配当利回りが魅力の鉄鋼株と通信株、長期投資に向くのはどっち?
トウシル / 2024年1月27日 8時0分
配当利回りが魅力の鉄鋼株と通信株、長期投資に向くのはどっち?
「クイズでわかる!資産形成」(毎週土曜日に掲載)の第13回をお届けします。資産形成をきちんと学びたい方に、ぜひお読みいただきたい内容です。
今日のクイズ:鉄鋼A社と情報通信B社、NISAで長期投資するならどっち?
<クイズ>予想配当利回り4.3%の鉄鋼A社と、2.8%の情報通信B社、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座で長期投資するなら、どっち?
過去16年の連結純損益および今期の純利益(会社予想)を見てご判断ください。
・B社連結純損益>
A社は景気敏感株、B社はディフェンシブ株
A社は過去16年で4回、純損益が赤字に転落しています。特に、コロナショックに見舞われた2020年3月期の赤字額は4,315億円と極めて大きくなりました。鉄鋼業は景気敏感株で、世界景気変動の影響が、業績に大きく表れます。
一方、B社は不況期でも業績があまり悪化していません。食品、医薬品、情報通信などは景気変動の影響を受けにくい企業が多く、そういう企業はディフェンシブ(景気中立)株といわれます。
NISA口座で長期投資する高配当利回り株は、なるべくディフェンシブ株から選んだ方がよいといえます。ただし、景気敏感株を保有してはいけないということではありません。景気敏感株の保有が高くなり過ぎないように注意すればよいだけです。
以下の業種分類表で、上にいくほど景気敏感株が多く、下にいくほどディフェンシブ株が多い業種となります。
<業種分類と、景気敏感度>
この表をご覧いただくと分かる通り、鉄鋼業は、景気敏感度が極めて高い業種です。情報通信業は、企業ごとの差は大きいものの全体として見ると景気敏感度が低い業種です。
正解:長期投資するなら、ディフェンシブ株のB社
正解は、B社です。B社は予想配当利回りがA社より低いものの、安定的な業績推移に信頼が持てます。景気変動の影響を受けにくく、安定的に高水準の利益を上げてきた高配当利回り株として、評価できます。
一方、A社は業績変動が大き過ぎます。世界景気が良いときに高水準の利益を上げて、配当利回りも高くなりますが、世界不況になると赤字に転落して、減配になることもあります。今、業績好調で予想配当利回りが高くても、長期的にそれが維持されるか分かりません。
以上が教科書的な解答と解説です。ここから先は、私の個人的な思いを書かせていただきます。
A社は日本製鉄(5401)、B社はKDDI(9433)です。KDDIは、配当利回りが魅力で、かつ株主優待も人気で、新NISA「成長投資枠」で長期投資するのに適格と判断しています。
それでは、日本製鉄は投資を避けるべきでしょうか? 私はそうは思いません。過去30年以上にわたって実施してきた構造改革の成果で、世界景気が悪化する局面でも、過去のような巨額の赤字を計上することはないと私は予想しています。
注目しているのは、以下3点です。
- 技術力で抜きんでている:ハイエンド・スチール(高性能の鉄鋼製品)で世界シェアが高い
- 過剰能力縮小:業界再編が進み、過剰設備を解消。過当競争から抜け出しつつある
- 値上げを通せるようになってきた:長年にわたり安値販売を強いられてきたひも付き(大口顧客との相対取引)ハイエンド・スチールで価格改定が通るようになってきた
ただし、将来に向けて、鉄鋼業に数々の不安があることも事実です。まず、中国の鉄鋼メーカーによる過剰生産の不安があります。近年ようやく中国メーカーによる過剰な鉄鋼増産は沈静化しつつありますが、いつまた繰り返されるともしれません。
それ以上に大きな問題は、鉄鋼業(高炉)が電力産業と並び、CO2(二酸化炭素)排出量が極めて大きい産業であることです。将来的には、石炭を利用する現在の高炉方式が許容されなくなり、石炭の代わりに水素を使う水素製鉄に変更を余儀なくされる可能性があります。
そうなると、水素製鉄の開発と投資に莫大(ばくだい)なコストがかかり、鉄鋼業(高炉)の収益が長期的に低迷するリスクもあります。
また、日本製鉄が、米鉄鋼大手USスチールを約2兆円で買収すると発表したことも、大きな期待とリスクを生じています。うまくいけば米国で成長することが可能になりますが、失敗すると業績を大きく引っ張る要因となりかねません。
詳しくは、私が昨年12月21日に書いた、以下のレポートを参照してください。
3分でわかる!今日の投資戦略:2023年12月21日「日本製鉄、USスチールを2兆円買収!3つの期待と4つのリスク」
結論として、日本製鉄への投資はリスクが高いと考えています。投資した後、業績が好調に推移すれば、良い投資成果が得られるかもしれません。ところが、長期低迷するリスクが高まったときには、売却する必要が生じるかもしれません。今後の業績を見ながら、判断していくことが必要です。
新NISA「成長投資枠」で投資して、長期的に持ち続けるならば、KDDIの方が適しているとは考えています。
(窪田 真之)
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