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日経平均に押し目の機会?米国株の調整モード入り次第(香川睦)

トウシル / 2024年3月1日 8時0分

日経平均に押し目の機会?米国株の調整モード入り次第(香川睦)

日経平均に押し目の機会?米国株の調整モード入り次第(香川睦)

日経平均は利益確定売りをこなし足場を固めるか

 日経平均株価は22日に史上最高値(3万8,915円)を34年ぶりに更新し、今週初も続伸しました。前週は「エヌビディア旋風」とも呼ばれた米国株高で海外投資家のリスク許容度改善を映した日本株買いに空売り勢の買い戻しが重なり上値を追った感があります。日本の株高は、米国株高と為替の円安・ドル高による「追い風参考記録」との見方もあります。

 ただ、バブル崩壊前(1989年末)時点の日経平均ベースの予想PER(株価収益率)が60倍を超えていた一方、現在の予想PERは16倍台にとどまり日本株全体での割高感はありません。デフレからの脱却、企業の資本効率改善、円安効果に伴う増益基調持続、増配など株主還元姿勢への期待で日経平均が年内に4万円超を目指す展開が想定されます。

 とはいっても、最近の株価上昇ピッチが急だったため、目先は利益確定が出やすくいったん足場を固める動きとなる方が健全な相場サイクルにみえます。

 図表1が示すように、日経平均の100日移動平均線に対する上方乖離(かいり)率は+15.9%に達し、日経平均のRSI(相対力指数)も「買われ過ぎ」を示す70%を超えて78%に上昇しました(26日)。また、高値圏で推移する米国株がいったん調整に転じると、海外投資家のリスク許容度が減退して短期筋の先物売りが先行し日本株に圧力をかける可能性を軽視できません。

 なお、年初来の日本株高を受け、3月は期末に向けて国内の公的年金や企業年金によるリバランス売り(資産の再配分売り)が嵩(かさ)むことも想定され、日本株が一時的にせよ売りに押されるリスクもありそうです。株価が下落する場面があれば、中期目線でみた日本株の「押し目買い機会」になると考えられます。

<図表1>日経平均の対100日移動平均線乖離率は過熱感を示唆

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2024年2月28日)

米国株が調整モード入りする兆候も出ている

 日経平均が最高値を更新した一因として米国株高による海外投資家のリスク許容度改善に伴う「日本株買い」が挙げられます。21日に発表されたエヌビディアの決算と業績見通しが市場予想を上回ったためハイテク銘柄や半導体株が上昇。前週はS&P500種指数、ダウ工業株30種平均、ナスダック100指数などが最高値を更新しました。

 ただ、図表2で示す通り、S&P500の100日移動平均線に対する上方乖離率も22日に+10%超に上昇し、昨年7月下旬までの株高局面で付けた水準(+8.7%)を上回りました。昨年10月下旬を起点とした米国株高も短期的にはやや過熱感が否めない状況です。

 米著名投資家ウォーレン・バフェット氏は24日、恒例の「株主への手紙」の中で株式相場について「昔とは比べ物にならないほどカジノ的な動きをするようになった」と警鐘を鳴らしました。

 CNNヒジネスが公表している「Fear & Greed Index」(恐怖と貪欲指数)は79と投資家心理が「Extreme Greed」(極めて貪欲)な状況にあることを示しています(28日)。

 株価が調整入りする契機となりうるリスク要因としては、(1)物価指標の伸びの高止まりや景気の底堅さを受けた「早期利下げ観測」の後退と債券金利上昇、(2)都市部の商業不動産不況に端を発した地方銀行の経営悪化や信用不安、(3)3月7日に失効する「つなぎ予算」の行方を巡る債務上限問題の再燃、(4)大統領選挙の共和党公認候補者にトランプ前大統領が有力視され、「もしトラ・リスク」が「ほぼトラ・リスク」に変化した不透明感が挙げられます。

 特に(4)は、「米国第一主義」を掲げるトランプ氏の公約には「中国からの輸入関税を60%に引き上げる」など過激な発言が多く、米中対立激化に伴う中国向けビジネスやインフレ再燃を巡る不安を市場がいったん警戒する動きが想定されます。米国株が下落すると、海外投資家のリスク許容度が減退して「日本株売り」につながりやすい事象には要注意です。

<図表2>米国株にも高値警戒感で調整モード入りの可能性

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2024年2月28日)

「地球上で最も重要な銘柄」の時価総額は一時300兆円に

 前週後半に主な米国株価指数が最高値を更新するエンジンとなったのはエヌビディアが21日(日本時間22日朝)に発表した11-1月期の決算とガイダンス(業績見通し)でした。

 投資銀行世界最大手ゴールドマン・サックスが「地球上で最も重要な銘柄」(Most important stock on earth)と呼んでいた生成AI(人工知能)向け半導体最大手エヌビディアの売上高は四半期として最高を更新。

 純利益が前年同期比+769%と急増し、今期(2-4月期)の売上高見通しとともに市場予想を上回りました。同社のジェンスン・フアンCEOは「アクセラレーテッドコンピューティングと生成AIは転換点を迎えた。企業と業界、国を超えて世界的に需要が急増している」と述べました。

 図表3はS&P500の構成銘柄について時価総額上位10社と「年初来騰落率」を示したものです。「生成AIブーム」に乗り、エヌビディアの株価は昨年に約3.4倍となったのに続き、今年も年初来で56.8%上昇(28日)。

 同社の時価総額は一時2兆ドル(約300兆円=トヨタ自動車の約5.3倍)に到達した初の半導体企業となり、マイクロソフトとアップルに次ぐ米国3位に浮上しました。AIを中心とするイノベーション(技術革新)進展に対する期待が確信に変わりつつあることを示し、ハイテク企業全般の株価堅調に影響しました。

 今後もエヌビディアの四半期ごとの決算発表(次回は5月24日)が市場全体の乱高下要因になりやすいともいえるでしょう。

 筆者の2024年末までを見据えたS&P500の目標値(メインシナリオ)は5,300ポイントで変わりません。ただ、S&P500が節目とされていた5,000を上回ったことによる高値警戒感で持ち高調整の売りに直面するか、いったんレンジ相場入りする展開も不思議ではなく、上述したリスク要因を警戒して利益確定売りが嵩めば調整モード入りする可能性は否定できません。

 米国株式が過度に下落する場面では、中期視点に基づく押し目買いや積み増し買いが得策になると考えています。

<図表3>エヌビディアは時価総額で米国市場3位に浮上

S&P500の時価総額上位10社

ティッカー 銘柄名 時価総額
(億ドル)
時価総額
(兆円)
年初来
騰落率(%)
SPX S&P500種指数 442,938 6,669.76 6.3
MSFT マイクロソフト 30,295 456.19 8.4
AAPL アップル 28,015 421.84 -5.8
NVDA エヌビディア 19,416 292.36 56.8
AMZN アマゾン・ドット・コム 17,987 270.85 14.0
GOOGL アルファベット 17,020 256.29 -2.4
META メタ・プラットフォームズ 12,344 185.88 36.7
BRK/B バークシャー・ハサウエイ 8,921 134.34 15.6
LLY イーライリリー 7,199 108.40 30.0
TSLA テスラ 6,435 96.89 -18.7
AVGO ブロードコム 5,975 89.98 15.5
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2024年2月28日)

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(香川 睦)

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