新NISA直前だからこそ声を大にして言いたい!「塩漬けリスク」にご用心
トウシル / 2023年12月28日 11時0分
新NISA直前だからこそ声を大にして言いたい!「塩漬けリスク」にご用心
新NISAで必ず利益が出ると思っている個人投資家
いよいよ令和5年もあとわずか。令和6年には新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)がスタートし、筆者が先日記事を執筆した雑誌も今年初となる重版となったようで、大変な盛り上がりとなっています。
その一方で、新NISAをきっかけに新たに投資をスタートしようとする方も多く、当然ながら投資に関する知識に乏しい人がこれから大挙してマーケットに押し寄せてくることになります。
確かに個人投資家のすそ野が広がるのは大いに喜ばしいことなのですが、株式投資を25年続けていて、株価の浮き沈みを何度も経験している筆者として、今世間にまん延している「新NISAのメリットしか語らない」風潮に大変強い危機感を感じています。
筆者も仕事柄、他の方が書いている新NISA関連の書籍や、雑誌記事、ネットの記事などに数多く目を通していますが、新NISAで利益が出ることしか考えていない書きぶりがあまりにも多いことに驚いています。
専門家も「お気楽思考」?
例えば、新NISAスタートに当たり、現在通常の口座(特定口座など)で保有している株式などを、新NISAの口座に移管(正確にはいったん売却した後新NISA口座で買い直し)した方が良いかどうか、という議論があります。
多少の例外はありますが、移管後に当該株式などが値下がりしてしまうのなら、新NISA口座に移管しない方が良いが、移管後に値上がりするのであれば、新NISA口座に移管した方が良いという結論になります。
この点につき、ある専門家が、「株が下がると思って投資している人はいないので、新NISA口座に移管する方が良いという結論になる」と発言しているのをみて、どれだけお気楽な思考なのか?と驚いてしまったことがあります。
筆者は株価が5分の1、10分の1、時には100分の1にまで下がってしまう個別銘柄をこれまで数多く見てきていますし、それにより大きな損失に苦しむ個人投資家もたくさんいます。この紛れもない事実にふたをしてしまってよいのでしょうか?
特に新NISAをきっかけに株式投資に参戦しようとしている初心者の個人投資家に対しては、株式投資のプラス面だけではなくマイナス面(損をすることがある)を知っておいてもらいたいというのが筆者の思いです。
マーケットをなめてかかると、後々大きな損失を被ってしまう恐れがあるということは、先人たちがいやというほど経験していることだからです。
筆者が経験したNISAによる「塩漬け」
筆者は25年間株式投資を続けており、現行のNISA制度がスタートした初年度から、ほぼ非課税枠いっぱいを個別銘柄への投資に充てています。
その結果、非課税期間(5年間)経過後、株価が下がってしまったケースが何度もあります。要は「塩漬け株」です。
筆者は、NISA口座で保有している銘柄が下落した場合、空売りをしてヘッジしていますが、それをしなければ、NISA口座で株を保有し続けた結果、見事に塩漬け株が完成してしまうところでした。
実際、筆者が個人投資家の方からのお悩み相談で多いのは、NISA口座で買って5年経ったら、株価が大きく下がって塩漬けになってしまった…というものなのです。
非課税金額が大きくなればそれだけ塩漬けリスクも高まる
筆者は、新NISAがスタートすることで、現行NISAの時よりも、NISA口座で投資した個別銘柄の塩漬けリスクは圧倒的に高まると感じています。
その理由は「非課税金額が大きくなること」「非課税期間が無期限になること」です。
非課税金額が大きくなれば、塩漬け株になってしまう金額も相対的に増えてしまうでしょうし、非課税期間が無期限だと、株価が下がってもいつまでも持ち続けてしまい、結果として塩漬け株を作りやすくなってしまうからです。
ですから、現行NISAの時もそうでしたが、新NISAではそれ以上に、「NISA口座で買った株が値下がりしたらどうするのか?」を事前に考えておかなければなりません。買った株が全て上昇して利益になるなど、ゆめゆめ思ってはいけないのです。
利益ではなく損失となったときどうするかを考えるのが非常に重要
では具体的にどのようなことをすべきでしょうか。考えられるのは以下の3つだと思います。
1.値下がりしたらあきらめて塩漬け株のまま放置する
これはこれで、ご自身が納得できるのなら良いと思いますが、個人的にはお勧めしません。完全に放置するのではなく、見込み違いの株については売却して非課税枠を空け、他の有望な株に入れ替えるのも一考です。
2.値下がりしたらヘッジで空売りをする
これは現行NISAのときから筆者が行っている方法です。値下がりしたら同じ銘柄を同じ数量だけ空売りすれば、値下がりにより利益が得られ、NISA口座で保有する現物株の損失拡大に対するヘッジをすることができます。ただ、空売りの利益は20.315%課税されますので、ヘッジ効果は実質80%のみとなる点には注意が必要です。
3.配当利回りが高い銘柄など、長期間の保有で実質的に損失とならない銘柄へ投資
例えばNISA口座で配当利回り4%の銘柄に25年投資し続ければ、配当金で投資元本を全額回収できますから、株価がゼロになっても配当金を加味すればマイナスにはなりません。ただ、将来の配当金減額のリスクもありますから、銘柄選択は十分な吟味が必要です。
新NISAに期待している個人投資家の方は多いと思いますが、利益を得ることも損失を被ることもあるのが投資の世界です。買った株が大きく値下がりしてから慌てるのではなく、あらかじめ、損失を被った場合どうするかを考えるとともに、損失をできるだけ被らないために工夫できることがあればしていくようにしましょう。
令和5年は本コラムにて最終となります。本年もコラムをご覧いただきありがとうございました。来年も個人投資家の皆さまに役立つ株式投資・資産運用の知識・情報をお届けしてまいります。
どうぞよいお年をお迎えください。
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