不動産大手・碧桂園の株式が売買停止に。中国政府は救いの手を差し伸べるか?
トウシル / 2024年4月4日 7時30分
不動産大手・碧桂園の株式が売買停止に。中国政府は救いの手を差し伸べるか?
碧桂園の香港証券取引所における株式売買が停止に
香港証券取引所に上場する中国不動産大手の碧桂園(カントリーガーデン:HK2007)の株式が4月2日、一時的に売買停止となりました。同取引所の規定により、2023年12月期決算を、期限内の3月末までに公表できなかったためです。
碧桂園は中国国内に3,000以上の開発プロジェクトを有する大手ですが、2023年1-6月期の決算で約1兆300億円の赤字を計上、6月末時点で約29兆円の負債を抱えていました。
資金繰りが悪化する中、昨年8月、「会社設立以来最大の困難に直面している」という声明を発表。その上で、会社として取り組むべき最優先事項は「キャッシュフローの安全性を全力で確保すること」と指摘しています。
その後も碧桂園の経営不振、債務問題は顕在化していきます。昨年10月、米ドル債の利払い不履行に伴い、国際金融団体が債務不履行(デフォルト)と認定。今年2月には、債権者の建滔集団(キングボード・ホールディングス)の傘下企業が香港高等法院(高裁)に法的整理を申し立てています。そして現在、3月12日に期限を迎えた人民元債の9,600万元(約20億円)の利払いができず、30日間の支払い猶予期間に入っているというのが現状です。
中国房産信息集団(CRIC)の発表によれば、上位100社の住宅販売額が前年比45.8%減となった3月、碧桂園の販売契約額は43億元(約900億円)で、前年同月比で83%減。中国において不動産不況が続く中(1~2月、不動産開発投資は前年同期比9.0%減。新築住宅の販売面積は同24.8%減、販売額は32.7%減)、販売状況が不振に陥り、それが信用不安を助長し、資金繰りを一層不透明にさせるという悪循環に陥っているように見受けられます。
碧桂園サイドの言い分と今後三つの注目ポイント
期限内に決算を公表できなかった理由について、碧桂園側もノーコメントではなく、自社なりの言い分を公表しています。
「同社が身を置く業界全体が継続的に浮き沈みをしており、当社が直面する経営環境が日増しに複雑化している」
「債務再編は続けているが、プロジェクト数が多いこともあり、デューデリジェンス関連の作業量が多く、複雑性も高い。従って、当社はより多くの時間をかけて財務資料を収集することで、現在、および将来的な財務を巡る資源と義務を慎重に見積もりたいと考えている」と説明。
一方、「株式売買停止は当社の運営に実質的な影響は及ぼさない見込みであり、足元、我々が手掛ける不動産の引き渡し保証、および海外における債務再編はいずれも秩序立って推進しているところである」と弁明し、同社の債権者や市場関係者を宥めようともしています。
今後の注目ポイントとしては、三つあると思います。
一つ目が、碧桂園がいつどのタイミングで2023年12月期の決算を公表するのか、その時出てくる数字がどの程度のものになるか。
二つ目が、碧桂園がこれから直面する国内、海外、人民元、米ドル建ての債務を払えるかどうか。状況次第ではデフォルト、会社清算といった危機に陥るかどうか。
三つ目が、依然として不況から抜け出せずにいる中国不動産市場が回復するかどうか。
中国メディア財新Windの統計によれば、3月29日時点で、香港証券取引所に上場する305社の不動産企業のうち、20社が2023年の決算報告の発表を延期しています。
碧桂園が陥っている苦境は決して氷山の一角ではなく、中国不動産市場、もっと言えば、中国経済全体に影響を及ぼし得る構造的問題だと言えるでしょう。
中国政府は「問題企業」を救済するのか?
上記3点に加えて、中国政府の思惑と立場も重要になってくると思います。
私自身、しばしば聞かれるのが、中国政府は碧桂園、あるいは恒大集団(エバーグランデ:HK3333)といった巨額の債務を抱え、経営不振、デフォルト危機に陥っている「問題企業」を救うのかどうか、という点です。
これに関し、今年3月に行われた全国人民代表大会(全人代)の記者会見にて、担当閣僚である倪虹・住宅都市農村建設相が「債務超過が深刻で、経営能力を失っている不動産企業は、法律と市場のルールに従い、破産するべきは破産し、再編するべきは再編する」と語り、物議を醸しました。
一方で、私が把握する限り、この文言の中にある「破産するべき企業は破産する」という立場は、中国政府が従来から有しており、目新しいものではありません。
結論から言えば、中国政府は、規格外の公的資金を投入することを通じて、碧桂園に手を差し伸べることはしないでしょう。恒大集団がそうだったように、中国人民銀行や証券監督管理委員会、地方政府などによる指導を通じて、同社の債務再編プロセスを後押しする、経営不振や資金繰りが原因で、同社が手放さざるを得ない開発プロジェクトを国有企業に引き取らせる、といった形を取るのではないかと思われます。国内の金融機関に同社への貸付を促すといった策も考えられます。
ただ、これらはあくまでも行政指導、政策的支持であり、それらを通じて碧桂園が経営体制を立て直し、債務再編を円滑に進められるのであれば、それを良しとし、仮にそれらが達成されないのであれば、同社の破産を見届けるでしょう。
破産を回避すべく間接的に支持はするが、安易な救済はしない。
これが中国政府の思惑であり、立場であると、現時点では分析しています。
(加藤 嘉一)
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