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米IT株高値警戒感でバブル超えの日本株も足踏み?円安進行は鈍いものの1ドル=152円台も

トウシル / 2024年2月28日 16時0分

米IT株高値警戒感でバブル超えの日本株も足踏み?円安進行は鈍いものの1ドル=152円台も

米IT株高値警戒感でバブル超えの日本株も足踏み?円安進行は鈍いものの1ドル=152円台も

米ハイテク株高値への警戒じわりと広がる、バブル越えの日本株も足踏み?

 日経平均株価(225種)がバブル経済期の高値を超え、史上最高値を更新しました。年初からこれだけの短期間でバブル超えとなったのは驚きであると同時に感慨深いものがあります。上げ足のスピードが速いことから高値警戒感もありますが、今のところは底堅い動きをしています。

 メディアは、企業業績が伴った株上昇のためバブル時と環境が違うと報道していますが、企業業績だけでなく、日本銀行によるジャブジャブの金融緩和が株価を押し上げたのも間違いないと思われます。その金融緩和については、日銀の植田和男総裁や内田真一副総裁の「マイナス金利解除後も緩和的な金融環境が続く」との説明が投資家の安心材料になっているようです。

 日本株の上昇が米国株の上昇に引っ張られたのも要因のひとつといわれています。日本がバブルでなくても、米国株はエヌビディアの株上昇が象徴するようにAI(人工知能)バブルの様相を呈している可能性があり、米国株も連日史上最高値を更新しています。従って米国株の一段高がなければ、日本株も足踏みするかもしれません。

 米国株は連日史上最高値を更新していますが、エヌビディアがけん引した米ハイテク株の上昇も一服感が出てきており、日経平均の4万円超えも時間がかかるかもしれません。また、米国株に対しても警戒する見方が出始めているのは気になるところです。

 米著名株式投資家のウォーレン・バフェット氏は、24日公開の「株主への手紙」で、大型テック株主導で急騰する株式相場を念頭に、「市場は私が若いころとは比べ物にならないほどカジノ的な振る舞いをみせている」と警鐘を鳴らしました。そして同氏は、「目を見張るような業績」を達成できるような有意義な案件がないと指摘し、同氏が率いる投資・保険会社バークシャー・ハサウェイの手元現金水準が過去最高を更新しました。

 また、ゴールドマン・サックスが722のヘッジファンドを対象にした分析によると、ヘッジファンドは2023年10-12月期に「マグニフィセント・セブン(M7)」と呼ばれる大型ハイテク7銘柄(アップル、マイクロソフト、エヌビディア、アルファベット、アマゾン、メタ、テスラ)の大部分を売り越したと指摘しています。

 そしてマイクロソフト、アップル、エヌビディアについては、ヘッジファンドの人気低下が目立つIT銘柄だとしています。また、同社のプライムブローカー部門がまとめたデータによると、エヌビディアの決算発表までの数週間にハイテク株に投資してきたヘッジファンドが、ここにきて過去7カ月で最も早いペースで売却に動いていると述べています。

 これら一連の報道は、米国株が史上最高値を更新している中で流れていることから、高値更新でも上昇銘柄の中身が変わっている可能性があることに留意する必要がありそうです。しかし、今後利益確定の売却や高値への警戒心の高まりなどこれらの動きが多くの投資家にも波及してくるのであれば、米株の推進力は減退してくることが予想されます。

米早期利下げ期待後退と日銀マイナス金利解除後も緩和継続で、1ドル=152円の円安も

 ドル相場は、日経平均のバブル超えと同時に1ドル=152円を超えるのではないかとみていましたが、為替介入への警戒感や日銀への政策修正を期待しているのか意外と頭が重たい動きとなっています。

 しかし、日銀の植田総裁が、22日の衆議院予算委員会で足元の物価動向について、「デフレではなくインフレの状態にある」との見解を示しましたが、金利も株もドル相場もほとんど反応しませんでした。

 植田総裁が突然、金融引き締めにつながるインフレを語ったことも驚きましたが、同時にインフレと明言したにもかかわらず、市場の反応が鈍かったことにも驚きでした。マイナス金利解除の布石として語っただけで、それでも金融緩和は継続されると市場は見透かしたことからあまり反応しなかったのかもしれません。

 投機的なポジションの参考となるIMM(シカゴの通貨先物市場)の円売りポジションは、直近で12万778枚(2月20日時点)となっています。

 2022年10月の高値151円90銭台のころの円売りポジションとほぼ同じ水準であるため、米早期利下げ観測後退や日銀政策修正期待後退、日経平均のバブル超えなどは相当織り込まれてきたことが推測されます。そのため、円売り余地が少なく、円安の動きが鈍い相場となっているのかもしれません。

 ただ、現在の相場の変動が小さく、金利差も「米国利下げ・日本利上げ」の金利差縮小の見方から「米国利下げ時期後退・日本マイナス金利解除後も金融緩和継続」との見方に変わってきたことから、ここからさらに円キャリー取引が増える可能性があります。相場の変動が小さければ、為替相場の変動に伴う損失機会よりも金利差による利益機会の方が大きくなるからです。

 対ユーロや対ポンドなどのクロス円は対ドルよりも堅調な動きをしています。対ポンドでは1ポンド=191円台に上昇し、2015年8月以来のポンド高円安になりました。対ニュージーランドドルでも9年ぶりの円安水準になっています。

 米国以外の国も利下げ開始時期が後ずれすれば、それらの国の通貨に対する円安は続くことが予想されます。クロス円の円安スピードに比べると対ドルでの円安スピードは遅くなっていますが、1ドル=150円以上をしっかりと維持していることから、今の環境が続くのであれば、クロス円の円安にも支えられ、早晩、1ドル=152円を抜くかもしれません。

 米国株上昇、米長期金利上昇、ドル高、米早期利下げ観測の後退の構図は、米国景気がソフトランディング(米経済が後退せず軟着陸)のシナリオで動いていることが背景にあります。

 ソフトランディングシナリオについて米国銀行JPモルガン・チェースのダイモンCEO(最高経営責任者)は、26日、「市場はソフトランディングの確率を7~8割としているが、私はその半分とみている」と述べています。経済や金融システム全体を揺るがすような事態は想定していないようですが、先行きに慎重な姿勢を示しています。

 しかし、現在の米国経済は2023年7-9月期米国GDP(国内総生産)成長率4.9%、10-12月期3.3%と日米欧の中で3%以上の安定した成長を続けています。

 そして速報性があるため市場が注目しているアトランタ連邦準備銀行のGDPNowは今年の1-3月期成長率を3.2%と予測しており、引き続き3%成長となっています。この予測通りならソフトランディングシナリオが続く可能性があります。

米大統領選「もしトラ」から「ほぼトラ」、ドル安政策の思惑台頭も

 しかし、米大統領選の候補者が確定するにつれて、米国政治リスクが高まることが予想されます。市場は「もしトラ(もし、トランプ氏が勝ったら)」から「ほぼトラ」に移りつつあり、夏場に向けて経済も投資も慎重になることが予想されるため今年後半の動きには注意が必要です。

ドル相場の下記のような構図も夏場から変わる可能性もあるため注意が必要です。

 米経済のソフトランディング→米早期利下げ観測後退→米長期金利上昇→ドル高
 米経済のソフトランディング→米株上昇→日本株上昇→円安

 また、トランプ氏は自国産業保護のためドル安政策を取り、中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)に利下げ圧力をかけ、日本に対しても関税を引き上げてくるのではないかとの思惑も働きやすくなりそうです。

(ハッサク)

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