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半減期通過、ここからが本番?~5月のビットコイン見通し~

トウシル / 2024年5月2日 10時0分

半減期通過、ここからが本番?~5月のビットコイン見通し~

半減期通過、ここからが本番?~5月のビットコイン見通し~

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の松田 康生が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
5月のビットコイン見通し~半減期通過、ここからが本番?

4月のビットコインイベント

NEW! 4月4日 ビットコインキャッシュ(BCH)半減期
NEW! 4月20日 BTC半減期

*2024年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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材料面から見た5月見通し

4月の振り返り

4月のビットコイン価格(円)とイベント

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 4月のBTC相場は上下に大きく振れながらも横ばいレンジでの取引。円建てでは1,100万円と史上最高値を更新したが、ドルで見ると5万9,000~7万3,000ドルの3月のレンジ内での取引に終始した。

Bloomberg・FARSIDE INVESTORSから楽天ウォレット作成

ETFフロー

 先月「1月以降のBTCの上昇はほぼETF(上場投資信託)フローで説明できる」と申し上げた。1月11日のローンチ直後に4万9,000ドルでピークを付けるとSell the Fact(噂で買って事実で売れ)気味に失速、ETFフローがマイナスとなる中、3万9,000ドル割れまで値を下げた。

 しかし2月8日辺りからETFフローが急増、相場を大きく上昇させると、3月5日に2021年11月に付けた史上最高値6万9,000ドルを更新、14日に7万3,000ドル台半ばまで上値を伸ばした。その後、徐々にフローは減少し始めると、ETFフローに一喜一憂する展開が続いた。

FF先物利下げ織り込み回数

Bloombergから楽天ウォレット作成

利下げ期待

 この様にETFフローに陰りが見え始めると他の要因の影響も目立ち始めた。まずFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ期待の後退。月初のISM(米サプライマネジメント協会)製造業が景況感の分かれ目となる50を上回り、5日の雇用統計では非農業部門雇用者数が30万人超と予想を大きく上回った。

 とどめは10日のCPI(消費者物価指数)、これがヘッドライン・コアともに予想を上回り、6月利下げ観測がほぼ消滅、7月利下げ織り込みも5割を割ってきた。これが相場の上値を重くした。

中東情勢

 続いて中東情勢の悪化が大きな押し下げ要因となった。4月1日イスラエルがシリア国内にあるイラン大使館を空爆、さらに2日にはガザ地区で食糧支援を行っていたNGOも爆撃した。これに怒ったUAEが同国との外交関係を解消するとの懸念からBTC相場も一時値を下げた。

 その後、半減期への期待感もありBTCは7万2,000ドル台に値を伸ばしたが、イランがイスラエルに反撃する見通しだとの懸念から急落、実際にイランからの攻撃が始まると6万4,000ドル近辺まで値を下げた。

 しかし、事前の通告とイスラエルと欧米の迎撃により被害が限定的に終わると、報復の連鎖は回避されるとの見方からBTCは6万7,000ドル近辺まで持ち直したが、同国軍幹部が反撃を明言すると6万2,000ドル台に、仏独の説得にもかかわらず同国首相が反撃をほのめかすと5万9,000ドル台に値を下げた。

 国際社会の説得によりイスラエルの過越祭の間(22~29日)は反撃はないとの観測が出回ったが、4月19日同祭に入る前にイスラエルがイラン中部の空軍基地を攻撃、BTCは再び5万9,000ドル台に値を落とした。しかしイランが核施設に被害はなかったと報じ、再反撃の姿勢を見せなかったことからリスクオンの流れとなり、6万7,000ドル台までBTCは切り返した。

 市場が最も恐れたのは、紛争が拡大、イスラエルVSイランそして背後に控える米欧VS中ロと第5次中東戦争や第3次世界大戦に飛び火していくことだった。中東情勢はいまだに予断を許さないが、そうした最悪の事態は避けられそうだという楽観的な見方が広がっている。

半減期

 最後に半減期の影響はどうか。半減期による供給減はBTCの上昇要因となるが、それは事前に分かっていることで、「半減期を前に期待先行で上昇、半減期前後にSell the Fact気味に失速する…」が従来からのパターンだった。実際、ひと足先に4月5日に半減期を迎えたBCHも半減期の2週間前から急上昇、半減期の3日前に失速した。

 ところがそのBCHが半減期後に上昇に転じたことでBTCにも買い安心感が広がった。20日の半減期の前はそのポジション調整に加え中東情勢悪化による売りが殺到、大きく値を下げたが、そのせいか半減期を超えても目立った売りは見られず、むしろ買い安心感が広がった。

 加えて、マイナー最大手マラソン社のCEOが同社の半減期後の採算ラインが4万6,000ドルと明らかにし、また通常なら下がるはずのハッシュレートが半減期後に史上最高値を更新したことにより、マイナーの混乱は限定的との見方が広がった。

4つの材料

 このように、ETF一辺倒だった相場から、ETFフロー、金融政策、中東情勢、半減期の影響などの各材料がバランスよく綱引きをした結果、ほぼ横ばい推移となった。5月の相場については、この4つの要因がどうなるかである程度展望できそうだ。

各種資料より楽天ウォレット作成

ETFフロー

 まずETFのフローだがこれは目に見えて減速している。71営業日続いたブラックロックの現物ビットコインETF 「IBIT」の流入も途絶えた。ただ、これは全米のETFの中で史上10位となる快挙でフローがゼロであるのが通常だ。

 すなわち、ETF市場での売りと買いの数がある程度バランスしていれば、もしくは市場参加者がBTC相場の変動に沿って取引していれば、こうしたファンドからの現物市場への影響は出ない。

 しかし、需給バランスが崩れ、ETF価格と保有するBTCの理論価格との乖離(かいり)が生じた際にマーケットメーカーが裁定取引を行って初めて資金流出入が生じる。従って、ETFからのフローが下火になったからといって売り材料となったわけではなく、悲観視する必要はない。

 一方で、複数のETF業者からここまでの買いの主体は個人が中心だったと報告されており、今後、機関投資家のETF購入が予想される。また、4月30日には香港でBTCとETH(イーサリアム)の現物ETFが登場。英国や豪州、韓国などでも認める方向で動いていると報じられている。

 ただ、今のところ、まだ本格的に需給インパクトを与えるには至っておらず5月の相場に影響を与えるかはやや疑問だ。ただ、そうした期待感が先高感となって相場を下がり難くする効果がありそうだ。

利下げ期待

 次に金融政策だが、これは4月の数字である程度勝負があった形だ。3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)でFRBは年3回の利下げを予想したが、4月に入りCPI、コアPCEデフレーター(米国の個人消費支出)ともに前年同月比で前月を横ばいないし上回り、「インフレ率が低下するので実質金利を一定に保つために名目金利を利下げする」というシナリオが崩れた。

 ただ、既に市場は年内の利下げを1回程度しか織り込んでおらず、この材料による売り圧力は限定的。インフレ動向次第では今後の買い材料となり得るが、足元では低下傾向はみられていない。

楽天ウォレット作成

半減期

 従来より申し上げているとおり、BTC相場は供給要因から4年サイクルを描いている。半減期から1年~1年半後に供給減でバブルを形成、バブルが崩壊して1年前後の冬の時代が到来、大底を付けたのち半減期に向け期待先行で上昇をする。そして半減期を迎えると半年から1年間は期待先行買いの利食い売りやマイナーの投げ売りなどで低迷する。

 今回、半減期を無事通過したことで、この低迷期に入った形だ。とはいえ、マイナーの採算は十分とれている可能性が高く、投げ売りによる下落は避けられそうだが、少なくともあと数カ月は上値が重い展開が続きそうだ。

中東情勢

 最後に中東情勢だが、これは明るい兆しが見えてきた。イランがイスラエルに再報復しなかったことにより報復の応酬が中東戦争・世界大戦に飛び火する懸念は後退した。

 そして、ここに来て火種であるガザ地区についても停戦交渉が進展している。現時点で俎上(そじょう)に上がっているのは6週間程度の停戦でまだ先行きは予断を許さないが、市場が懸念していた紛争の拡大は回避されそうだ。

 とはいえ、この材料はあくまで売り材料が回避されるだけで、積極的にBTCを購入していく材料とはならない。また、米上下院は難航していたイスラエルとウクライナへの950億ドルの軍事支援予算を可決した。これによりウクライナでの戦闘は長期化、不測の事態に陥るリスクは高まった形で、少なくともリスク資産にプラスな話ではない。

 ただ、ここで疑問に思うのは米国のどこにそんな余裕があるのかだ。すなわち、日本円にして15兆円もの資金を他国に大盤振る舞いできる背景に、やはりコロナ後の財政規律の緩みがあるのは間違いない。大事な選挙を前に面倒な財源議論をすっ飛ばして財政ファイナンスに頼ることへのハードルがまひしてしまった。

 実際、第2四半期の新規国債発行額を2,020億ドルから2,430億ドルにあっさり増額した。長い目で見てドルへの信認を失わせ、BTCなどへの逃避需要を増やす動きだ。年後半に第1四半期に見た以上のドル離れのうねりが到来すると考える。

 このように、各材料とも将来の上昇要因となりえ、相場の下支えとなるものの、積極的に買う材料にはなりえず、半減期のアノマリーが示す通り、5月は横ばい圏での推移が予想される。

テクニカル面で見たBTC相場見通し

BTC/USD

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 BTCは2月から3月半ばまでの上昇相場が一服、相場は横ばい圏に入った。3月5日に付けた5万9,000ドルにサポートされ、3月14日に付けた7万4,000ドル手前がレジスタンスとなっている。

 よく見ると上昇相場の後の下降チャネル、いわゆる上昇フラッグが完成しており、将来の上抜けを示唆している。比較的にレアとされている形だが、BTC市場では時折出現する。ただ、今回は比較的大きな上昇フラッグで、上抜けした時の上昇幅も大きそうだが、上抜けまでにそこそこ時間がかかりそうだ。年後半の大幅上昇を示唆しつつも、足元ではもう少しもみ合いそうだ。

ゴールデンウィーク(GW)中のBTC/USD動向(4/28~5/7)

Bloombergから楽天ウォレット作成

 参考までだがGW中(4/28~5/7)のBTCのパフォーマンスを紹介したい。従来より中国勢がいなくなる春節や国慶節期間中はBTCは上昇しやすい。かつてはマイナーの売り圧力が後退するからと説明されてきたが、中国本土内のマイニングが一掃されたはずの割にはそうした傾向が残っている。

 日本のGWをまねて中国が黄金週間を設定、最近では縮小傾向にあるそうだが、同期間中にBTCが上がりやすい傾向はやや残っている。とはいえ過去10年中8年上昇しているが直近2年は下落しており、このアノマリーは参考程度にとどめてほしい。

GW後のBTC/USD動向(5/7~5/31)

Bloombergから楽天ウォレット作成

 ちなみに5月7日以降はどうなるのか見てみると、今度は一転して10年中6年下がっている。こちらも参考までに頭に入れておいてほしい。

BTC月別騰落一覧

Bloombergから楽天ウォレット作成

 恒例の月別のアノマリーで言えば5月は過去13年で7勝6敗と5分に近い。陽線から陰線に転じた次の月に陽線となるか陰線となるかについても目立った偏りも見られない。5月は横ばい推移となる可能性が高そうだ。

5月見通し

 5月の相場はレンジ内での横ばい圏での取引を予想する。半減期を無事通過、すぐに上昇とはいかないが、数カ月後の上昇を示唆するサインはいくつも出ている。ただ5月に関してはまだそこまで強気になれる材料はそろっていないイメージだ。

 月中の動きとしてはGW明けにかけて上昇、その後、失速するのが例年のパターンだが、直近2年には当てはまらず、あくまで参考程度としていただきたい。

 むしろ、レンジ取引のチャンスで、半減期サイクルを信じるならば仕込み時と言えるかもしれない。

2024年 時事イベントと暗号資産イベント(最新順)

3月13日 ETHデンクンアップデート
3月5日 ドル建てで史上最高値更新
2月29日 ブラックロックのIBITが史上最速7週間で100億ドルファンドに
2月19日 週次の暗号資産ファンドへの流入が過去最高の24.5億ドルに
2月15日 円建てで史上最高値更新
1月11日 BTC現物ETF10件ローンチ
1月10日 SEC、ETF承認(日本時間11日)

*マイニングとは:暗号資産(仮想通貨)は一般的にブロックチェーンと呼ばれるネットワーク参加者が誰でも見られる元帳上に取引を記録していきます。そのブロックチェーン上に取引データを記録する際に、膨大な計算を行うことで新たなブロックを生成する暗号を見つけ出し、その報酬としてコインを手に入れる行為のことです。マイニングの主な役割は「暗号資産の新規発行」と「取引の承認」です。

**BlockFiとは:暗号資産融資プラットフォームBlockFi(ブロックファイ)が提供する暗号資産を預かって利息を払うサービス(レンディング)が証券法に違反したと提訴された事件に関する和解として、SEC(米国証券取引委員会)に1億ドル(約115億円)を支払うと発表。

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(松田 康生)

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