定申告しない(20.315%の源泉徴収のみで課税関係終了)
  2. 総合課税で確定申告する
  3. 申告分離課税で確定申告する

 これにつき、「所得税では(2)総合課税で確定申告するが、住民税は(1)確定申告しないを選択する」といったように、異なる方式を選択できました。

 しかし、令和5年分(令和6年3月15日申告期日)の確定申告からは、所得税と住民税とで異なる方式を選択することができなくなったのです。

 ですから、所得税で総合課税にて確定申告することを選択したのであれば、住民税も同様に総合課税にて確定申告することを選択する必要があります。

最も大きな影響は「国民健康保険料」

 この時、ポイントとなるのは、所得税、住民税の税額だけではなく、国民健康保険料の負担も併せた、トータルの負担額がどうなるかなのです。

 例えば配当金が200万円、それ以外の所得も、基礎控除以外の所得控除もないという前提で考えてみましょう。確定申告をしなければ、所得税30万6,300円、住民税10万円の合計40万6,300円が源泉徴収されているという状況です。

 令和4年分までであれば、まず所得税については確定申告すれば源泉徴収税額30万6,300円が全額戻ってきます。住民税は申告不要を選択することで源泉徴収された5%のみで済ませることができるので、住民税の源泉徴収分10万円の税負担のみで済ませることができました。

 また、住民税は申告不要を選択することで、国民健康保険料算定上の所得に配当金を入れないことができますから、国民健康保険料の負担アップも抑えられます。

 これが令和5年分以降は、所得税は確定申告すれば源泉徴収税額30万6,300円の全額が戻ってくるのは同じですが、住民税も確定申告をしなければなりません。これにより住民税は10万3,500円がかかります。さらには、国民健康保険料がおよそ20万円ほどかかります(世帯人数、市区町村、年齢などにより変わりますのであくまで概算です)。

 確定申告しなければ40万6,300円の税負担ですから、確定申告した方が有利であることには変わりないのですが、令和4年までと比べると、負担額が20万円以上増えてしまうことになります。

 なお、国民健康保険ではなく社会保険加入の場合は、国民健康保険料の負担増については無視して大丈夫です。

扶養控除や配偶者控除の適用除外による「世帯全体での負担増」も考慮が必要

 上記のケースでは、所得税・住民税とも確定申告した方が、国民健康保険料の負担増を踏まえてもまだ有利でしたが、所得金額が大きくなると、配当金につき所得税・住民税とも確定申告しない方が有利となるケースも出てきます。

 また、扶養控除や配偶者控除の適用を受けている人が配当金を確定申告することで、扶養控除や配偶者控除の適用除外となってしまい、世帯全体でみて負担増となってしまうこともあります。

 これまでは、配当所得につき「高所得者は所得税・住民税とも申告不要」、「中・低所得者は、所得税は総合課税で確定申告、住民税は申告不要」、というのが定説でした。しかし令和5年分以降は、特に中所得層において、詳細なシミュレーションをしないと、どの方法が有利かが判断できなくなったと言えましょう。

 なお、上記の説明は株式の譲渡損があり、それを配当金と損益通算するために配当所得を申告分離課税で申告するかどうか、という観点は一切無視しています。

 配当金の金額、株式の譲渡損益や過去から繰り越してきた譲渡損の状況、国民健康保険料の負担増、医療費控除やふるさと納税の金額、住宅ローン控除、扶養控除や配偶者控除…。さまざまな要素を網羅しなければいけませんので、到底当コラムだけでは説明しきれません。

 複雑怪奇な証券税制ですが、しっかりとシミュレーションをして、できる限り税負担が小さくなるような方法を選択するようにしてくださいね。

 令和5年は本コラムにて最終となります。本年もコラムをご覧いただきありがとうございました。来年も個人投資家の皆さまに役立つ税金の知識・情報をお届けしてまいります。

 どうぞよいお年をお迎えください。

(足立 武志)

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