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積立投資家は「価格低迷」もお好き?

トウシル / 2024年5月7日 7時30分

積立投資家は「価格低迷」もお好き?

積立投資家は「価格低迷」もお好き?

積立投資、価格が低迷したらどうなる?

 仮に、以下の価格推移を演じる商品があったとします。暴騰パターンと暴落パターン、低迷パターン、50年後にどのパターンの収益が大きくなるでしょうか。条件は、「積立」で取引すること(毎月1万円)、手数料は買付時に1.65%(税込)、分配金・配当なし、再投資せず、です。

図:積立シミュレーション(3パターンの価格推移) 単位:円/グラム

出所:国内大手地金商のデータをもとに筆者作成

 暴騰パターンは、20年かけて5,000円上昇して1.5倍になり、次の20年はこの高値水準を維持。そして最後の10年間で3,000円上昇し、1万8,000円という100年前(1974年4月)の10倍以上の価格で取引を終えるパターンです。

 暴落パターンは、20年かけて半値まで暴落します。次の20年はその安値水準で低迷し、最後の10年間で3,000円上昇するも、積立開始時よりも2,000円も安くなって取引を終えるパターンです。積立開始時の価格を一度も上回りません。

 低迷パターンは、そもそも1,000円からスタートします。40年間長期低迷を強いられたあと、最後の10年間でようやく上昇することが許され、4,000円で取引を終えるパターンです。さて、どのパターンの収益が大きくなるのでしょうか。条件は、「積立」で取引をすることです。

「低迷」が運用を好転させる場合あり

 以下は、3つのパターンそれぞれの累積資産額の推移です。

図:積立シミュレーション(2パターンの累積資産額) 単位:100万円

出所:筆者作成

 最終的な累積資産額(保有数量×価格)は、暴騰パターンがおよそ750万円、暴落パターンがおよそ780万円、低迷パターンがおよそ2,100万円、でした。冒頭の問い「暴騰パターンと暴落パターン、低迷パターン、50年後にどのパターンの収益が大きくなるでしょうか」の答えは、圧倒的な差をつけて「低迷パターン」でした。

 1万円を600カ月(50年間)、投資し続けるため、投資金の合計は600万円です。このため投資金に対する最終的な資産の額は、暴騰パターンが1.26倍、暴落パターンが1.31倍、低迷パターンが3.51倍でした。

 この結果を見て、暴騰パターンが暴落パターンに負けたことは意外だが、それ以上に意外なのは低迷パターンが圧倒的に勝ったことがその何倍も意外だ、という感想を抱かれた方は少なくないと思います。

 なぜこのような結果が出たのでしょうか。何がきっかけで、価格低迷にもかかわらずこのような大きな利益が生まれたのでしょうか。

「保有数量」は価格推移と同じくらい重要

 低迷パターンが圧勝したのは、この取引が「積立」だからです。

図:積立シミュレーション(3パターンの累積保有数量) 単位:グラム

出所:筆者作成

 多くの場合、大まかな収益の計算は「保有数量×価格」で行います。積立の場合、毎月一定額を購入に充てるため、価格が変動すると購入する数量が変動します。

 上の図は、暴騰パターン、暴落パターン、低迷パターンの累積保有数量の推移です。最終的な保有数量は、暴騰パターンが421グラム(貴金属の積立を想定しているため、数量の単位はグラム)、暴落パターンが984グラム、低迷パターンが5,262グラムでした。低迷パターンは、暴騰パターンの13倍、暴落パターンの5倍になりました。

 低迷パターンの価格は、取引開始から40年間、1,000円で低迷し続けました(2024年3月から2064年2月)。低迷パターンはこれを利用して累積保有数量を効率的に増やし、その増えた保有数量が決め手となり、資産の額で他を圧倒しました。

価格低迷は月々の購入数量を増やす大好機

 以下は暴騰パターン、暴落パターン、低迷パターンの月々の購入数量の推移です。低迷パターンは、最後の10年間こそ価格が上昇したため月々の購入数量は減少したものの、価格が長期で低迷した取引開始から40年間は、月々の購入数量は高止まりしました。暴騰パターンの4.5倍もの購入があったタイミングもありました。

図:積立シミュレーション(3パターンの月々の購入数量) 単位:グラム

出所:筆者作成

 このシミュレーションは、積立投資では「価格低迷が月々の購入数量をいかに増やしてくれるか」を改めて教えてくれています。

 さらに言えば、価格が「ゼロ円」に近づけば近づくほど、月々の購入数量は増加しやすくなります。仮に月々の投資額が9,835円(1万円の投資金で購入時の手数料1.65%を考慮)だったとして、価格が8,500円から6,500円に下がると、購入できる月々の数量は0.3グラム増えます。

図:積立シミュレーション(価格がゼロ円に接近した場合の月々の購入数量)

出所:筆者作成

 価格が6,500円から4,500円に下がると(同じく2,000円下落)、同0.6グラム増えます。4,500円が2,500円に下がると1.7グラム増、2,500円が500円に下がると15.7グラム増加します。低迷パターンの月々の購入数量が常に高水準だったことは、こうした曲線的な傾向の上で起きたと言えます。

積立効率化のコツ「低迷銘柄を探すこと」

 積立取引においては、「価格が安い(ゼロ付近での低迷ならなお良い)=保有数量が増えやすい」と言えるでしょう。保有数量が効率的に増えれば、それだけ資産の額(保有数量×価格)を大きくしやすくなります。

 だからこそ、価格が長期低迷を強いられても大きな利益が出るのです。逆に暴騰してしまうと、あれだけの利益を生むことはできません。

図:積立投資の収益イメージと効率化させるための2つの条件

出所:筆者作成

 本レポートで述べたシミュレーションをもとに考えれば、積立投資に適した銘柄の特徴は、「そもそも低迷していること」だと言えます。そして、暴騰パターンのような史上最高値を維持・更新し続ける銘柄は、積立投資には向いていないと言えます。

 株価がそもそも安い銘柄を保有することをためらう方は多いと思います。ですが、積立投資であれば、目の前で起きている低迷は保有数量を普段以上に増やす好機だと言えます。低迷しているときこそ、積立投資の本質を再確認することをお勧めします。

 筆者は、積立投資家にとって「低迷は利用するもの」だと考えています。ただし、留意点があります。数十年後に価格が上昇する可能性がなければダメです。

 低迷時に効率よく増やした数量を利益に変えるためには、最終的には価格上昇が必要です。まとめると、「そもそも低迷していること」そして「数十年後に価格上昇が起き得ること」が、積立投資に適した銘柄の特徴だと言えるでしょう。

 具体的な銘柄は「プラチナ」です。プラチナは長期視点で低迷状態にありますが、超長期視点で、水素社会で活躍する可能性があります(グリーン水素の精製装置や燃料電池車の発電装置の電極部分で活躍できる)。

 また、風評被害とも言われているフォルクスワーゲン問題発覚後の需要減退の思惑から解放されつつあることも、長期視点の需要増加観測を強めています(詳細は「相場の「横揺れ」対策にはプラチナを」をご参照ください)。

 プラチナ価格は、以下のように「低迷」しています。今はまだダメかもしれませんが、筆者は長期視点のプラチナ価格の反発に期待をしています。積立投資を効率化する条件(そもそも低迷していること、数十年後に価格上昇が起き得ること)を満たすプラチナに長期視点の期待を寄せてみては、いかがでしょうか。

図:国内大手地金商金(ゴールド)・プラチナ価格(税込) 単位:円/グラム

出所:国内大手地金商のデータをもとに筆者作成

[参考]積立ができる貴金属関連の投資商品例

純金積立(当社ではクレジットカード決済で購入可能)

純金積立・スポット購入

投資信託(当社ではクレジットカード決済、楽天ポイントで購入可能。以下はNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)成長投資枠対応)

ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
三菱UFJ 純金ファンド
ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし)

関連ETF(上場投資信託)(NISA成長投資枠対応。かぶツミを利用することで積立が可能)

SPDRゴールド・シェア(1326)
NF金価格連動型上場投資信託(1328)
純金上場信託(金の果実)(1540)
NN金先物ダブルブルETN(2036)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
iシェアーズ ゴールド・トラスト(IAU)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)

(吉田 哲)

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