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始めたばかりのNISA、「下落相場に焦って売る」は要注意!

トウシル / 2024年4月23日 7時30分

始めたばかりのNISA、「下落相場に焦って売る」は要注意!

始めたばかりのNISA、「下落相場に焦って売る」は要注意!

誰もがNISAを始めるのは崩壊間近?

 ネットで面白い反応を見かけました。株価の上昇に伴ってNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の魅力が高まっているというニュース報道について「主婦も靴磨き少年もNISAをするようになった」というコメントです。

 意味が分からない、という人に簡単に補足をすると、ニューヨークで1929年に株価大暴落が起きた際、ウォール街の路上で靴磨きをする少年まで株について熱く語っている姿を見て、バブルの崩壊を確信して急落前に売り抜けた投資家がいた、というエピソードがあります。

 これをもじって、今まで投資に興味を持たなかった主婦もNISA口座を開設するようになっては、もはやバブル崩壊も間近、という皮肉を込めたコメントが「主婦も靴磨きもNISA口座開設」ということになります。

 テレビのニュースで、いかにも投資の理解が不足しているような方々が「ようやくNISA始められたの!」なんてインタビューに喜んで答えている様子は、確かに1929年のウォール街と被って見えます。

 NISAブームが度を超すと、本当にバブルが崩壊するのでしょうか。

危ないのは、下落リスクを理解せずにNISAを始めた投資家

 悲観論というのは人気のコンテンツです。また悲観論を述べる方が頭が良く見えるという不思議な現象も起きます(試しに同一テーマについて楽観論と悲観論を1つずつ述べてみるといい)。

 しかし、NISA口座の関心の高まりをバブル崩壊の予兆としてひもづけるのは早計に過ぎます。仮に短期的な下落が生じたとしても34年前のような急落と長期低迷が起きるとは考えにくいからです(ここで「2024年の株価はバブルか」の論考をするのは他の方々に任せます。トウシル内で検索してみてください)。

 NISAが危ない、株価が危ない、という警句はいかにももっともらしく響きますが、主婦がNISA口座を開設したということは、投資やNISAに対する関心が広まってきたことを意味していますが、それで市場が大きく崩壊するほどのゆがみを生み出すわけではありません。

 心配は確かにあります。雑誌の特集やネットの記事をさらっと読んだだけで、NISA口座を開設しているその個人についてです。

 こういう人のメンタリティは「なんかすごく株価が上がっているらしいし、自分もやらないと損かも」「数カ月で100万円を200万円に増やした人もいるらしいし、自分も乗り遅れてしまう」という感じです。このような投資や市場に対する無理解、そして投機的なものとして株式市場を理解しているスタンスでは、確かに危ういものがあります。

 こういう人は投資商品の下落リスクについてきちんと理解していませんので、ちょっと下がればパニックになり、損失確定をしてしまうこともあるでしょう。

 私は株式市場の崩壊については心配していませんが、こうした個人が現れることについて大いに心配しています。

短期の値下がり、「焦って売る」に注意!NISAは長期で構える

 2024年から恒久化されたNISA制度は、今始まったばかりでこれからずっと続いていきます。

 そもそも最短コースで入金(年360万円)しても上限に達するのには5年かかります。ほとんどの現役世代にとっては、そのような最短コースは不可能で、数十年をかけて1,800万円の上限を活用するイメージとなるはずです。

 だとすれば、1月に購入した株を4月になったくらいで売ってしまうのはあまりにも気が早すぎます。値上がり益を利益確定するときも、急いでNISA枠を崩す必要はなく、5年より先をイメージして、今は仕込みの時期だと考えたいところです。

 また、一時的な元本割れがあったとき、焦って売る判断をするにもまだ早すぎると思います。リスクのある投資ですから短期的な上下動はあり得ますし、もしかすると数年くらいの低迷も考えられます。しかし、配当も含めて長期的な経済成長の可能性は、投資をプラスで終わらせる方に分があります。

 とにかく、長期で構えて、「急いては事を仕損じる」とならないようにしたいところです。

最大のハードルは、口座を開設して最初の購入を行うこと

 投資の最大のハードル、それは投資信託に関する知識や個別銘柄についての豊富な情報ではありません。売買タイミングとかポートフォリオのリスクマネジメントでもありません。もっとも大きなハードルは

「最初に口座開設をし、最初の購入を行うこと」

です。

 すでに飛び越えてしまっている読者にとっては「そんなちっぽけなこと」と思うかもしれませんが、実は投資未経験者、口座未開設者にとっては巨大なハードルなのです。そしてこのハードルを乗り越えた人と、投資をしないままでいる人との間には大きな差が出ます。

 会社員の場合、3~4人に1人くらいの割合で、会社の確定拠出年金をきっかけに投資デビューするチャンスがあります。これは半強制的なので、ハードルを一気に飛び越える力となっています。社内研修で投資教育があるのもいいことです。

 しかし、専業主婦が投資デビューをするためには情報を得て、自分なりに金融機関を選択し、かつ口座開設手続きをするというハードルが待ち構えています。

 今のマーケットの好況と、新NISAが話題となっていることが、そうしたハードルを飛び越える原動力となっているなら、これほど素晴らしいことはありません。

 主婦が投資デビュー、いいじゃないですか。国民の多くが投資を通じて資産形成の選択肢を増やせる時代がやってきたのです。

 願わくば、投機ではなく、投資の考え方で中長期的に資産運用を行えるような知識を合わせて身につけ、5年、10年と続けていく投資家に成長していただきたいと思います。

(山崎 俊輔)

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