みんなで渡ればこわくない!?
トウシル / 2024年3月21日 17時37分
みんなで渡ればこわくない!?
「黒田異次元緩和」から「植田大規模緩和」に移行しただけ!?
3月19日の日本銀行金融政策決定会合は、ここ数週間、徹底的にリークされてきたように、政策金利を0%から0.1%の範囲に設定しマイナス金利を解除した。合わせてイールドカーブコントロールの廃止、ETF(上場投資信託)とJ-REIT(ジェイ・リート:国内の不動産投資信託)の買い入れの終了、国債買い入れの継続を発表した。
日銀は「報道機関に小出しに内容をリークさせることで市場に織り込ませる」という、中央銀行としては禁じ手の「市場との対話」を行っている。
日銀が「マイナス金利を解除し金融正常化に踏み出す」という観測でいったんは円高に振れて、3月初旬に日経平均株価は急落した。しかし、イールドカーブコントロールを廃止したといいながら国債買い入れは続けるという日銀のあいまいな姿勢は、「黒田異次元緩和から植田大規模緩和に移行しただけ」と市場には受け止められ、日経平均株価は3月7日につけた史上最高値を更新してきた。
日経平均CFD(日足)
日経平均CFD(週足)
ドル/円(日足)
日本の政権や日銀の政策は米国の大きな政治的圧力を受けており、その政策は米国市場の補完装置(米国債や米国株の買い手)として使われているとうわさされている。米民主党政権が選挙で勝利するには、株高は必須の条件である。そうであれば、米大統領選挙までは日本のマネーを呼び込むことによるバブル相場の延命が続くことを頭に入れておく必要がある。
トレードで最も成功した某著名投資家は、「日本人の株式投資元年である。今まで貯金と不動産投資、せいぜい純金にしか目が向いていなかったが、日本人全員が株に関心を持つようになった。日本人はいったんそっちに目を向ければ、集団でそちらに動く。キャッチコピーにあったように【赤信号みんなで渡れば怖くない】で、フレミングの大行進のようにいきつくところまで行く、狂乱物価のトイレットペーパー買い占めや、1980年代の狂乱のバブルを作り出した国民である。このパワーは侮れない。まだ始まったばかりとも言える」と、述べておられた。
日本人の爆買いで米国の株式市場も高値圏での推移が続いている。ただし、このようなバブル延命相場の賞味期限は何度も申し上げているように、11月の米大統領選挙までであろう。
S&P500CFD(日足)
FOMC:今年中に依然として3回の利下げを予想
FRB(米連邦準備制度理事会)は20日に開いたFOMC(米連邦公開市場委員会)で政策金利を5会合連続で据え置いた。経済見通しでは年内3回としていた利下げ予想を維持した。
昨日のFOMCでパウエルFRB議長は、「政策金利はおそらくピークに達している」、「今年のある時点で緩和を開始するのが適切」、「必要に応じて金利を長期間維持する用意がある」と玉虫色の発言に終始した。
政策金利は変化なし、声明文もほとんど変化はなかった。不思議なのは、12月の予想と比較して、FRBは実質GDP(国内総生産)成長率の上昇、失業率の低下、コアPCEインフレ率の上昇を予想している。にもかかわらず、今年中に依然として3回の利下げを予想していることだ。
FRBが経済状況に関係なく利下げをしたい気持ちは分かる。FRBが高金利を長く維持するほど、米政府の利息負担への圧力はさらに高まる。米国の利払いは既に1兆ドルを超えている。これは持続不可能だが、止まる気配はない。
米国政府の利払いが1兆ドルを超える
日銀は「金利をゼロに戻すだけで、少なくとも米大統領選挙までは何もしない」だろう。一方でFRBの方は「株が最高値近辺なのに利下げなど本当にするのか?」という疑問が利下げ観測を後ずれさせている。
市場予想ではFRBの利下げ開始は最短で6月(現在の6月利下げの確率は50%未満)である。それまではゴルディロックスというぬるま湯相場が展開されてもおかしくない。
そもそも、今の市場でデータ次第というFRBの金利予測などなんの意味もない。金利を動かしているのはFRBではなく原油市場である。
コアCPIインフレとブレント(北海原油)価格の推移
そうした中、ゴールドのスポット価格が初めて1オンス=2,200ドル台に乗せた。昨日のFOMCでは今年の利下げについて0.25%を3回という従来予想を据え置いた。これはゴールドに追い風だ。
実質金利がプラスであるにもかかわらず、ドル建てのゴールドが上昇するとき、実質金利がプラスのままであれば、米国政府が債務スパイラルに陥るだろうとゴールド市場は示唆しているのである。
ゴールドCFD(日足)
ゴールド/円CFD(日足)
金融市場の多くは蜃気楼(しんきろう)に過ぎない。希望、政府支出、イージーマネー、レバレッジ、誇大広告によって生み出された幻想である。問題は、このサイクルが歴史上何度も繰り返されてきたことだ。遅かれ早かれ、現実が頭をもたげるだろう。
収益が長いトレンドから上下に乖離(かいり)
FRBはいつでも輪転機をまわすことができるのかもしれない。しかし、この中央銀行プットは幻想である。中央銀行の「失敗」の代償は、市民、社会、経済に転嫁されただけであり、現在は「失敗」を隠すためにばらまいた借金の重圧にあえいでいる。
VRゲームより金融市場の方が仮想現実に向かっている。まさに『欲望と幻想の市場』だ。
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(石原 順)
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