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[今週の日経平均]相場シナリオの見直しは必要か?~株価上昇を妨げる「モヤモヤ」感~

トウシル / 2024年4月8日 12時5分

[今週の日経平均]相場シナリオの見直しは必要か?~株価上昇を妨げる「モヤモヤ」感~

[今週の日経平均]相場シナリオの見直しは必要か?~株価上昇を妨げる「モヤモヤ」感~

 4月を迎え、新年度相場入りとなった先週の国内株市場ですが、週末5日(金)の日経平均株価は3万8,992円で取引を終えました。前週末終値(4万369円)からの下げ幅は1,377円で、節目の4万円台や3万9,000円台を下回ってしまいました。

 前回のレポートでは、「新年度のスタートダッシュ期待はあるものの、ちょっと注意しておきたい」という視点で相場を捉えていましたが、蓋を開けてみるとそれよりも軟調で、「思った以上に株価が下がった」印象があります。

 そこで、今回のレポートではタイトルにもあるように、相場シナリオの見直しをする必要があるのか、また、新たな材料の登場や状況の変化がないのかなどについて整理してみたいと思います。

 まずは、いつものように足元の状況から確認していきます。

先週の日経平均は4万円水準の「レジ・サポ」ならず

図1 日経平均(日足)とMACDの動き(2024年4月5日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ると、上の図1を見ても分かるように、週を通じてローソク足がすべて陰線(終値が始値よりも安い黒い線)だったほか、終値ベースで4万円台を上回る日もゼロという展開でした。

 また、前回のレポートでは4万円の株価水準がこれまでの「抵抗(レジスタンス)」から「支持(サポート)」へと、節目の役割を変えられるかに注目していましたが、実際には、サポートとして機能することができず、4万円から1,000円以上も下放れる格好で週末を迎えています。

 さらに、25日移動平均線も同じくサポートとして意識されていましたが、こちらも維持できませんでした。

 結果的に、先月22日の高値を頂点にした2週間ほどの短期下落トレンドが発生しているような格好になっているため、今週は、「下げ止まりの確認」と「株価の反発力」がポイントになります。

 仮に、今週の日経平均が反発していった場合には、先週サポートとして機能できなかった25日移動平均線や4万円の株価水準を再び目指すことになります(レジスタンスの突破)。

 その一方で、株価の下落が続いた場合の下げ止まりの目安については、図1に描かれている50日移動平均線や75日移動平均線、そしてその間に位置している3万8,000円の株価水準が意識されそうですが、週末5日(金)時点の株価からは、50日MA(50日移動平均線)がいちばん近いところに位置しています。

 なお、50日移動平均線は、米国株のテクニカル分析で使われることが多く、日本株のチャート上に描かれることは少ないです。ただし、今週末の12日(金)は、国内株価指数のmini先物取引とオプション取引のSQ日が予定されており、海外短期筋の先物取引の売買が活発化する可能性も考えられるため、敢えて描いています。

先週の株価を下落させた材料その1 「需給」

 また、先週の日経平均を下落させた主な要因として、「需給」と「米国」の二つが挙げられます。

 まず、新年度相場の初日だった先週1日(月)の株価下落の要因となっていたのは、「期初の益出しの売り」と呼ばれる需給要因です。

 期初の益出しとは、国内の機関投資家などが含み益のある株を4月や10月などの期初に売却することです。一般的に、いったん利益を確定させる(評価益を実現益にする)ほか、売却による現金化で機動的な運用がしやすくすることなどを目的として行われるとされています。

 もっとも、こうした売りは継続的に相場の見通し自体を悪化させるものではなく、一時的な事象であるため、売りが一巡すれば、前回のレポートでも触れたように、今度は「例年4月の外国人投資家は大きく買い越す傾向」という、同じ需給材料による買い期待が高まることも考えられます。

先週の株価を下落させた材料その2 「米国」

 そして、もう一つの要因が「米国」です。こちらについては「モヤモヤ」感があり、ちょっと注意が必要かもしれません。

 もう少し細かく見て行くと、先週2日(火)の米主要株価指数(NYダウ・S&P500・ナスダック)が揃って下落しましたが、その背景にあるのが、この日に発表された米3月ISM(米サプライマネジメント協会)製造業景況指数の結果が予想以上に強く、米国経済の堅調さが改めて確認されたことです。

 本来であれば、経済指標が好調なことは市場にとって良いことなのですが、今回の株式市場がネガティブに反応した理由は、「6月に開始とされるFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ決定が後ずれするのではないか?」という思惑が働いたためです。

 また、米国株市場は4日(木)の取引でも大きく下落しました。こちらは、地政学的リスクの高まりによる原油価格の上昇がインフレ懸念を高めたほか、FRBの要人からも「利下げを急がない」的な発言が増えていることなどがきっかけとなっています。

 そこで、米国株市場の動きについてもチャートで確認したいと思います。下の図2から図4は、ダウ・ジョーンズ工業株平均株価(NYダウ)、S&P500種指数(S&P500)、ナスダック総合指数(ナスダック)の日足チャートに多重移動平均線を重ね合わせたものです。

図2 米NYダウ(日足)の多重移動平均線とMACDの動き(2024年4月5日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

図3 米S&P500(日足)の多重移動平均線とMACDの動き(2024年4月5日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

図4 米ナスダック(日足)の多重移動平均線とMACDの動き(2024年4月5日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 多重移動平均線については、以前のレポートでも紹介しましたが、短期から中期までの異なる移動平均線(2日から28日までの2日間刻み)を複数(14本)描くことで、トレンドの強弱や変化を探るのに使われます。

 トレンドが発生している時は多くの移動平均線が同じ方向を向き、移動平均線の束の幅が広くなっていきます。反対にトレンドの勢いが衰えた場合には、束の幅が狭くなり、期間の短い線から方向を変える動きを見せて行きますが、今回注目するのはローソク足と移動平均線の束の関係です。

 図2から図4を見ると、NYダウ、S&P500、ナスダックのいずれも、4日(木)の取引で大きな陰線が出現し、移動平均線の束を一気に下抜けしています。一本のローソク足が複数の移動平均線をまたいで、下抜けしたり、上抜けしたりする格好はトレンドの転換点になることが多く、全体的に少し雲行きが怪しくなっています。

 もっとも、翌5日(金)の取引がやや持ち直していることもあり、再び株価が上昇して狭くなっている束を上抜けていくことも考えられますが、米国では今週10日(水)の3月CPI(消費者物価指数)をはじめ、来週15日(月)には3月小売売上高など、注目の経済指標が相次ぎます。

 経済指標の結果や要人発言による金融政策への思惑が絡み、米国株市場は「ふらつき感」が出やすくなっています。

 さらに、米国株市場では、米経済のソフトランディング見通しが前提となる中、利下げを行うことで市場の緩みを生み、経済の過熱やインフレの再燃となるリスクがある一方で、景気減速の兆候がないわけではなく、さらに地政学的情勢を背景とするインフレの高止まり不安もくすぶり始めています。

 そのため、米景気のデータを確認しながら機敏に金利を調整しようとするFRBの目論見がうまく行かなくなる状況も考えられ、現時点では切迫感はなくても、「近いうちに相場シナリオを修正しなければならないかもしれない」確率は以前より上がっていると認識しておく必要がありそうです。

企業業績が相場を支えるか?

 このほか、今週は企業決算も注目されそうです。国内ではファーストリテイリング(9983)セブン&アイホールディングス(3382)、良品計画(7453)などの小売関連企業、米国でも大手金融機関(JPモルガン・チェース:JPMウェルズ・ファーゴ:WFCシティグループ:Cなど)が決算を発表する予定です。

 これまで述べてきたように、米金融政策への不透明感が強まっていますので、個別の企業業績を手掛かりに、下値での買い意欲や相場の反発力などが試されることになりそうです。

 そして、目先の日経平均の想定レンジについても見ていきます。図1でも見てきたように、足元の株価は25日移動平均線を下抜けてしまったため、次のサポートの目安の一つである75日移動平均線の乖離(かいり)率を中心に考えてみたいと思います。

図5 日経平均移動平均線乖離率(25日)のボリンジャーバンド(2024年4月5日時点)

出所:MARKETSPEEDIIデータを基に筆者作成

 先週末5日(金)時点の75日移動平均線乖離率はプラス4.76%です。乖離率をボリンジャーバンド化したものでは、マイナス1σ(シグマ)あたりに位置しています。直近では、3月21日にプラス11.55%まで上方乖離が進んでいたため、乖離の修正がかなり進んだことになります。

 さらに、図5で過去にさかのぼると、プラス10%超えから乖離が修正された場面では、プラス5%近辺でもみ合った後に、再び上方向に乖離を拡大していく場面が見られず、逆にマイナス5%あたりまで下方への乖離を進めた経緯があるため、相場のリズム的には、下向きの意識が強まりやすくなっていると言えます。

 したがって、株価が上方向に進んだ場合は、ボリンジャーバンドの中心線(MA)あたりが上値の目安となり、下方向に進んだ場合は、ボリンジャーバンドのマイナス2σや、乖離率0%、マイナス5%などが下値の目安となります。

 5日(金)時点の75日移動平均線の値でそれぞれ計算すると、上値が中心線(MA)の約4万円、下値については、それぞれ、3万7,669円、3万7,134円、3万5,227円となりますので、大体、4万円から3万7,000円台が目先の想定レンジとなりそうです。

(土信田 雅之)

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