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株価上昇でもあえて「売らない」!新NISAの「売り方」戦略

トウシル / 2024年3月12日 19時14分

株価上昇でもあえて「売らない」!新NISAの「売り方」戦略

株価上昇でもあえて「売らない」!新NISAの「売り方」戦略

株価が大きく上がった時、私たちを悩ませる「売り方」問題

 投資をするとき、私たちが期待しているのは値上がりです。長期投資を心がけているなら短期的な値下がりには耐えて、積立投資を継続することで購入平均単価を下げていくこともできます。とはいえ、最後は上がってくれないと困ります。

 できれば、購入後すぐに値上がりしてくれるのが理想的ですが、問題は「購入直後に一気に値上がりした場合」です。

 2024年1月から新しいNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)がスタートしていますが、1月の段階で新規購入資金を振り向けた人にとっては、望外の値上がりが生じていることでしょう。

 まさか、新NISAの幕開けが、34年ぶりの日経平均株価最高値となるとは意外な展開でしたし、S&P500種指数もナスダック総合指数も相次いで最高値を更新するなど、「投資をすれば利益が出ている」という状況になっています。

 そうなると、投資初心者、経験が浅い人ほど悩むのは「これは売ったほうがいいのか」という問題です。

 このとき、なんとなく売ってしまうのはうまくないので、いくつかの売り方を検討してみたいと思います。特に新NISAではどうするかを考えてみましょう。

今すぐ資金ニーズがなければ、売らないで持ち続けるのもNISAの「売り方」戦略のひとつ

 最初に提案したいのは「売らない」のも投資の選択肢のひとつである、ということです。

 初心者は、「売って、値上がり益を確定する」という経験をしてみることは有意義ですが、売るということは「次の購入」判断を必要とします。

 初心者ほど「次の購入」判断は難しくなります。売った後値上がりが続けば「もうちょっと下がるまで待とう」となって手が出ません。また、売った後に値下がりが起きても、「今は様子見をしよう」となって手が出ません。

 長期的には上がったり下がったりする中で、急いで利益確定はせずに積立投資を続けていったが結果として好成績になることは多く、下手な売り(と次に買えないことまでセット)は、避けたいところです。

 そもそも、今すぐに現金を必要とするわけではないなら、長期投資を意識して「売らない」を考えてみましょう。

 2024年からのNISAは購入時の価格で1,800万円まで非課税になりますが、年間の投資枠には一定の上限があります。これも踏まえて、上限に達するまでは持ち続けて、その後、売り方を考えてみる、というのもアリだと思います。

投資信託なら「もうかった分だけ売る」をやってみよう

 次に考えてほしいのは、「もうかった分だけ売る」という売り方です。全額を売り払って再投資を考えるのではなく、部分的に売るのは投資において重要なテクニックです。

 部分的に売却をした後にさらに値上がりした場合、残しておいた投資資金は価格上昇しますので、チャンスを取り逃すことはありません。反対に値下がりした場合でも、利益確定した部分は減らずに済みます。

 どちらの場合でも投資を続けることがしやすくなるため、資産形成層においては全額売るよりもいいアプローチといえます。

 ただし、この手法を選択できるのは「投資信託」ということになります。投資信託は購入金額と基準価額で毎回購入する「口数」を計算していますが、売却のときは口数を自由に設定できるからです。

 個別株については100株の売買単位を崩すことができないので「1,000株買って10%値上がりしたら100株ずつ売っていく」というような部分的売却が可能ですが、1,000株となれば購入金額が大きくなりすぎて、NISAの年間購入枠に収まらない可能性も出てきます。

 また、リスクが特定の企業に偏りすぎてしまいます。ここは投資信託の積み立て購入を行いつつ、部分的な売り、を試してみるといいでしょう。

2023年以前のNISAと新NISAの「売る順」はあるか?

 あなたが昨年より前からNISAを活用していた場合、「2023年までのNISA保有分(以降、旧NISAと呼ぶ)」と「新NISAの保有分」はどちらを先に売るか、という問題も考えておく必要があります。

 旧NISAがもし一般NISAであれば、5年目の非課税投資期限の到来が比較的近くやってくるので、優先的に売却し、新NISAでの投資分は残しておく方が合理的でしょう。新NISAは、1,800万円の上限に達するのが最短でも2024年から5年目なので、旧NISAを先に売っていきます。

 一方で、つみたてNISAの場合、非課税投資期限はまだ10年以上あるのでできれば長く持ちたいところです。とはいえ、新NISAのほうは非課税投資の期限がなく、さらに長期保有できるわけですから、取得時の価格で1,800万円という総枠に達するまでは、つみたてNISAから売却することが考えられます。

 ただし、個別株については中期、投資信託については長期のように保有スタンスが異なる場合、投資信託で積み立ててきたつみたてNISA分については長く持ち、個別株の投資(新NISAの成長投資枠分)については納得のいく上場が得られれば売却するような選択は考えられるかもしれません。

 そのあたりは自身の投資スタンスを明確にして、その都度選択をしていくといいでしょう。

とはいえ、売らずに「積み立てのみ」とするほうが若い世代にとってはもっとも合理的

 基本的な売り方と売る順番を、NISAの枠を意識しつつ考えてみましたが、できれば売らないで積立投資を継続するほうが、若い世代にとっては効率的です。

 普通の人にとっては、株価ではなく自分自身の資金ニーズやリスク許容度だけを考えるほうがよく、資産形成を行っている現役世代においてはほとんどの場合、売る理由はありません。

 投資初体験の人が成功体験として、利益確定を一度経験してみるのはいいことですが、それよりも投資を続けていくことのほうを意識してみてください。

 10%値上がりした状況というのは、その10%分が値下がりしても元本割れにならずに、投資を続けられる「余裕のある状態」であるともいえます。そう考えても、やはり「売らない」で投資を続けるほうがいいと思います。

 株価が上がっている時だからこそ、下がってもあえて売らない、という選択肢を考えてみてはどうでしょうか。

(山崎 俊輔)

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