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 米雇用統計、実は3カ月連続マイナス!?ニュースで取り上げられない労働市場の弱さ

トウシル / 2024年3月14日 7時30分

 米雇用統計、実は3カ月連続マイナス!?ニュースで取り上げられない労働市場の弱さ

 米雇用統計、実は3カ月連続マイナス!?ニュースで取り上げられない労働市場の弱さ

米雇用統計、雇用者数は増えたのか減ったのか?

「米雇用統計、2月の雇用者数は前月比18万4,000人減で、3カ月連続のマイナス。労働市場の悪化続く」

 これを見て、「えっ、ニュースで見たのは市場予想を上回る27万5,000人の増加で、労働市場は堅調だという内容だったけど…」と思った方も多いのではないでしょうか? 

 2月の雇用者数が18万4,000人減少したというのは、フェイクニュースではなく、紛れもなく、米国の労働省が発表した数字です。

 どういうことなのか、ひもといていきましょう。

 米労働省が発表している雇用統計の調査方法には、「Household data(家計調査)」と「Establishment data(事業所調査)」の二つがあります。

「Household data」は家計調査によるもので、こちらで注目されているのは失業率や労働参加率です。「Establishment data」は事業所調査によるもので、こちらでは、非農業部門雇用者数、平均賃金が注目されています。

 今回、ニュースでも多く報道されている27万5,000人増となった非農業部門雇用者数の数字は、「Establishment data」のものになります。

 冒頭に記した「18万4,000人減」という数字に対して、もし、「えっ」となったとしたら、この27万5,000人増という数字が頭の中にあったからでしょう。

 実は、注目されず、ニュースになることもほぼないですが、「Household data」の方でも雇用者数は発表されていて、冒頭に記した18万4,000人減は、「Household data」の数字になります。

雇用統計の二つの調査を比較

 ここで「Household data」における雇用者数のここ1年の推移を見てみることにしましょう。次のようになっています。

(表1)米国労働省「Household data(家計調査)」雇用者数の推移

出所:米国労働省労働統計局(BLS)公表データよりマネーブレインが作成

 2月は18万4,000人減で3カ月連続のマイナス、昨年9月から今年2月までのここ半年間をみると、53万2,000人もの減少となっていて、この表からは、「労働市場は足元で急速に悪化してきている」ようにみえます。

 一方で、ニュースでも取り上げられ、多くの人が注目している「Establishment data」の非農業部門雇用者数の推移を見てみると、次のようになっています。

(表2)米国労働省「Establishment data(事業所調査)」雇用者数の推移

出所:米国労働省労働統計局(BLS)公表データよりマネーブレインが作成

 こちらの表では、2月は27万5,000人の増加で、ここ1年、毎月増加していて、月平均でも22万9,000人の増加となっているので、「労働市場は引き続き堅調に推移している」ようにみえます。

 このように、同じ米国労働省が発表している数字なのですが、全く違った見え方となっていて、注目されている「Establishment data」の方は堅調な数字で、「Household data」の方は真逆の弱い数字が発表されるということが、このところ続いています。

 そして、他にも昨年も繰り返され、今回の発表においてもまた同じようになっていることがあるのですが、前月発表された「Establishment data」の12月と1月の数字が下方修正されていて、とくに1月は12万4,000人の下方修正という、大幅な下方修正となっています。

 1月11日のコラム「米雇用統計で下方修正が多発、雇用実態は弱い?利下げ遅れ景気抑制の恐れ」でも、注目されている「Establishment data」の非農業部門雇用者数は、速報値では強い数字が出るけれども、その1カ月後の改定値、2カ月後の改定値において、下方修正される傾向があることをお伝えしましたが、今回もそのようになっています。

 改めて、「Household data」と「Establishment data」の雇用者数(前月比)の推移を並べて見てみましょう。

(表3)米国労働省 雇用者数(前月比)の推移

出所:米国労働省労働統計局(BLS)公表データよりマネーブレインが作成

 米国という一つの国においての数字であり、かつ、同じ米国労働省が出している数字なのですが、「本当に同じ国の数字なのか?」と思ってしまうほど、どちらを見せられるかによって、労働市場の見え方は全く違ってきます。

 このため、米国の労働市場の実態を誤って捉えてしまうことのないように、少なくとも、「Establishment data」の数字と「Household data」の数字を足して2で割るなどした方が、実態を捉えられるのではないかと私は考えています。

 現在、米国株も堅調な推移をしていることから、「米国経済は引き続き堅調だ!」という声が多いように思いますが、「本当に強いのか?」という点について、今回の雇用統計だけではないですが、注目されている数字だけでなく、注目されていない数字についてもきちんと見ていかないと、危ういのではないかと私は考えています。

 投資はあくまでも自己責任で。

(白石 定之)

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