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[今週の日経平均]「株価調整の足音」は迫っている?~気になる2本のローソク足と、金融政策への思惑~

トウシル / 2024年3月11日 12時30分

[今週の日経平均]「株価調整の足音」は迫っている?~気になる2本のローソク足と、金融政策への思惑~

[今週の日経平均]「株価調整の足音」は迫っている?~気になる2本のローソク足と、金融政策への思惑~

 先週末3月8日(金)の日経平均株価は3万9,688円で取引を終えました。前週末終値(3万9,910円)比で222円安だったほか、週足ベースでは6週ぶりの下落に転じています。

 その一方で、先週の日経平均は4万円台に乗せ、取引時間中には4万0,472円まで値を伸ばす場面があるなど、最高値の更新から、さらに未踏の領域に足を踏み入れる動きも見せています。

 今週の相場は、翌週に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会:18日(月)~19日(火))と、日本銀行金融政策決定会合(19日(火)~20日(水))を控え、景況感や金融政策への関心度が高まっていくと思われます。

 そんな中、日米の株式市場は昨年11月から強い勢いで上昇してきただけに、金融政策イベントを前にした「高値警戒感の売り」と、米国のソフトランディング見通しによる「先高観の買い」との綱引きで、株価水準が上げ下げして行くことになりそうです。

 また、先週までの株価指数や、個別銘柄のチャートを眺めて見ると、ちょっと「気になる」ローソク足が2本出現していますので、今回はその2本のローソク足をベースに、今後の相場について考えて行きたいと思います。

気がかりなローソク足 その1…日経平均の大きな陰線

図1 日経平均(日足)とMACDの動き(2024年3月8日(金)時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 一つ目の気がかりなローソク足は、先週7日(木)に日経平均の日足チャートに出現した大きな陰線です。上の図1だと、ちょっと見にくいので、先週分のローソク足の並び(ピンク色の枠で囲った部分)を下の図2で拡大してみます。

図2 先週の日経平均(日足)ローソク足の並び

 この7日(木)に出現した大きな陰線は、先週の日経平均の値動きの中でも、とりわけ重要な意味合いを持っています。

 まず、この日の値幅(高値と安値の差)が、一週間の値幅でもあること、そして、前後のローソク足との組み合わせを見ると、前日6日(水)との組み合わせが「抱き線」、翌日8日(金)との組み合わせが「はらみ線」となっていることです。抱き線、はらみ線はともに、相場の天井や底を形成するときによく出る形とされています。

 そして、7日(木)が大きな陰線となった背景についても意識しておく必要があります。

 この日の取引を振り返ると、S&P500種指数(S&P500)とナスダック総合指数(ナスダック)が最高値を更新するなどの米株高の流れを引き継いで、日経平均も最高値の更新をトライする展開で始まったのですが、その後は、「日銀が3月にもマイナス金利政策を解除する」との思惑が広がって、一気に売りに転じる展開となりました。

 もっとも、日銀のマイナス金利解除そのものは、すでに市場では想定済みですので、現段階では「利益確定売りの口実になった」という解釈が自然かと思われますが、それでも翌8日(金)は方向感のない値動きとなり、節目の4万円台を回復できなかったほか、先ほどのはらみ足を形成するなど、買いの勢いを取り戻せていない印象です。

 もちろん、先週7日(木)の大きな陰線が、このまま相場の天井サインとなってしまうのかは、もう少し見極めが必要かと思われますが、図1下段のMACDもシグナルとの下抜けクロスが出現していることなどを踏まえると、積極的な上値トライへのハードルは上がったと考えた方が良いかもしれません。

今週の日本株のムードはTOPIXがカギ?

 これまで見てきたように、目先の日経平均は不安定な値動きになる可能性がありますが、日本株全体のムードの善し悪しについては、TOPIX(東証株価指数)の動きもチェックしていく必要があります。

図3 TOPIX(日足)とMACDの動き(2024年3月8日(金)時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 先週末8日(金)のTOPIX終値は2,726pでした。前週末終値(2,709p)からは17p高、週間ベースでも6週連続の上昇と、上昇基調をキープしています。

 また、日経平均と同様に、7日(木)に大きい陰線が出現しているものの、前後のローソク足との組み合わせが、抱き線でもはらみ線でもないこと(「かぶせ線」になってはいますが)や、直近で更新してきた2,700pの節目を維持して1週間の取引を終えていることなどから、日経平均と比較すると、TOPIXの堅調さが感じられます。

 確かに、先週の国内株市場は、内需関連を中心とする主力バリュー株へ買いが向かう動きが見られ、TOPIXの値動きに寄与した面があります。

 先週末の2月雇用統計をはじめ、今週の2月CPI(消費者物価指数)や2月小売売上高、そして来週のFOMCなど、今後の米国市場では注目のイベントが目白押しとなる中、その内容や動向次第では株価の振れ幅が大きくなる懸念があるため、相対的に影響が少ないとみられる内需株に資金が向かっていたと思われます。

 そのため、目先の日経平均の値動きが多少荒れたとしても、TOPIXが崩れなければ、さほど慌てなくても良さそうです。

 なお、TOPIXは最高値更新までの距離を着実に縮めており、あと5.8%ほど上昇のところまで来ています(下の図4)。

図4 TOPIX(週足)と目標値計算(2024年3月8日(金)時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

気掛かりなローソク足 その2…米エヌビディアの大きな陰線

 続いて、もうひとつの気掛かりなローソク足についても見て行きます。それは米半導体企業のエヌビディアの日足チャートで先週末8日(金)に出現した大きな陰線です。

図5 米エヌビディア(日足)とMACDの動き(2024年3月8日(金)時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 先ほどの図1と図2で確認したように、図5のエヌビディア(NVDA)も週末8日(金)の大きな陰線の出現によって、前日の7日(木)とのローソク足の組み合わせが「抱き線」となっています。

 しかも、チャートを遡って、過去のローソク足との大きさと比べても、かなりの大きさであることが分かります。この日のエヌビディア株の高値は974ドル、安値は865ドルですので、1日の取引で100ドルを超える値幅だっただけに、今回の抱き線はかなりのインパクトがあると言えます。さらに、今回の抱き線は900ドルという節目の株価水準もまたいでいます。

 先月21日(水)に決算を発表して以降のエヌビディア株は、決算直後に出現した「出会い線」や、800ドルの節目の株価水準超えなど、相場の天井を意識させるサインを打ち消して上昇してきました。果たして今回もクリアできるかが焦点になりますが、今回の抱き線の大きさからすると、再び上昇基調に戻していくには、少し時間が掛かるかもしれません。

目先の米半導体関連株は調整含みか?

 また、エヌビディア株だけに限らず、目先の米半導体関連株については、調整含みの展開になるかもしれません。

図6 米SOX指数(日足)と多重移動平均線(2024年3月8日(金)時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 上の図6は米SOX指数(フィラデルフィア半導体・セクター指数)の日足チャートに多重移動平均線を重ねたものです。

 多重移動平均線は、短期から中期までの異なる移動平均線をたくさん描くことで、トレンドの強弱や変化を探るのに使われます。上の図6では2日から28日まで、2日間刻みの移動平均線を14本描いています。トレンドが発生している時は多くの移動平均線が同じ方向を向き、移動平均線の束の幅が広くなっていきます。

 足元の状況も、図6を見れば上昇トレンドが発生中ということになりますが、ローソク足を見ると、エヌビディア株と同様、週末8日(金)に大きな陰線が出現して、やはり「抱き線」となっています。

 さらに、チャートをさかのぼると、昨年11月からの上昇トレンドの途中で、移動平均線の束が狭くなる調整期間が度々発生していますので、トレンドが転換するとまでは言えないものの、目先は調整含みの展開となる可能性が高くなっています。

今週は米国の景況感と金融政策を中心に方向感を探る展開

 したがって、半導体関連株が調整含みとなる可能性が高いこともあり、今週の株式市場は、米景況感と金融政策に対する思惑に振り回される場面が増えることが予想されます。

 先週末8日(金)に公表された米2月雇用統計の結果を簡単にまとめると、「非農業部門雇用者数が予想より増加」、「失業率は悪化したものの、依然として4%を下回っている」、「平均時給は前年比・前月比ともに、伸びがやや鈍化」といった具合に、強弱まちまちの内容となりました。

 これを受けた米主要株価3指数(NYダウ・S&P500・ナスダック)は下落という初期反応を見せましたが、相場の基調を変えるほどの動きではなく、米10年債利回りの低下や、景気や金利に敏感な中小型銘柄で構成される株価指数(Russell2000)が取引時間中に節目の2,100pを超える場面を見せていることもあり、米景気のソフトランディング(軟着陸)見通し自体は、今のところ変わっていないようです(下の図7と図8)。

図7 米10年債利回りの推移 (2024年3月8日(金)時点) 

出所:楽天証券WEBサイトを基に筆者作成

図8 米Russell2000(日足)の動き(2024年3月8日(金)時点)

出所:Bloombergデータを基に筆者作成

 とはいえ、今週の米国では、2月CPIが12日(火)、2月小売売上高が14日(木)に公表されます。先週の米2月雇用統計の結果が相場を動かす材料としてあまり機能しなかったこともあり、これらの経済指標への注目度は高くなると思われます。

 特に、CPIについては、来週のFOMCへの思惑につながりやすいことや、インフレの加速傾向が見られた前回(1月分)の結果が公表された2月13日(火)の米国株市場は大きく下落しています。図7の米10年債利回りを見ても、この日に利回りが上昇していることが分かります。

今週の日経平均の予想レンジは4万400円~3万7,700円

 以上のように、今週の株式市場は来週の金融政策イベントと、今週公表される経済指標などをにらみながら、株価の水準感を探っていく展開がメインシナリオとなりそうですが、最後に日経平均の予想レンジについても考えて行きたいと思います。

 予想の手掛かりとして、これまでのレポートでも度々紹介してきた、75日移動平均線乖離(かいり)率の推移をボリンジャーバンド化したものを使います。

図9 日経平均移動平均線乖離率(75日)のボリンジャーバンド(2024年3月8日(金)時点)

出所:MARKETSPEEDIIデータを基に筆者作成

 先週末8日(金)時点の75日移動平均線乖離率はプラス10.61%でしたが、週初の4日(月)にはプラス12.48%まで乖離が進み、昨年6月のプラス13.19%に迫る場面も見られました。現在の乖離率の水準は、2020年以降でも高水準のところに位置しているため、近いうちに乖離の修正が行われると思われます。

 乖離の修正が「時間調整」であれば、株価の推移は比較的穏やかですが、「値幅調整」であれば、荒っぽい株価の動きとなります。

 警戒しておきたいのは後者ですので、目先の日経平均の予想レンジを上の図9のボリンジャーバンドの値などで見て行くと、上値がプラス2σ(シグマ)の4万384円、下値がMA(中心線)の3万7,735円あたりが目安となり、キリのよい数字にすると、4万400円から3万3,700円あたりが、想定レンジとなりそうです。

(土信田 雅之)

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