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スポーツと投資の共通点は「メンタルタフネス」

トウシル / 2024年3月2日 8時0分

スポーツと投資の共通点は「メンタルタフネス」

スポーツと投資の共通点は「メンタルタフネス」

リオ五輪金メダリスト高橋礼華さんとESGアナリスト瀧澤信さんスペシャル対談

 このほど発売された『楽天証券で新NISA・iDeCoを始めよう! 2024年春号』から、バドミントン女子ダブルス元日本代表の高橋礼華さんと複眼経済塾取締役事務局長ESGアナリストの瀧澤信さんの対談を抜粋して、ご紹介します。

 世界の頂点に立ったアスリートとマルチに活躍する投資の達人による特別対談。リオ五輪の金メダル獲得秘話のほか、初心者が投資に臨む際の心構えなど話題満載です。

 2016年に開催されたリオデジャネイロオリンピックで、日本のバドミントン史上初となる金メダル獲得という快挙を成し遂げた高橋礼華さん。2020年に現役を引退し、バドミントンに明け暮れた人生のファーストステージを金メダリストとして華々しく終えました。

 高橋さんは現在、子育てや後進の育成、現役時代からの夢であったネイルサロンの開業を目指してセカンドステージを歩んでいます。

 瀧澤信さんは、投資・ビジネスの専門塾「複眼経済塾」で講師を務めるESGアナリスト。執筆や講演など多方面で情報発信している投資の達人です。今回は特別に、アスリートと投資家という異色の対談をお届けします。

 投資未経験の高橋さんと投資家の瀧澤さんのお二人に、人生のセカンドステージで役立つ投資の秘訣(ひけつ)や、投資にも応用できるアスリートのメンタルコントロール術などをお話しいただきました。

瀧澤 本誌は初心者向けの投資がテーマなのですが、まずは高橋さんの金メダル獲得に至るまでの経歴をうかがいたいと思います。高橋さんがバドミントンを始めたのはいつごろですか?

高橋 小学校1年生のときです。最初は遊び程度にやっていたんですが、だんだんと火がついて、小2のときに県大会に出て、小4のときには初めて出場した全国大会のシングルスで優勝しました。子どものころから負けず嫌いで、負けたときは猛烈に練習したのを覚えています。

 中学生からは、地元の奈良県橿原市を離れ、宮城県仙台市にある中高一貫のバドミントンの強豪校に入学しました。初めての寮生活だし、本当に練習が厳しくて慣れるまで大変でした。

 1学年後輩の松友(美佐紀)選手とダブルスのペアを組んだのは高校2年の秋です。高校を卒業してからは、二人とも同じ実業団のチームに所属し、世界ランキングで1位になりました。

 2012年、ロンドン五輪で日本代表の先輩だった藤井(瑞希)さんと垣岩(令佳)さんのペアが銀メダルを獲った試合を見て、「次は私たちがメダルだ!」という目標ができたんです。そのときから、4年後のリオ五輪での金メダルを目指して死ぬ気で頑張ろうと決意しました。

リオ五輪出場へ、そして念願の金メダル

瀧澤 日本代表に選出され、いよいよリオ五輪に出場するわけですが、金メダル獲得まで順調に勝ち進んでいったのでしょうか?

高橋 予選リーグの1回戦が一番緊張しました。前日は眠れなかったほどで……。それでも予選リーグは全勝で1位通過できたんです。決勝トーナメントでは緊張はありませんでしたね。

 ただ、準々決勝はメダル獲得の可能性がかかっているので、二人ともメダルを意識したせいか、あせりを感じ、ファイナルゲームまでもつれてしまったんです。幸いインターバルのとき、お互いに気持ちを切り替えられたから、最終的には勝てたんだと思います。

瀧澤 高橋さんのようなトップアスリートは、どのように気持ちを切り替えているのでしょうか?

高橋 自分たちのプレーができれば負けない自信がありましたし、それだけの練習を積み重ねてきました。メダルを意識せず、自分たちのプレーを出そう、人の何倍も練習して、いろいろなものを犠牲にしながら頑張ってきたんだから「絶対にできる」と思ったんです。

 そのように気持ちを切り替えられたおかげで、あせりや萎縮がなくなり、準々決勝や準決勝で勝つことができました。

瀧澤 そしてデンマークのペアとの決勝戦ですが、ファイナルゲームで16―19の3ポイント差から(注:バドミントンでは21点先取したほうがゲームの勝者)、5連続で得点をあげて奇跡的な大逆転を果たしました。リードされて窮地に立ったとき、どんな心境でしたか?

高橋 ゾーンに入った感覚というか、あせりはなかったですね。リードした相手のほうがあせっているのが表情で分かったので、相手のミスを誘うように狙いながら、冷静にプレーできたのが大逆転につながったんだと思います。

現役から退き、次のステージを迎える

瀧澤 現役の引退は、いつごろから考えていたんですか?

高橋 リオのすぐ後にも引退は考えていましたが、悩んだ末に現役続行を決意し、東京五輪を目指していました。ところが2020年、新型コロナウイルスの影響で選考レースが中断されたんです。五輪開催も延期になったとき、自分の中でバドミントンへのモチベーションがなくなっていると感じて引退を決断しました。

瀧澤 バドミントンとともに歩んだ人生のファーストステージから、引退や結婚、出産を経て、セカンドステージを迎えたわけですね。セカンドステージについて思い描いているビジョンはありますか?

高橋 現在は子どもたちに自分の経験を伝えたいという思いから、小学生のバドミントンを指導しています。指導を通じて子どもの成長を感じられてとても楽しいですね。また、現役時代からネイルが大好きだったので、ネイリストになってネイルサロンを開くという夢もあります。

瀧澤 ネイルサロンを開くとなると、開業するための資金が必要になってきますね。資金を調達するためのプランはありますか?

高橋 今のところは、頑張って働いてお金を貯めるしかないと思っています。でも、ついファッションとかにお金を使ってしまうんです(笑)。

人生のセカンドステージで投資が重要な役割を果たす

瀧澤 あるアンケートによると、結婚して子どもが生まれた後、自分が稼いだお金でファッションや美容を楽しみたいという女性が多かったんです。夫のお金を使うと、いろいろ文句を言われてしまうから(笑)。

 社会人の女性には、出産などをきっかけに会社を辞めざるをえないケースがありますよね。そんな女性の多くは、出産や育児が少し落ち着いたとき、人生のセカンドステージを考えると思います。その際に、お金が大事なポイントになります。高橋さんのようにお店をつくりたい場合も先立つお金が必要です。

 ここで重要な役割を果たすのが投資です。お店や会社をつくるために自分のお金を投資したり、逆に他人からお店や会社に投資してもらったりもします。自分のためにお金を使うことが「投資」なのです。

 また、女性の場合は仕事が見つからず、自分のお金で買い物できないときがあります。そういった際に、例えば株式投資から得られる配当金などで自由に使えるお金を確保するのも一つの方法です。

 投資額に上限はありますが、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)を活用すれば、投資でもうかったお金が非課税になります。通常は約2割の税金がかかるので、100万円の利益が出ても20万円引かれてしまうところ、100万円が丸ごと利益になりますから、自由に使えるお金の足しにできます。

 かつては投資=ギャンブルといったイメージもありましたが、投資は単なるお金もうけだけではなく、投資した企業の成功事例などを学んで自分の事業に生かせます。今では人生のセカンドステージに役立つツールとして活用されていると思います。

他人がすすめる銘柄をそのまま買ってはいけない

高橋 投資は未経験なので、私の中ではギャンブルというイメージもあるんですが、失敗したらどうしようっていう不安はありませんか?

瀧澤 高橋さんは練習を重ねて絶対に負けないという自信をつけたと言っていましたが、投資もその練習が必要なところがあります。『会社四季報』(東洋経済新報社)という日本の上場企業の情報をまとめた本が3カ月ごとに発行されています。

 私はこの本を5日間で2,000ページ、端から端まで全部読んでいます。全上場企業の情報を3カ月ごとに読み込んでいるので、自分には知らない銘柄はないという自信につながっているんですね。

 さすがに一般の皆さんがプロレベルの研さんを積む必要まではありませんが、それでも相応の準備と勉強は不可欠です。とくに投資で最もよくないのは、自分では何も調べもせず、他人がすすめる銘柄をうのみにして買ってしまうパターンです。

 そうすると失敗したときに他人のせいにして、立ち直れないんです。本当は、すすめられた銘柄を精査もせずに言われるがまま買ってしまった自分に原因がある。

 少なくとも投資しようとしている銘柄のことは『会社四季報』やウェブサイト、あるいは新聞などで調べ、何をしている会社なのかを自分の目で見てよく理解すべきです。投資も主体性をもって臨んでいる人のほうが負けないと思います。

スポーツも投資もタフなメンタルが必要

 もちろん、投資で失敗することもあります。例えば、投資で失敗して100万円が50万円になったとき、その失敗に引きずられ、投資がいやになってしまう人が多い。

 でもスポーツの試合と同じで全戦全勝とはいきません。失敗した原因を究明したり、さらなる情報を集めたりして、失敗を乗り越えようとする意志が持てたら、その経験が次の投資に生きてきます。「まだ50万円残っている!」と思える、タフなメンタルを持ちたいですね。

高橋 投資には興味があるので、もし挑戦するのであれば、スポーツの練習と同じようにいろいろと勉強することが必要だと思いました。

瀧澤 それこそNISAは、初心者が投資をしやすいように国が用意してくれた制度だといえます。初心者であれば、NISAやiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)などを賢く活用して、少額で易しいレベルから少しずつ始めながら、だんだんと手を広げていく感じがいいかと思います。

高橋礼華(たかはし・あやか)
聖ウルスラ学院英智高校時代、1学年後輩の松友美佐紀選手とダブルスのペアを組む。2009年、日本ユニシス(現・BIPROGY)入社。2016年、リオデジャネイロオリンピックの日本代表に選出され、日本のバドミントン史上初となる金メダルを獲得。2020年に現役を引退。現在は後進育成のため、地元奈良県橿原市で「M-BASEバドミントンアカデミー」を立ち上げる。また一児の母としても子育てに奮闘中。

 

 

瀧澤信(たきざわ・しん)
成蹊大学経済学部経済学科卒業。1996年、明治生命保険入社。2000年、グッドバンカー専務取締役COO(最高執行責任者)就任。2002年、野村証券入社。2006年、サステイナブル・インベスター設立、代表取締役社長就任。2016年、複眼経済塾取締役シニアESGアナリスト兼事務局長就任。著書に『『会社四季報』で発見 10倍稼ぐESG株』(ビジネス社)。

(トウシル編集チーム)

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