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中国GW休暇の景気効果は限定的?中国人観光客の海外旅行先にも注目

トウシル / 2024年5月9日 7時30分

中国GW休暇の景気効果は限定的?中国人観光客の海外旅行先にも注目

中国GW休暇の景気効果は限定的?中国人観光客の海外旅行先にも注目

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の加藤 嘉一が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
中国GW休暇の景気効果は限定的?中国人観光客の海外旅行先にも注目

中国GW:約3億人が国内観光するも個人消費の伸びは限定的?

 2024年の中国情勢を占う上で、一つの鍵を握るのが「景気回復」だと私は考えています。新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策が解除される過程で迎えた2023年は、年間を通じて景気回復の遅れというジレンマが中国経済を迷走させました。

 今年はどうなるか。中国政府は年間の経済成長率目標を昨年同様5.0%前後と掲げ、1~3月期は5.3%増という結果でした。不動産不況やデフレ、若年層の失業率問題など構造的問題が解消されたとは全くいえないものの、滑り出しは「まずまず」「悪くない」といったところでしょうか。

 そんな中、中国も日本同様ゴールデンウイーク休暇を迎えました。中国では5月1日が「五・一労働節」と定められ、称されていますが、この期間の休暇が「黄金周」、その名の通り、ゴールデンウイークとなっています。人によって休みの取り方は異なるのでしょうが、今年は公式には5月1~5日の五連休。この期間に発生したヒトやカネの動きを巡る統計結果も続々と出てきています。中国版GWは、2024年の景気回復に寄与したのでしょうか。

 中国政府によって発表されている統計結果をいくつか見ていきましょう。

 5月1~5日における、国内旅行者数は約2.95億人で、前年比7.6%増、これらの旅行者数による総消費額は約1,669億元(約3兆3,000億円)で、前年比12.7%増。コロナ禍前の2019年時と比較した場合、それぞれ28.2%増、13.5%増。また、全国各地の重点卸売、飲食関連企業の販売額は昨年同期に比べて6.8%増だったとのことです。

 次に、5月1~5日における出入国者数は、中国人、外国人を含め、5日間で約847万人に達したとのこと(ピークは5月3日で約180万人)。内訳を見ると、中国本土の人間が約477万人(前年同期比38%増)、香港、澳門、台湾の人間が約292万人(前年同期比21%増)、外国人が約78万人(前年同期比99%増)だったとのことです。

 これらの統計結果を見ると、長期休暇の景気刺激効果は昨年と比べれば顕著になっているように見受けられます。一方、5日間における国内旅行者の平均消費額は566元(約1万1,000円)にとどまり、春節(旧正月)休みの1,335元(約2万7,000円)に比べると低迷していることが分かります。今回のGW休暇は5日間、春節休暇は8日間ということで、休暇期間自体が短めで、景気効果が限定的だったという見方も中国の専門家の間ではあるようです。

 中国政府や官製メディアは、GW休暇の動向から、「中国経済は回復、好転している」という宣伝を大々的に行っていますが、私が中国の知人たちと意見交換をした限りでは、そこまで盛り上がったという印象ではないもよう。4~6月期の主要経済統計に注目しています。

中国が各国と進める短期渡航ビザ相互免除策

「ゼロコロナ」が解除されて1年以上がたち、国内経済の正常化と同時に、国境をリオープンする過程で、中国政府が大々的に推し進めてきたのが、各国政府との短期渡航ビザ免除交渉です。

 コロナ禍以前、中国は日本、シンガポール、ブルネイの3カ国に15日以内の中国短期渡航ビザ免除措置を与えていました。コロナ禍の間はこれらの措置が一時停止され、2023年9月、中国政府はシンガポールとブルネイ国民に対しビザ免除措置を復活させました。シンガポールとの間では今年2月9日、すなわち中国の春節(2月10日)直前から30日以内の短期渡航ビザ相互免除を施行しています。

 その後も中国政府による外国人誘致策は熱を帯びていきます。

 昨年11月にビザ免除対象国を拡大させ、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、マレーシアの6カ国の国民を対象に1年間(2023年12月1日から2024年11月30日まで)、今年3月には、スイス、アイルランド、ハンガリー、オーストリア、ベルギー、ルクセンブルクの国民に対し半年間(2024年3月14日から11月30日まで)、15日以内の短期渡航ビザ免除措置を取ると発表しました。

 また、中国とジョージア両国政府は今月28日から、30日以内の渡航を巡るビザ相互免除措置を施行すると発表。さらに、現在欧州を歴訪中の習近平(シー・ジンピン)国家主席は、最初の目的地であるフランスでマクロン大統領と会談した際、「フランスなど12カ国の国民の中国への短期渡航ビザ免除策を2025年末まで延長する」と電撃発表しました。習氏が言及した12カ国とは、上記の国を対象にしていると思われます。

 中国政府としては、外国人の中国訪問に便宜を与えることで、(特に欧州諸国からの)観光客や企業投資を誘致したいという意図があるように見受けられます。景気回復にとっても有益だという判断なのでしょう。また、中国が国際社会で孤立しておらず、世界各国、各地域との相互依存関係が深化しているという印象を与えたいのだと思われます。

 一方、日本国民の中国への短期渡航ビザ免除措置は一向に取られる気配がありません。中国政府が対日外交を総合的に考慮しながら、意図的に復活させていないのだと私はみています。(中国に渡航したいかどうかは別として)中国との経済、ビジネス、人文交流にとっては、ビザ免除策が再開されないという現状は阻害要因になっているといえるでしょう。

中国人観光客は日本に「戻ってくる」のか?

 中国とのビザ免除交渉、および中国人観光客の動向は、日本のインバウンド産業、国内消費といった分野にとっても軽視できない要素といえるでしょう。コロナ禍前の2019年、日本を訪問した外国人観光客は過去最多の約3,188万人を記録。国別で最多だったのが中国本土からの訪問者で約959万人でしたので、外国人観光客の3分の1近くが中国人という状況でした。

 一方、コロナ禍を経た現状、中国本土から日本への観光客は「激減」しています。例として、今年3月の統計を(2019年3月と比較しながら)見てみると、外国人訪問者総数が約308万人(2019年は約276万人)、うち、トップが韓国で約66万人(約59万人)、3位の台湾が約48万人(約40万人)、4位の香港が約23万人(約17万人)、一方2位だった中国は約45万人と、2019年の69万人に比べて35%減となっています。

 加えて、中国人観光客の「爆買い」が世論や市場をにぎわせていたころ、日本訪問者の7割は団体旅行客で、個人旅行客は3割程度でした。これが現在となっては逆転し、団体旅行客は3割未満へと減少、今後もこの傾向は変わらないでしょう。中国政府が団体旅行ツアーそのものを制限し、ツアー数が減少していることに加えて、中国人自身の志向も、「爆買い型」から「体験型」へとシフトしているといわれていますし、私自身もそう捉えています。

 今後、中国経済がどう回復し、国民のお財布事情が改善されても、どれだけ円安・元高傾向が続いても、中国人の海外旅行が盛り上がったとしても、コロナ禍前のような、大量の中国人観光客が集団的に「爆買い」している光景を、銀座や心斎橋といった繁華街で目にする可能性は低いのではないか、というのが私の現時点での見立てです。

(加藤 嘉一)

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