亡くなった方の準確定申告・これだけは知っておきたい注意点
トウシル / 2024年4月26日 11時0分
亡くなった方の準確定申告・これだけは知っておきたい注意点
不動産所得や事業所得があれば通常の確定申告に準じて申告が必要
まず前回のおさらいです。
準確定申告の期限は、「相続の開始があったことを知った日」から4カ月以内となっています。ただし、1月1日~3月15日の間に亡くなった場合は、前年分、当年分とも、準確定申告書の提出は「相続の開始があったことを知った日」から4カ月以内となります。
亡くなった方(以後「被相続人」と表記します)が事業所得、不動産所得を有している場合、通常の確定申告と同様、決算書を作成して所得を計算する必要があります。青色申告の方であれば、準確定申告も青色申告ができます。
また、給与所得や年金の所得(雑所得)については、死亡時までの源泉徴収票を発行してもらい、それに基づき申告します。
なお、ご高齢の方の場合、収入が年金のみで、準確定申告しても税金が発生せず、かつ源泉徴収されている税額もないというケースが多いです。この場合は準確定申告をしても税額の納付も、還付もありませんから申告は不要です。
配当金や株式の売却損益は?
特定口座を開設している方であれば、年明けになると「特定口座年間取引報告書」が交付されます。ここに記されている内容を基に確定申告が必要であれば行う、という流れです。
しかし相続が発生した場合、証券会社に被相続人の死亡日までの特定口座年間取引報告書の発行を依頼しても、すぐには発行してくれません。
相続手続きが終了し、被相続人の口座が閉鎖されてからでないと特定口座年間取引報告書は発行できないからです。
全ての証券会社につき調べているわけではないので詳細は分かりませんが、特定口座年間取引報告書を発行してもらえなかった、という話も聞きます。
もし相続が発生したのが年末近くであれば、結果的に証券会社側が通常の場合と同様、被相続人の特定口座年間取引報告書を発行してくれることになるため、それを使うことも物理的には可能です。
ただ、もし被相続人が亡くなった後に配当金の入金があったような場合は、それは本来相続人が受け取るべきものなのに被相続人が受け取ったとして報告書が作成されますから、誤った情報を基に準確定申告をすることになってしまいます。
還付になるのであれば情報がそろってからの準確定申告も一策
上場会社の配当金や、源泉徴収ありの特定口座で生じた売却益は確定申告が不要ですから、準確定申告の際にそれらを申告しなくても問題にはなりません。
ただ、他の所得が少なく配当金を確定申告すると税額が還付されたり、過去から繰り越した売却損があって、売却益と相殺するために確定申告すれば還付を受けられるケースもあると思います。
このとき、配当金や売却益につき何も申告せずに準確定申告をしてしまうと、後日配当金や売却益につき更正の請求の手続きにより還付を受けることができなくなってしまう可能性があります。
従って、配当金や売却益を確定申告することで税額が還付になる可能性が高いのであれば、慌てて4カ月以内に準確定申告をしなくとも、申告に必要な情報がしっかりそろってから後日準確定申告をするのも1つの選択肢です。
(ケースにより有利、不利が考えられますので詳細は税務署や税理士などにご相談の上決定、実行してください)
医療費控除はどうなるの?
準確定申告でよく出てくるのが「医療費控除」です。特に被相続人がお亡くなりになる前は入院していることが多く、医療費の額も大きくなるため、医療費控除により税額の還付を受けられるケースはよくあります。
この医療費控除については、医療費を支払った日が「お亡くなりになった日まで」と「お亡くなりになった日より後」のいずれであるかにより扱いが異なります。
被相続人がお亡くなりになった日までに、被相続人ご自身がお支払いになった医療費については、準確定申告の際に医療費控除の対象となります。
もし、被相続人と生計を一にする親族が被相続人の医療費をお支払いしている場合は、当該親族の方が確定申告にて医療費控除を受けられます。
被相続人がお亡くなりになった日より後に支払われた医療費は、そもそも被相続人ご自身はお支払いできません。被相続人と生計を一にする親族がお支払いになった場合、その方の確定申告にて医療費控除の対象となります。
ちなみに、被相続人に係る医療費を、被相続人がお亡くなりになった後に相続人の方がお支払いされた場合、相続税において債務控除として、財産から差し引くことができます。
相続が発生した場合、相続税と所得税がごっちゃになってしまうことがよくありますので注意してください。
被相続人が受け取るはずだった年金の扱い
被相続人がお亡くなりになった後、相続人が公的年金や企業年金を受け取ることがあります。これは、被相続人が存命であれば受け取れるはずだったもので、「未支給年金」と呼ばれます。年金は後払いなので、通常は未支給年金が発生します。
この未支給年金は、被相続人が受け取るはずだったものなので、準確定申告で所得に加算しなければいけない、と思われがちですが、これは相続人の所得となります。
つまり、未支給年金を受け取った相続人の一時所得として、相続人が確定申告をする必要があるということです。
ただし、一時所得は特別控除50万円があるため、他に一時所得がないのであれば、受け取った未支給年金が50万円以内なら事実上課税されないことになります。
(足立 武志)
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