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新社会人の皆さんへ:まず収支管理、次はリスク管理を覚えよう(窪田真之)

トウシル / 2024年4月2日 7時0分

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新社会人の皆さんへ:まず収支管理、次はリスク管理を覚えよう(窪田真之)

 今日のコラムは、4月入社「新社会人」へのメッセージですが、「退職金を得て投資デビュー」を考える読者にも、ぜひ読んでいただきたい内容です。

 日本人には、子どもに、お金について学ばせる習慣があまりありません。子どもにお金の話をするのは、良くないこととする風潮すらあります。そのため、中高年になっても、お金について人生設計ができない方がいます。そこにつけ込んで、老後の不安をあおりつつ、高額な手数料を取るビジネスがはやります。

 新社会人へのメッセージを、いっしょに読んで考えていただきたいと思います。

一番大切なのは、収支管理

 社会人になると、収入が増えると同時に、学生のころにはなかったいろいろな支出が発生します。行き当たりばったりでお金を使うのではなく、収入と支出のバランスを考えながら使うことを覚えましょう。

 社会人1年目に、収入と支出の予定表を作ろうとしても、経験がないだけに難しいと思います。最初は、「走りながら考える」ことになるでしょう。

 一つ、努力していただきたいことがあります。支出は、原則、収入の範囲内に抑えることです。そうは言っても、臨時に大切なイベントで、お金を使わなければならないことがあるかもしれません。自分にとって「ここぞ勝負」と思う機会に、自分を磨くための支出が必要になることも、あるかもしれません。

 生きたお金の使い方をした結果、支出が収入を上回るのは良いと思います。ただし、支出が収入を上回る状態を、いつまでも続けることはできません。

 家計の収支が恒常的に赤字になっている方に、その理由をお尋ねすると、「臨時のやむを得ない支出があったため」という答えが返ってくることが多いです。友達の結婚式が多くてお祝いの出費が増えた、お世話になった人に記念品を贈った、歯の治療費がかさんだ、などなど。「臨時の支出」は常に発生するものと見込んで、支出をコントロールする必要があります。

 二つのことを守れば、支出を収入の範囲にコントロールすることができます。

【1】借金は、原則しない

【2】給与天引きで、毎月、積み立てで貯蓄する

銀行が貸してくれる…と安易に大きな借金を負うべきでない

 銀行の融資審査能力が、やや低下しています。以前ならば、決して貸さなかったような個人に、大きな金額を貸すようになりました。

 20代で貯金なしの方が、中古の一戸建てを買うために約4,000万円の住宅ローンを申し込んだら、簡単に認可が出てしまった、という話を聞きました。「出てしまった」というのは、無理して一戸建てを買うのが、その人にとっていいことか疑問だからです。

「持ち家がないと不安」、「いざというとき、家さえあれば何とかなる」と考えて家を買いたくなるのも分かります。ただし、その人は「借金がない」ことがどれだけ幸せか、それに気付いていないと思います。

 大きな借金を背負うと大変です。体調を崩して、一時的に収入が途絶えても、借金の返済は続きます。いざというとき、持ち家はなくても借金さえなければ何とかなる、という考え方もあります。

 さすがに、社会人1年目から、数千万円は借りられないと思いますが、それでも、カードローンで何十万円も借りられる場合があります。自らの市場価値を高める重要な支出をするための借金ならばよいですが、そうでないならば、銀行が貸してくれるからと安易に大きな借金をするべきではないと思います。

 かつて消費者ローン業界が競って過剰な貸付をあおり、個人破産が増えて社会問題となったことがありました。こうした問題を防ぐ目的から、2006年に貸金業法が改正され、2010年に完全施行となりました。

 これにより、年収の3分の1を超える貸付が禁止されました。ところが、銀行のカードローンは、その適用対象外となっています。規制の枠をすり抜ける形で、年収と同額に近い貸し出しまで実行されるようになっています。

簡単にもうかる、うまい話はない

 収支管理ができたら、積み立てで貯蓄をしていく習慣を身に付けましょう。月々1万円貯蓄できればいいですが、それが無理ならば、月々5千円でも、2千円でも構いません。貯蓄を習慣にすることが大切です。

 ボーナスなどで臨時に収入が増えるときは、少し頑張って貯蓄を増やしてみたいところです。ただし、一獲千金を狙って、甘い投資話に乗ることのないよう気を付けましょう。

 世の中には、「楽して大もうけしている人がいる」という話がたくさんあります。「あなたも楽してもうけたいならば、こうすれば簡単に…」と、勧誘する広告もよく見かけます。全て落とし穴と考えて間違いありません。高い手数料をとられ、高いリスクを負って、損をすることが多いといえます。

 確かに、世の中には、運よく大もうけする人はいます。ビットコインなどで大もうけした話は、よく聞きます。それで会社を辞めて、ベンツを買ったという話が聞かれます。その話を聞いてから、あわててビットコインを買いにいっても、同じようにもうかるはずはありません。

 相場の世界では、大もうけした人のまねをして同じものを買うと損することもありますから、注意しましょう。

資金運用で大切なのは、リスク管理

 投資理論の世界に「無リスク利子率」という概念があります。通常、10年国債利回りが「無リスク利子率」と定義されます(国が破産するリスクは考えないものと前提)。私が20代のころ、10年国債利回りは6%近くありました。元本目減りリスクを負わず、年6%のリターンを得ることができたわけです。

 今、10年国債利回りは0.7%程度です。無リスク利子率は、1%もありません。もし、「年利6%で回る有利な投資商品」が紹介されたとしたら、そこには必ずなんらかのリスクがあると、考えましょう。そのリスクが何であるか分からないまま、投資するべきではありません。

 2008年に米国の老舗証券会社リーマン・ブラザーズが破綻しました。この時、リーマン・ブラザーズが発行していた高利回りの債券に投資していて、退職金のほとんどを失ってしまった人がいました。「欧米の歴史ある老舗証券が発行する高利回り債券だから安心」と勧誘されたようです。

 個人投資家は、「利回り」という言葉に弱いようです。「利回り」と聞くと、「確定利回り」と勘違いしてしまうようです。10年国債利回りを大きく上回る利回りには、必ず、リスクがあると考えましょう。

 私は、リスクを負うべきでないと言いたいわけではありません。リスクをきちんと理解した上で、取る価値のあるリスクを取りましょう。お金は、経済に役立つところで活用すれば、高いリターンを生みます。ただし、それには、相応のリスクが伴います。

 銀行預金に置いていても、今はあまり経済の役に立ちません。多くの銀行が、使い切れない資金を持て余して、日本銀行の当座預金に預けっぱなしにしているからです。企業も、銀行からの借金に頼らず、金融市場で直接、お金を調達する時代になりました。

 私たちも、余裕資金の範囲で、株式や外貨建て金融商品など、リスクのある運用を行うことで、資金を増やす可能性が出ます。集中投資ではなく、なるべく分散投資して、長期的にコツコツと積み立てていくことが、望ましいと思います。

年利回り5%が期待できる金融商品は、買いか?

 ここで、クイズです。

<クイズ>以下の投資信託のAとB、どちらが良い投信でしょう?

出所:筆者作成

 未来のことは分からないのですが、分かってしまうとします。4年後に、投信Aは20%上昇しています。年平均5%と、魅力的なリターンです。投信Bは、4年後に5%上昇しています。年平均1.25%のリターンで、10年国債の利回りが0.7%程度の時に、なかなかのリターンといえます。

 未来のことが分かるならば、投信Aの方が、明らかに良い投信です。ところが、現実には、未来のことは分かりません。もし、未来のことが分からないまま「年率5%の利回りが期待される」と薦められて、投信Aを読者の皆さまが買ったとしたら、その後どうなるか、考えてみてください。

 1年後には、15%以上、値上がりしています。予想以上の値上がりに喜び、ここで余裕資金があれば、追加で買うかもしれません。ところが、2年目以降、値下がりが続きます。2年目はなんとか我慢したのですが、3年目になると、当初元本を10%も下回るところまで、下がってしまいました。

 これ以上の下げには耐えられないと、基準価額9,000円で全て売却してしまうかもしれません。そうすると、4年目の急騰の恩恵は受けられません。

 相場は意地悪なもので、あなたの心理の裏をついて、揺さぶりをかけてきます。あなたは、この激変に耐えられますか? この激変に耐えることが、リスクを負うということです。

「年利回り5%が期待できる金融商品に投資すべきか」という問いの答えは、あなた自身の中にあります。リスクに耐えられるか否か、考えてみてください。

 サラリーマンの生涯年収は、1億~2億円と考えられています。最初に行う、月々1万円の投資では、思い切ったリスクを取ってみてもよいと思います。ただし、どういうリスクか、自分で理解できるものにすべきです。

 理解した上で、さまざまなリスクを取って、その結果を見て、学ぶことも大切です。将来、もっと貯蓄が増えたときに、きちんとリスクを管理しながら運用できるようになるために、若いうちは、いろいろリスクを取ってトライしてみていいと思います。

高リスク・高リターンの金融商品に投資する方法

 リスクは高い(激変する)が、長期的なリターンが高いと期待する金融商品に投資する際、激変に耐えられるようにする投資方法として、積み立て投資が一番良いと思います。これから貯蓄を始める新社会人は、まず積み立て投資から始めたらよいと思います。

 既に、学生時代から貯めたお金がいくらかある方は、国内株式・外国株式・国内債券・外国債券などに分散投資することを考えたらよいと思います。買うべきでないと考えるのは、以下二つのタイプの金融商品です。

・手数料が高すぎる金融商品

・短期的にもうけられると、みんなが熱狂的に投資している金融商品

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(窪田 真之)

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