[今週の日経平均&株式市場]目先の相場は「上がりやすい」?~相場環境の微妙な変化には注意~
トウシル / 2024年5月7日 12時0分
[今週の日経平均&株式市場]目先の相場は「上がりやすい」?~相場環境の微妙な変化には注意~
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「【テクニカル分析】今週の株式市場 目先の相場は「上げやすい」?~相場環境の微妙な変化には注意~」
国内大型連休の「谷間」だった先週の株式市場ですが、3営業日の中で迎えた週末5月2日(木)の日経平均株価終値は3万8,236円でした。
週足ベースで2週連続の上昇、前週末終値(3万7,934円)比では302円高となり、ここ2週間の上げ幅は1,168円です。日経平均が大きく下落した4月15日週の下げ幅(2,455円)と比べると、47%ほど値を戻した格好となっています。
今週の相場もこうした流れを引き継いで、株価の戻りを試せるかが焦点となりますが、まずはいつものように、足元の状況から確認していきたいと思います。
先週の日経平均は動きづらい中、株価浮上のきっかけを探る展開
図1 日経平均(日足)とMACDの動き(2024年5月2日時点)
上の図1で先週の日経平均の値動きを振り返ると、国内連休の谷間で3営業日となる中、75日移動平均線と3万8,000円水準が意識される展開となりました。
ローソク足の形状についても、3本とも陽線(終値が始値よりも高い線)で、売りよりも買いの方が優勢だったことや、下段のMACDの傾きもわずかではありますが、上向きを保っており、チャートの第一印象からは、積極的ではないものの、相場の復調がうかがえます。
それと同時に、先週の日経平均の株価位置は、先ほどの3万8,000円水準や75日移動平均線以外にも、3月7日と3月22日の高値を頂点とした「ダブル・トップ」におけるネックラインのところでもあります。
そのため、今週の日経平均は現在の株価位置から上放れし、さらなる戻りを試せるかが注目されるわけですが、その可能性の有無については、国内株式市場が休場だった米国株市場の動きについてもチェックする必要があります。
米国株市場は「株価調整の一巡感」が強まり、上昇しやすい?
そこで、先週の米主要株価3指数(NYダウ、S&P500、ナスダック)の動きも見ていきます。
図2 米NYダウ(日足)の多重移動平均線、線形回帰トレンド、MACD(2024年5月3日時点)
図3 米S&P500(日足)の多重移動平均線、線形回帰トレンド、MACD(2024年5月3日時点)
図4 米NASDAQ(日足)の多重移動平均線、線形回帰トレンド、MACD(2024年5月3日時点)
上の図2から図4は米主要株価3指数(NYダウ、S&P500、ナスダック)の日足チャート上に多重移動平均線と線形回帰トレンドを描き、下段にMACDを表示させたものです。
この3つのテクニカル指標でトレンドの変化や強さを読み取っていきます。
図2から図4で共通しているのは、「足元の株価上昇で多重移動平均線の束を上抜けてきた」ことをはじめ、「MACDが上向きに転じ、シグナルも上抜けてきた」こと、そして、「4月からの株価下落で線形回帰トレンドのプラス1σ(シグマ)からマイナス2σあたりまで下落し、足元ではマイナス1σを目指して反発している」ことです。
いずれも、4月の株価調整が一巡し、株価の戻りに勢いが出つつあることを示している印象のため、こうした米国株の動きが続けば日本株にとってもプラスの影響を与えそうです。
米国株上昇の背景
とはいえ、先週の米国株市場の動きについては、週の前半に大きく株価が下落する場面が見られるなど、もう少し細かくチェックする必要があります。
とりわけ、4月30日(火)の取引では、ダウ・ジョーンズ工業株平均株価(NYダウ)が前日比で570ドルマイナスとなり、2024年相場で最大の下げ幅だったほか、ナスダック総合指数(ナスダック)も前日比で2%を超える下落率でした。
この日発表された米経済指標(1-3月期の雇用コスト指数、4月のシカゴ購買部協会PMI (購買担当者指数))の結果が、根強いインフレと景況感の悪化を示す内容となったことで、米長期金利(10年債利回り)が4.69%まで上昇したことが、株式市場の売りのきっかけとなりました。
4月以降に公表された米経済指標についても、インフレ収束ペースの鈍化と楽観的な景況感を揺るがすものが増え始めており、市場では利下げ開始時期の後ずれ観測をはじめ、一部では利上げ再開やスタグフレーション(インフレと景気減速の同時進行)を警戒する声も出始めていました。
こうした、嫌なムードが変化したのは、5月1日(水)まで開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)です。
政策金利自体は6会合連続の据え置きだったのですが、QT(量的縮小)のペースが米国債で月間600億ドルだったのが、月間250億ドルへと予想(300億ドル)以上のペースダウンが決定されたこと、FOMC後のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の記者会見で利上げ再開シナリオを否定する発言が出たことなどが市場に安心感をもたらしました。
さらに、週末にかけては3日(金)発表の米4月雇用統計が市場予想を下回り、利下げ開始の先延ばし懸念が後退したことが株価の上昇に弾みをつけました。
つまり、足元の米国株市場は、個別の決算に反応する動きはあるものの、全体的にはインフレと景況感の動向と米金融政策への思惑によって動いていることになります。
市場が特に注目するCPI(消費者物価指数)や小売売上高は来週15日(水)に公表されるスケジュールのため、目立った経済指標のない今週は先週からのムードを引き継ぎやすいと考えられます。
国内は企業決算が目白押し
その一方で、今週の日本国内では、注目企業の決算発表が佳境を迎えます。
つい先ほども触れましたが、米国市場がFOMCを通過したことや、目立った経済指標がないことなどを踏まえると、決算動向に反応しやすい相場地合いが想定されます。
特に、今週は全体で1,000社以上の企業が決算を発表し、時価総額1,000億円を超える企業だけでも300銘柄を超えているため、決算を手掛かりとする個別物色が市場全体のムードに波及する展開もあり得ます。
図5 日経平均(日足)と多重移動平均線(2024年5月2日時点)
仮に、今週の日経平均が上方向を目指した場合、まずは多重移動平均線の束を上抜けできるかどうかがポイントになりそうです。ちなみに、多重移動平均線で最長の線(28日移動平均線)は先週末(5月2日)時点で3万9,013円ですので、とりあえず目指すのは3万9,000円ということになります。
反対に株価が下落した場合には、前回のレポートと同様に、直近安値(4月19日の3万6,733円)や、前回の決算シーズン(1月中旬から2月上旬)のレンジ相場の中心である3万6,000円が、下値の目安となります。
中長期的には不透明が強まっている
これまで見てきたように、今週は比較的上昇しやすい相場地合いであると考えられますが、注目の米経済指標が控えている来週までの短い賞味期限となるかもしれないことは想定しておいた方が良さそうです。
また、中長期的にも不透明感が強まっています。
図6 株価上昇の材料と点検項目
上の図6はこれまでの株式市場の上昇の材料をまとめたものです。3月の終わり頃までは[1]から[8]までの材料が揃っていたのですが、4月以降はいくつかの項目で、勢いが弱まっている、雲行きが怪しくなっているものが増え始めています。とりわけ、米国の状況が気になります。
例えば、[5]の米景況感のソフトランディング見通しや、[6]のインフレ収束、そして[8]の米金融政策については、今回のレポートでも見てきたように、現在の状況と、昨年の終盤や年初に市場が想定していたシナリオを比較すると、かなりの隔たりが生じています。
また、[7]の生成AIという強力なテーマについても、相場の牽引役だった半導体セクターの中で選別が進み始めたことや、これまでの積極的な投資が収益につながるまでの時間の問題、新たな生成AIビジネスの誕生や拡大はこれからであることなど、テーマの切り口が「次の段階」へと移行しつつあります。
これら[1]~[8]の状況に大きな変化が生じるか、9番目以降の新たな買い材料が加わってくれば、その後の展開も変わってきますが、現状のままで積極的に上値を追っていくのは難しくなっていくと思われ、その場合、これまでにつけた高値水準で売りが出やすくなることも考えられます。
したがって、しばらくの間は短期的な値動きに振り回されやすくなりますが、相場環境の変化を落ち着いて見極めていく姿勢が求められる大切な局面かもしれません。
(土信田 雅之)
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