[今週の日本株]株高「継続か一服か」の分岐点~企業決算で相場の答え合わせ~
トウシル / 2024年1月29日 12時8分
[今週の日本株]株高「継続か一服か」の分岐点~企業決算で相場の答え合わせ~
先週末26日(金)の日経平均株価は3万5,751円で取引を終えました。前週末終値(3万5,963円)からは212円安、週足ベースでは3週ぶりの下落となりました。TOPIX(東証株価指数)も7週ぶりに下落しています。
また、今週は「月またぎ」で2月相場を迎えますが、米国では30日(火)~31日(水)にかけて開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)をはじめ、週末の2月2日(金)には米雇用統計(1月分)が公表される中、日米で注目企業の決算発表が本格化します。
そのため、今週は最近までの株高基調が継続していくのか、それとも一服するのかが焦点になりますが、今回のレポートでは、意識しておきたいテクニカル分析上のポイントなどについて考えて行きたいと思います。
まずは、いつものように、足元の状況から確認していきます。
先週の日経平均は週末にかけて失速。今後の値動きの目安は?
図1 日経平均(日足)とMACDの動き(2024年1月26日時点)
あらためて、先週の日経平均の値動きを振り返ると、上値をトライする動きから、週末にかけて失速し、節目の3万6,000円台を下回る推移となりました。週間の値幅(高値と安値の差)も1,200円を超え、株価の振れが比較的大きかったと言えます。
風向きが変わったのが23日(火)の取引です。この日は買い先行で始まったのですが、注目イベントだった、日本銀行の金融政策決定会合の結果を受けた午後の取引開始直後には、3万6,984円の高値をつけて、3万7,000円台を目前に迫るところまで上昇したものの、その後は上げ幅を縮小していき、結局この日の終値(3万6,517円)は、前日終値(3万6,546円)とほぼ同水準となりました。
その結果として、ローソク足が上ヒゲの長い陰線となったほか、前日のローソク足との組み合わせについても「出会い線」と呼ばれる格好となりました。両者とも「相場の流れの変化を示す形」とされ、上値を追うムードに水を差されたような印象となっています。
とはいえ、図1では株価がまだ、3万6,000円台から大きく下放れしていないほか、移動平均線(25日・75日・200日)との距離もまだ残されていること、下段のMACDも下向きになったとはいえ、まだシグナルとのクロス(交差)になっていないことなど、トレンドの転換を示すサインは出現しておらず、相場が崩れたとは言えない状況です。
したがって、今週の注目イベント(決算やFOMCなど)の動向次第では、相場が持ち直す展開も十分にあり得ます。その場合の上値は、昨年10月30日の安値(3万0,538円)から11月20日の高値(3万3,853円)までの上昇幅を、「*E計算値」で求めた3万7,168円あたりが目安となりそうです。
*E計算値…上昇トレンドの場合、上昇幅と同じように、その前の高値から上昇するという計算方法
反対に、図1で見てきたローソク足が示すように、足元の上昇基調が一服し、売りが優勢となった場合には、25日移動平均線までの距離を埋めに行く展開が考えられます。
図2 日経平均(日足)と25日移動平均線乖離率の動き(2024年1月26日時点)
仮に、相場が下方向への意識を強めた場合、注意したいのは、株価が一気に25日移動平均線まで下落するとは限らないことです。
上の図2は、長期間の日経平均の日足チャートと25日移動平均線の乖離率の推移を示していますが、乖離率はおおむねプラスマイナス5%の範囲内で推移することが多いものの、この範囲を上回っている場面がいくつか散見されます。
いずれも、その後の乖離率が0%まで修正されていますが、上段の株価の推移をチェックすると、一気に株価が下落して修正されるパターンと、株価がもみ合いを続けながら25日移動平均線のキャッチアップを待ちながら修正されるパターンに分けられます。
先週末26日(金)時点の25日移動平均線の値は3万4,626円ですが、25日前の12月19日(火)の株価水準は3万3,000円あたりで上げ下げしていた時期でもあり、現在の株価水準と比べれば、25日移動平均線の値はしばらく切り上げて行くことになりますし、途中に3万5,000円の節目も存在しています。
したがって、今回の乖離率の修正がどのように行われるかは、今週の注目イベントでサプライズや市場のムードの変化が出てくるかなどによって左右されることになりそうです。
日米の決算本格化で「答え合わせ」のポイントは意外と多い
冒頭でも触れたように、今週は日米で企業決算の発表が本格化します。国内では、レーザーテック(6920)やアドバンテスト(6857)といった半導体関連銘柄をはじめ、村田製作所(6981)などの電子部品、メガバンク(みずほFG(8411)、三井住友FG(8316))や、商社(三井物産(8031)、双日(2768)、丸紅(8002))など、640社を超える決算が予定されています。
米国でも、マイクロソフト(MSFT)やアルファベット(GOOGL)、アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)、ダナハー(DHR)、ファイザー(PFE)、ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)、ゼネラル・モーターズ(GM)、マスターカード(MA)、クアルコム(QCOM)、ボーイング(BA)、アップル(AAPL)、アマゾン(AMZN)、メタ・プラットフォームズ(META)、エクソンモービル(XOM)、シェブロン(CVX)などの注目企業が続々と決算を発表する予定です。
これらの決算を通じて、「生成AIを背景とする業績期待は継続するか?」、「半導体関連株の選別が進むか?」、「中国経済の影響の度合いはどうか?」、「地政学的リスクの影響はどうか?」などを見極めて行くことになります。
先週の動向を見ると、米インテル(INTC)の決算で、同じ半導体関連でも生成AI以外の分野では業績面で苦戦していることや、ニデック(6594)の決算では、中国の影響が色濃く反映されるなど、今後の決算の動向によっては、銘柄の選別がさらに進んでいくことも想定されます。
また、日米の株式市場は、昨年11月から上昇基調を続けていますが、その中身を見ると、前回のレポートでも触れた通り、当初は、米国の金融政策の利下げ観測の高まりを背景に米金利が低下し、PER(株価収益率)面での割高感が修正される動きだったのが、現在では、米金利が再び上昇する中でも一部のハイテク企業を中心に、業績(EPS:1株当たり利益)の拡大期待によって買われて株価が上昇するなど、変化が生じています。
相場の楽観の前提となっている、米国経済の「ソフトランディング」見通しはまだ維持されているものの、足元の相場の牽引役だった企業の多くが今週決算を発表するため、最近までの相場の動きについて、いったん「答え合わせ」をする格好となりそうです。そして、その答え合わせのポイントは先程も述べたように、意外と多くあります。
注目の米銘柄の状況をチェック
その中でも、とりわけ注目されるのが、「マグニフィセント・セブン(M7)」と呼ばれる銘柄グループのうち、今週に決算を発表する5銘柄です。
そこで、この5銘柄についての状況を簡単にチェックしていきます。
図3 米マイクロソフト(MSFT)日足とMACDの動き(2024年1月26日時点)
まず、最初はマイクロソフトです。上の図3では、トレンドの強さを確認するため、日足チャートに「多重移動平均線」を重ねています。
マイクロソフトは、生成AI需要への期待感で株価が上昇し、時価総額を3兆ドルまで拡大させています。テクニカル分析的にも、これまでの最高値圏だった350ドル台を突破し、上値を追っている状況です。多重移動平均線もすべての線が上方向を向いており、上昇トレンドを継続中です。
決算を通じて、さらに上値を伸ばすのか、ひとまず材料出尽くしとなるのかが注目されます。
図4 米アルファベット(GOOG)週足とMACDの動き(2024年1月26日時点)
図5 米メタ・プラットフォームズ(META)週足とMACDの動き(2024年1月26日時点)
続いては、アルファベット(図4)とメタ・プラットフォームズ(図5)です。こちらはともに週足チャートとなっています。
両銘柄ともに上昇基調を続ける中、先週に最高値を更新してきました。一般的なテクニカル分析のセオリーでは、「最高値の更新(新値)は買い」とされていますが、こちらも決算を通じて上値を追っていけるのか、それとも達成感で売られてしまうのかが焦点になります。
図6 米アマゾン(AMZN)週足とMACDの動き(2024年1月26日時点)
先ほどの3銘柄に対して、株価面で出遅れているのがアマゾンです(図6)。
先週末26日(金)の終値は159ドルと、節目の160ドル台に迫っていますが、チャートを遡ると、160ドルは2020年の半ばから2022年にかけて株価がもみ合った水準でもあり、長期的には戻り待ち売りも出やすくなることも想定されます。
決算については、北米やグローバル事業の収益改善や、クラウド事業の成長加速が寄与し、好業績が期待されていますが、アマゾンは過去の決算で、市場予想を下回る内容を示すことが少なくなく、他の銘柄に比べて株価の上昇が遅れている面があるかもしれません。
逆を言えば、期待通りの決算を示すことができれば、これまでの最高値(2021年7月の188ドル)超えも視野に入ってくるかもしれません。
図7 米アップル(AAPL)日足とMACDの動き(2024年1月26日時点)
最後はアップルです(図7)。
こちらは日足チャートを表示していますが、アップル株は昨年12月14日に最高値を更新した後、急落する場面がありました。
投資判断を引き下げる金融機関が相次いだほか、中国で販売する同社製品の値下げが発表され、業績への警戒感が高まったことなどがその理由ですが、下値については200日移動平均線がサポートとなり、直近では持ち直す動きを見せています。
決算での注目ポイントは、VRヘッドセットの発売と生成AI導入の進捗状況、中国での売上と見通し、新製品の情報などが挙げられますが、直近でネガティブな材料が多かっただけに、決算内容が冴えないものだった場合の株価急落には注意が必要かもしれません。
このように、今週は、昨年来から続く上昇相場がさらに大きく伸びて行くのか、それともひとまず調整局面を迎えるのかを見極めるターニング・ポイントとなる可能性があります。仮に、相場の方向性が下向きとなった場合には、日本株再評価の視点によって買いが下値でしっかり入って来るかどうかが焦点となり、企業決算と同時に「日本株の底力」も試される週になりそうです。
(土信田 雅之)
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