原油価格上昇で乱高下!相場復調の鍵は米物価指標と日本政府の為替介入の有無!?
トウシル / 2024年4月8日 13時40分
原油価格上昇で乱高下!相場復調の鍵は米物価指標と日本政府の為替介入の有無!?
米国株は先週4月4日(木)、突如、2024年最大級の下げに見舞われました。ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は前日比1.35%下落し、今年最大の下落幅となりました。機関投資家が運用指針にするS&P500種指数も1.23%下落しました。
日経平均株価(225種)の翌5日(金)の下落幅も一時1,000円寸前に達し、終値では前日比781円も急落。新年度の4月に入って不安定な動きが続いていましたが、1週間で1,377円(3.4%)安の3万8,992円まで下落しました。
米国株急落の原因は複数あります。
一つは4日(木)の急落直前、米ミネアポリス地区連邦準備銀行のカシュカリ総裁がインフレ率が鈍化しない場合、2024年中の利下げがない可能性に言及としたこと。2024年中に2~3度の利下げを想定していた投資家に冷や水を浴びせました。
1日(月)にシリアのイラン大使館がイスラエルによるとみられる空爆を受けた事件を受け、イスラエルのネタニヤフ首相が、もしイランの報復で危害を受ければ反撃すると発言したことも急落に拍車をかけたようです。
中東の紛争がイスラエルとイランの全面戦争に発展するリスクが高まったことを受け、原油価格が上昇。
米国産WTI原油(米国の西テキサス地域で産出される良質な原油)は約5カ月ぶりに1バレル=87ドル台まで値上がりしました。
地政学的リスクの台頭で原油価格が高騰し、米国の物価高が再び加速する恐れが出てきたことが市場心理を悪化させました。
5日(金)夜には、米雇用統計が発表され、3月の農業部門以外の新規雇用者数は30.3万人の増加と予想を大幅に超えました。
本来なら強い雇用は物価高が鈍化しない要因になるため、株価にはネガティブのはず。
しかし、3月の米国の平均時給は予想通りの前月比0.3%の伸びに収まり、前年同月比では2月の4.3%増から4.1%増に鈍化したこともあって、米国株は勢いよく反転上昇。
物価の高止まりで、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)の利下げが2024年後半に先送りされても、景気も雇用も堅調なら問題ないという楽観論が台頭し、5日(金)のS&P500は前日比1.11%高と前日の下げの大半を奪還しました。
8日(月)の日経平均株価は5日の米国株反転上昇を受け、先週大きく下げた半導体関連株などを中心に切り返し、終値は前週末比354円高の3万9,347円まで戻しています。
果たして、先週後半の急落は単なる上昇相場における一時的な調整にすぎず、今週は新年度の新規資金流入で日本株の上昇が続くのか。
それとも地政学的リスクの高止まりを受けて不安定な動きに戻るのか。運命の分かれ目となる1週間になりそうです。
先週:地政学的リスクと米利下げ年内なし発言で最大級の急落!
日経平均が前週比3.4%安、重厚長大産業や内需株の影響力が強いTOPIX(東証株価指数)が前週比2.4%安と、先週の日本株は2024年最大の下げに見舞われました。
業種別で週間の下落率が大きかったのは、これまで上昇相場をけん引してきた電気機器や輸送用機器、精密機器セクターでした。
半導体関連株筆頭の東京エレクトロン(8035)は前週比5.8%安。
AI(人工知能)相場の主役である米国半導体メーカー・エヌビディア(NVDA)との取引が多い半導体検査装置のアドバンテスト(6857)は前週比11.4%安と大きく下げました。
東京、大阪証券取引所が4日(木)発表した3月第4週(25~29日)の投資部門別売買・取引状況によると、海外投資家は現物株と先物合わせて1兆1,800億円の売り越しでした。
外国人売りの流れが4月第1週も続いたと思われることが、日本株最大の下げ要因でしょう。
むろん、調整相場の中でも上がる株はあるもの。
アパレル大手のオンワードホールディングス(8016)は4日(木)に2025年2月期の増収増益と4円増配予定(年間配当予定24円)を発表して、5日(金)、前日比15.6%高と逆行高。
同じく4日(木)に2024年3月期の増配や今後の自社株買いを発表したスルガ銀行(8358)が1週間で前週比8.3%高となるなど、積極的な株主還元策の発表は全体相場が悪化しているときでも株価上昇の切り札になるようです。
世界的な原油高で潤う資源会社のINPEX(1605)が前週比5.5%上昇するなど、同社の属する鉱業セクターが週間の業種別ランキングでも突出した上昇率トップに躍り出ました。
一方、先週の米国では1日(月)、ISM(全米供給管理協会)集計の3月製造業景況感指数が18カ月ぶりに好不況の境目となる50を超えるまで改善。
仕入れ価格指数も上昇したため、物価の高止まりを嫌って米国債が売られ、長期金利の指標となる10年国債の利回りが4.3%台まで上昇。株価は下落しました。
2日(火)発表の米国2月雇用動態調査(JOLTS)の求人件数が前月を上回ると、長期金利はさらに4.4%台まで上昇し、米国株は続落。
そして、4日(木)に前述したFRB高官の年内利下げなし発言や地政学的リスクの高まりで急落。翌5日(金)の好調な雇用統計を受けての反転上昇と、非常に不安定な乱高下に見舞われることになりました。
5日(金)に米国株が上昇に転じたのはおそらく、3月雇用統計の中でも平均時給が予想通りの落ち着いた伸びだったため、賃金上昇による物価高再燃はない、という楽観論が台頭したせいだと思われます。
しかし、同じ5日(金)にはFRBのボウマン理事が、インフレ再加速なら利上げする必要もあるといった趣旨の発言を行っています。
今後、原油価格の上昇などで本当に米国の物価高が再加速して、FRBが利下げでなく利上げに踏み切らざるをえない状況になった場合、上昇し過ぎた日米の株価がさらに急落する恐れもあります。
むろん、米国株が悪材料を無視してすぐ上昇に転じたわけですから、先週の乱高下は上昇相場の一時的な調整にすぎない可能性のほうが高いでしょう。
今週:強い米雇用統計受け上昇再開?米3月物価指標やFOMC議事録、日本政府の為替介入に警戒
今週は米国で物価指標の発表が相次ぐほか、日本では製品・サービスの値上げで業績好調な小売り・流通企業に多い2024年2月期の決算発表が相次ぎます。
米国では10日(水)に、3月のCPI(消費者物価指数)が発表になります。
もし、3月CPIが予想の前年同期比3.5%の伸びを超える高い上昇率になってしまうと、再び株価急落の引き金になるかもしれません。
同日には3月20~21日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録も公開されます。同FOMCでは2024年に年3回の利下げを行う見通しが維持されましたが、その際の議論内容が明らかになります。
翌11日(木)には米国の3月PPI(卸売物価指数)も発表。
前回の2月PPIは、ガソリン価格の上昇で予想の倍となる前月比0.6%も上昇して株安につながっただけあり、今回も大幅上昇になると、いよいよ米国の物価高再燃が本格的な相場の懸念材料になりそうです。
一方、国内では、10日(水)に国内2大流通企業のセブン&アイ・ホールディングス(3382)とイオン(8267)、12日(金)にはインバウンド需要に沸く百貨店大手の高島屋(8233)など、多くの内需株が決算発表を行います。
大幅増配や大規模自社株買い発表による株価の急騰劇が今週もみられることに期待が高まります。
12日(金)には米国でも2024年1-3月期の決算発表が始動。
金融機関大手のJPモルガン・チェース(JPM)やシティグループ(C)が先陣を切って、決算発表を行います。
先週5日(金)のニューヨーク為替市場では、1ドル=151円60銭台まで円安が進みました。
日本の中央銀行・日本銀行の植田和男総裁は5日(金)の朝日新聞のインタビューで、物価に影響するなら為替も利上げ材料という趣旨の発言を行い、過度な円安をけん制。
為替市場では、1ドル=152円が政府・日銀の為替介入ラインといった声も聞かれます。
米国では長期金利が4.4%台まで上昇しており、日米金利差の拡大で今週も円安トレンドがさらに続く可能性もあります。
10日(水)に岸田文雄首相が訪米して日米首脳会談が開かれることもあり、それ以前の為替介入は少し考えにくいものの、財務省・日銀高官の口先介入に効果がない場合、政府・日銀が実際の為替介入に踏み切る可能性に警戒が必要でしょう。
今回の上昇相場の起点は日経平均が月間で前月比8.5%上昇した2023年11月。2024年4月は上昇相場の節目になりやすい6カ月目に入る点も不安要素かもしれません。
ただ例年、4月前半は新年度の新規資金流入で株価が上昇しやすい時期。
2024年は3月までに急上昇し過ぎたこともあって4月早々、不安定な相場展開になりましたが、今週は落ち着いた上昇相場の再来に期待したいところです。
(トウシル編集チーム)
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