Z世代はいくら投資すべき?「2割投資生活」で目の前と未来の幸せを考える
トウシル / 2024年5月15日 14時48分
Z世代はいくら投資すべき?「2割投資生活」で目の前と未来の幸せを考える
若い世代は年収の2割を投資に回す?
日本経済新聞が行ったZ世代に関する調査で、彼らの投資意欲が旺盛であることが明らかになったとの記事がありました。「投資経験のある20代から60代」への調査、ということなので投資未経験者や投資理解のない人は対象外ということを念頭に置きつつも、読んでみるとなかなか興味深いデータとなっていました。
参考:「Z世代」の3割超、給料の20%以上を投資 将来に不安」日本経済新聞(2024年5月1日)
資産運用のイメージとして、ギャンブルや富裕層のやることというイメージが低く、貯金のようにコツコツ行うものという回答が高くなっているそう。また、運用方針では長期保有の傾向が高いといいます。
特にZ世代(おおむね20代)では、3分の2に近い層が給与の1割以上を投資に回しており、さらに給与の2割以上としても全体の3分の1強がこれに該当するほど高い資産形成意欲を示しています。
この傾向、どう評価すればいいでしょうか。あるいは注意点はないのか考えてみます。
年収の2割を積み立てし続ければ、人生は困らない
Z世代がもし、入社~定年退職までの間、年収の2割を積み立てし続けたとすれば、おそらく人生に困ることはほとんどないでしょう。
ユースフル労働統計によれば、大卒男性の生涯賃金は3億2,000万円としています(60歳までの正社員としての賃金、退職金、65歳までの賃金の合計)。このうち60歳までの賃金に相当する2億5,000万円のうち2割に相当する5,000万円を38年間(勤続期間を22~60歳として)均等に分けて積み立てたとすれば月々の投資額は11万円になります。
これに年4.0%の運用収益が上乗せされれば、1億1,750万円に達します。実際には途中で、住宅購入の頭金や子どもの学費として取り崩しをしていくことになるでしょうが、それでも十分な資産を残してリタイアが可能でしょう。実際にはこれに退職金を乗せられますから悠々自適は間違いありません。
ちなみに、生涯賃金のうち2.5割は税・社会保険料に引かれるとして、その2割を貯めるとしても、月8.2万円相当、60歳時の資産は8,759万円となります。
Z世代にとって実質マイナスの定期預金に価値はあるのか
Z世代で資産運用を選択する人の多くは、銀行預金には興味が薄いようです。毎月の積み立て額の全てを投資につぎ込む人が少なからず見受けられます。
理由の一つには、あまりにも低金利という状況があります。消費者物価指数は、2022年の年平均で+2.5%、2023年の年平均で+3.2%となっていますが、この2年間に同水準あるいはそれ以上の金利を提示している銀行預金はありません。
そうすると、物価上昇率を年2.0%も下回っていることになり、銀行預金は実質マイナスの運用方法となっています。言ってみれば「安全、確実、実質マイナス」というわけです。
資産形成は、物価上昇率との見合いで考える必要があり、これは過去数十年忘れ去られてしまった感覚です。Z世代がどこまで意識しているかは分かりませんが、銀行預金が増えないという状況を踏まえて投資に資産形成資金の多くを振り向けているとしたら理由が立ちます。
ただし、資産のほとんど全てをリスクにさらしている状態であることは理解しておく必要があります。
全財産が激しく増減する覚悟があれば全額投資戦法でもよし
若い人が資産形成の全てを投資につぎ込むことは問題ないでしょうか。若い世代の資産額は少額であることから、また資金使途は未来に設定できることから、少なくとも年金生活者のように安全資産を多く持つ必要性は高くありません。
日常生活費の数年分をまず定期預金で貯めた上で投資をしなさい、といったアドバイスもありますが、やや理想論によっているところもあります(これを真剣にやると実質マイナスの定期預金を何年もかけて貯めないと、リスク運用ができなくなってしまう)。
投資信託ベースでの資産形成であれば現金化は数営業日で可能です。NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)もいつでも売ることができます。若い世代は定期預金優先についてはあまり気にしなくてもいいと思います。
大事なのは、投資をするかしないかはともかく、数カ月分の生活費になるような資産を早期に積み上げることです。
投資信託の活用であれば、一夜にして資産がゼロになるような心配はほとんどありません。ただし、一時的に数十%の値下がりは有り得ることを含んだ上での、投資計画を立てるようにしましょう。
2割投資生活が無感動生活には陥らないように
2割を投資する若い世代という話題、人生を通じたお金のやりくりとしては健全性の高い取り組みとなっていますが、留意点もあります。
それは、収入の2割を積み立てるということは、しばしば目の前の生活を無味乾燥なものとし、無感動なものとしかねないということです。特に税引き前の年収の2割とすれば手取りの2.5割以上になるはずで、日々の生活は相当のローコストを意識する必要があります。
お金を使えば幸せが買えるというほど世の中は単純ではありませんが、娯楽はAmazonプライム・ビデオ視聴のみ、服はユニクロのみ、食事はスーパーでの低コストの自炊のみ(しかもほぼテンプレ化してメニューは無限ループ)、というのは今の喜びを押さえつけすぎのように思います。
「推しを何か一つ持って、ときどき高額出費する」「年に一度だけは旅行を楽しむ」「好きな作家のマンガだけはためらわず紙で買う」「コンビニの新作スイーツをチェックしうまそうなら一度だけは買う」などなど、自分なりの出費許可ルールをつくっておくと、日々の彩りは増しつつ、積み立ては進められるはずです。
また、20~30代においては自己資本の増強に少しお金を振り向けることも有効です。資格がキャリアアップを確実にするとは言いませんが、自分の専門性を高める勉強にもときどき予算を振り向けておくと、結果として年収アップ→貯蓄額アップの好循環になったりします。
目の前の幸せ(日々の消費が実現する)と未来の幸せ(資産形成が実現する)はトレードオフのところがありますが、きちんと貯められる人はじっくりバランスを考えてみてください。
(山崎 俊輔)
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