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円高でも日経平均は崩れない?景気・企業業績は良好(窪田真之) 

トウシル / 2024年5月7日 7時0分

円高でも日経平均は崩れない?景気・企業業績は良好(窪田真之) 

円高でも日経平均は崩れない?景気・企業業績は良好(窪田真之) 

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
円高でも日経平均は崩れない?景気・企業業績は良好

ドル円為替レートが大荒れ

 ゴールデンウイーク期間中、ドル円為替レートが大荒れとなりました。それが日経平均株価にどういう影響を及ぼすか、私の意見を述べます。

 その前に、まず、ドル円為替レートの動きを振り返ります。ドル円は、ゴールデンウイーク直前の4月29日(月)に一時1ドル160.15円(出所:QUICK)を付けました。34年ぶりの円安水準です。ゴールデンウイーク後半の5月3日(金)には一時151.86円(出所:QUICK)まで円高が急進しました。まず、その背景から説明します。

ドル円為替レート5分ごとの推移:4月23日7時~5月6日10時45分(日本時間)

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

【1】4月26日、日銀金融政策決定会合の結果発表後から円安進む

 4月26日(金)の昼、日本銀行の金融政策決定会合の結果が発表されました。事前の予想通り、利上げはなく現状維持でした。利上げなしは市場予想通りでしたが、そこから1ドル=158円台に円安が加速しました。

 円安進行を抑えるために、日銀から先行きの利上げについて何らかのメッセージが出ると思われていましたが、日銀からタカ派的発言は出ませんでした。植田和男総裁が26日(金)の記者会見で円安が「基調的な物価上昇率に大きな影響は与えていない」と発言したことから、「日銀はハト派」と解釈され、円安が進みました。

【2】29日に1ドル160円超えた直後に、急激な円高進む

 29日(月)、日本が祝日でドル円の取引が少ない中、投機筋から仕掛け的なドル買い(円売り)が入りました。一時1ドル=160.15円(出所:QUICK)まで円安が進みました。

 その直後から急激に円高に反転しました。政府・日銀による替介入があったことはほぼ間違いありませんが、正式な発表はありません。

【3】5月1日、FOMC結果発表後に、急激な円高進む

 5月1日(水)(日本時間では2日(木)の未明)、FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果が発表されました。政策金利であるFF金利は5.25~5.5%に据え置かれました。金利据え置きは市場予想通りでした。市場の注目は、FOMC後にパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が記者会見でどのようなメッセージを出すかに集中しました。

 パウエル議長は、インフレ低下の進展が見られるまで金利を据え置くことを示唆し、市場の早期利下げ期待を否定しました。市場の一部で取りざたされた利上げの可能性は否定したものの、総じてハト派とは取れないトーンでした。

 にもかかわらず、その直後、東京明け方に、急激な円高が進みました。政府・日銀による為替介入第二弾が入ったことは確実ですが、正式な発表はありません。

【4】5月3日、米雇用統計発表直後に、151.86円まで円高進む

 3日(金)、4月の米雇用統計が発表されました。一番注目度が高い非農業部門の雇用者数(前月比)は17.5万人増で、事前の市場予想(24万人増)を下回りました。20万人以上の増加だと米景気は好調と判断されますが、それをわずかに下回りました。失業率は、3.9%で前月より0.1ポイント上昇しました。

 米雇用が強い状態に変わりはありませんが、雇用軟化の兆しが少し見えたことに反応し、一時151.86円(出所:QUICK)まで円高が進みました。

米雇用統計:非農業部門の雇用者増加数(前月比):2021年1月~2024年4月

出所:米労働省

米雇用統計:完全失業率:2021年1月~2024年4月

出所:米労働省

介入で円安は止められるか?

 正式な発表はありませんが、ゴールデンウイークに2度の為替介入があったのはほぼ確実です。介入効果で、いったん円安に歯止めがかかった形です。

 介入は、為替に対して一時的な効果しかなく、介入で為替は変えられないという意見もあります。その通りだと思います。長期的には、為替はファンダメンタルズで決まるフェアバリュー(妥当水準)に収れんしていくと考えられます。

 ただし、為替が投機筋によって行き過ぎた動きをしている時に介入が入るならば、話は別です。介入は、投機筋の行き過ぎた動きを抑えるのに効果的です。ゴールデンウイークの介入が大きな効果を発揮したのは、これまでの円安に投機筋が相当関与していたためと考えられます。

 日米金利差だけを見ると、さらに円安が進むとの見方もありますが、為替は日米金利差だけで決まるものではありません。日米の物価差など、円安が過度に進展したと考えられる現象もみられます。4月に付けた1ドル=160円超えが、投機筋の行き過ぎた動きによるものだとしたら、今回の介入が、円安歯止めの立役者となることもあり得ます。

 今後、為替市場では、二つの動きが交錯すると考えられます。

【1】介入で円安に歯止めがかかったことで、どこまで円高に戻るかを試す動き
【2】介入の効果は一時的と考えて、さらなる円安を試す動き

 介入で円安が止まったか、時間がたたないと明確には判断できません。私は、円安は行き過ぎていたと見ているので、今回の介入が転換点になる可能性はあると考えています。

どうなる日経平均?

 次に、円高が日本株に及ぼす影響を考えます。今年になってから、円安が外国人の買いを呼び込み、日経平均急騰につながってきたことを考えると、円高反転は、日経平均が短期的に下落する要因になると思われます。短期的には、スピード調整のリスクを警戒した方がよいと思います。

 ただし、日本の景気・企業業績が良好であることを考えると、深押しはないと思います。仮に1ドル=140円前後まで円高が進んだとしても、日本の企業業績が良好であることに変わりはないと考えています。

 3月決算の発表が終盤に入りますが、終わったばかりの2024年3月期実績は良好です。新年度(2025年3月期)の業績も、以下の通り、良好と予想しています。

東証プライム3月期決算主要841社の連結純利益(前期比%):2020年3月期~2025年3月期(予想)

出所:予想は楽天証券経済研究所

 日本株は目先、上値が重い展開と考えられますが、日本の景気・企業業績は良好で、さらなる下値リスクは大きくはないと考えています。

 時間分散しながら、割安な日本株を買い増ししていくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えています。

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(窪田 真之)

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