米雇用市場オーバーヒートでFRB「再利上げ」も 円安はもう止まらないのか? 4月米雇用統計 詳細レポート
トウシル / 2024年5月1日 14時17分
米雇用市場オーバーヒートでFRB「再利上げ」も 円安はもう止まらないのか? 4月米雇用統計 詳細レポート
4月雇用統計プレビュー
BLS(米労働省労働統計局)が5月2日に発表する4月の雇用統計では、NFP(非農業部門雇用者数)の増加は、前月より約5万人少ない25.0万人増の予想となっています。失業率は前月と変わらず3.8%で、平均労働賃金は前月比0.3%増(前月0.3%増)、前年比4.0%増(前月+4.1%増)の予想です。
もっとも雇用市場が弱まっている兆候はありません。就業者は今年になって3カ月間で80万人以上も増え、ニューヨーク市に限っても2020年の新型コロナ時の最悪期から仕事が190万も増えています。
FRB(米連邦準備制度理事会)は、20万人前後が雇用者の増加数の適正水準と考えているようですが、その水準は昨年の12月から一度も下回っていません。米雇用市場の過熱状態はまだまだ続いていることになります。
前月の3月雇用統計では、NFPの増加数が、30.3万人増と予想(20.5万人)を10万人近く上回る大幅な伸びとなりました。ただ注意しなくてはいけないのは、最近の雇用統計は予想と発表値、発表値と修正値の差がかなり開く傾向があることです。事前予想を超える強い数字が発表されても、翌月には大幅に下方修正される可能性があります。
雇用統計に限らず、コロナ禍後に多くの米経済データに見られるのが、冬と夏の季節変動の振幅の減少、いわゆる季節性の喪失という構造変化です。大きな誤差が生じる原因は、BLSの季節調整モデルが新型コロナ後の雇用市場の構造変化に十分に対応していないことにあるようです。
リスクは「利下げしない」から「利上げする」へ
雇用市場の強さは米経済の強さであり、FRBにとっては「利下げする必要」が小さくなったということです。FRBの金融政策立案における指導者的立場にあるウォラー理事は、「利下げを多少待つリスクは、性急な利下げによるインフレ再燃よりもよほど小さい」と述べています。
昨年11月のウォラー理事は「インフレ率がさらに数ヵ月間低下し続ければ、政策金利を引き下げる根拠となる」と発言して、これが昨年末のドル売りの引き金となりました。しかし、米国のインフレ率は期待に反して下げ止まり、ウォラー理事が利下げに慎重な見方に変わったことは、パウエルFRB議長の考えにも影響を与えているでしょう。
現時点では、FRBは年内「利下げしない」可能性はあるとはいえ、「再利上げする」との予想はまだ少数です。ウォラー理事もタカ派発言をしながらも、今年中の利下げは支持しています。
しかし、今後の雇用統計の結果によっては「FRB利上げ」確率が高まることも考えられます。その場合、頑固に緩和政策を続ける日本銀行との政策の違いがより鮮明になり円安はさらに進むことになるでしょう。
セルフサービスと平均賃金の関係
FRBが考える雇用市場の問題とは、雇用者数が増えることではなく、求人数に対して雇用者数が足りないことです。企業はより高い賃金を払う必要が生じ、そのコストは最終的に価格に転嫁されてインフレ率が下がらないことです。
最近は、人手不足問題の軽減手段としてセルフレジが急速に普及しています。セルフレジとは、自分の買い物を自分でスキャンしてレジに読み取らせて会計をするものですが、感染対策にも良いとして、日本でもコロナ禍の時からコンビニなどで積極的に導入されています。
レストランなどの飲食店では、水を自分で運ぶセルフサービスは以前からありましたが、最近では料理も客が自分のテーブルに運ぶシステムが増えています。さらに配膳と会計だけではなく、料理まで客につくらせる店も現れています。
セルフサービスは客側にとっても気楽な面がありますが、労働という観点でいえば、客が店の従業員の仕事をタダで代行しているということになります。客がセルフサービスを利用すればするほど、従業員の実質平均時給は上がることになります。
米労働省が30日に発表した2024年第1四半期の雇用コスト指数(ECI)は前期比1.2%上昇し、前回の0.9%上昇から大幅に加速しました。ECIとは企業が実際に負担する雇用コストを示した指数で、全体の7割を給与が占めています。
(荒地 潤)
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