円買い介入とバフェットのアップル株売却
トウシル / 2024年5月9日 16時58分
円買い介入とバフェットのアップル株売却
大荒れとなったゴールデンウイークのドル円相場
神田真人財務官は、市場が予期せぬ時間帯に円買いドル売り介入を行ったようだ。そして、「機内でも海外でも、24時間体制で必要に応じて市場動向に適切に対応する」と、胸を張った。
今回の円買い介入で特筆すべきは、最新のFOMC(米連邦公開市場委員会)の決定からわずか2時間後に介入が行われたことだ。 実際、FRB(米連邦準備制度理事会)がタカ派的な発言をしてドルが急騰していたら、介入は無意味だっただろう。
市場では「日本が何百億もの資金を無駄にすることがないように、イエレン議長が次のNFP(非農業部門雇用者数)とCPI(消費者物価指数)の結果を日本銀行にリークした」といううわさが流れていた。
「日銀と財務省がこの円買い介入について事前にパウエルやイエレンと協議している」という市場の観測とは反対に、イエレン財務長官はアリゾナ州メサで行われた講演の後、記者団に「介入の有無についてコメントするつもりはない」と述べ、「それはうわさだと思う」と話した。
また、イエレン財務長官は、円相場は「比較的短期間にかなり動いた」と述べ、「こうした介入はまれであるべきで、協議が行われることが期待される」と付け加えた。
イエレン財務長官は、「介入する前に日銀が自分に相談すべきだ」と発言したという報道も流れている。今回、日米で事前協議があったか否かは分からないが、イエレン財務長官は日本の介入を快く思っていないようだ。
日本の介入を認めてしまえば、世界中からドル高是正の声が高まる。粘着性のインフレ問題を抱える米国はドル安を公に受け入れることはないだろう。
ドル/円(1時間足)
ドル/円(日足)
こうした円の乱高下相場は今後起きることの予兆に過ぎず、今後、激しい動きがより頻繁に起こるのかもしれない。しかし、誰の目にも明らかなように、長期的な観点で見れば、円安はおそらく一時的な現象ではないだろう。
「気に入った球しか振らない」バフェットの手元資金が再び過去最高を更新
「今日このテーブルに座っているわれわれの中で1,890億ドルの効果的な使い方を知っている人は誰もいないと思う。(米短期債の金利が)5.4%の現状では手を付けない。1%だったら話は別だが。FRBには内緒だよ。われわれは気に入った球しか振らないのだ」
4日、米ネブラスカ州オマハで開かれた米投資会社バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)の年次株主総会で、「なぜ現金を使わないのか」という投資家からの質問に対してウォーレン・バフェットが答えたものである。
バークシャーの2024年1-3月(第1四半期)末時点の現金保有残高(現預金と米短期債の保有額を合計した額)は1,890億ドル(約29兆円)と前期(2023年第4四半期末は1,676億ドル)から13%増え、再び過去最高を更新した。
5月5日の日本経済新聞の記事「バフェット氏、高金利で鈍る株式投資 手元資金30兆円へ」によると、その額は米ウォルト・ディズニー(約2,080億ドル)や米マクドナルド(約1,950億ドル)の時価総額に相当する額だと言う。
バークシャー・ハサウェイの1,890億ドル(約29兆円)の手元現金残高とNYダウの推移
バークシャー・ハサウェイB株(日足)
さらにバフェットは「今四半期末には2,000億ドル程度になるだろうというのは、妥当な推測だと思う」と述べ、6月末には大台を超えるという見通しを語った。そして、「使いたいのはやまやまだが、リスクがほとんどなく、私たちに大きな利益をもたらしてくれると思わなければ、使うことはないだろう」と付け加えた。
バフェットは以前から目を見張るようなリターンを達成できる有意義な案件が不足していると述べていた。直近で米国の3カ月物短期債の利回りが約5.4%で推移する中、米短期債の保有を積み増している。短期債から得る金利収入は昨年の第3四半期以降、3四半期連続で保有株からの配当収入を上回っている。
バークシャー・ハサウェイの手元現金残高の内訳
加えて、保有する株式の売却も進めた。
前述の日本経済新聞の記事「バフェット氏、高金利で鈍る株式投資 手元資金30兆円へ」は、4日に開示された四半期報告書の情報を基に、アップル株(AAPL)の保有株数を13%程度、石油大手シェブロン株(CVX)を2%程度売却した他、米メディア大手パラマウント・グローバル株(PARA)については損失が出る状態で全て売却したことを伝えている。
バフェットは年次総会の中で、パラマウント・グローバル株を見切ったことについて、「100%私が決めたことで、全て売却しかなりの損失を出した」と語った。そして、この経験から、人々が自由な時間にどのような活動を優先させるかについてより深く考えるようになったと付け加えた。
バークシャーが持つ上場株式の保有割合(2023年12月末時点のフォーム13Fより)
一方、アップルについては、今回の売却にもかかわらず、バークシャーが長年にわたり保有するアメリカン・エキスプレス(AXP)とコカ・コーラ(KO)の2社よりも「さらに優れた」企業だと評価。バフェットのアップルの取得コストは40ドル未満だと思われるが、「アップルは年末まで最大の保有株であり続けるだろう」と述べた。
アップル(日足)
バークシャーの株式売買の推移
バフェットは、米国の株式譲渡益に対する税率が上昇する可能性があるため、今のうちに含み益の一部を実現益に変える方針だという。
バフェットがアップルを売却したことは米国株市場にはショッキングな出来事であろう。そこで登場するのが自社株買いである。5月3日、アップルは史上最大規模となる1,100億ドル(約17兆円)相当の自社株買い計画を発表した。
5月8日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」
5月8日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、紙田智弘さん(楽天証券 株式・デリバティブ事業部)をゲストにお招きして、「米国株投資と投資家動向」「米国の大恐慌時のような経済政策と自社株買いの洪水」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。
ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。
5月8日 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
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(石原 順)
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