今月の質問「金(ゴールド)価格、今後どうなると思いますか?」
トウシル / 2024年5月10日 16時0分
今月の質問「金(ゴールド)価格、今後どうなると思いますか?」
はじめに
今回のアンケート調査は、国内大型連休前の2024年4月22日(月)~24日(水)にかけて行われました。
4月末の日経平均株価は3万8,405円で取引を終えました。前月末(4万0,369円)からは2,000円近く下落したほか、月足ベースでも4カ月ぶりの反落となりました。
あらためて月間の値動きを振り返ると、月初は、利益確定売りや期初の売りといった需給要因を受けて軟調なスタートとなり、その後も米利下げ観測の後退や中東情勢への警戒感などを背景に売りに押される場面が目立ち、日経平均は4万円台から3万7,000円台を下回るところまで株価水準を切り下げていきました。
月末にかけては、値ごろ感の買いや企業業績期待などで持ち直す動きを見せつつも、企業決算が相場全体のムードを大きく好転させるには至らなかったことや、日米の金融政策イベントを控えた思惑なども絡んで戻りの勢いは鈍い状況が続きました。
このような中で行われた今回のアンケートですが、3,500名を超える個人投資家からの回答を頂きました。
日経平均の見通しDIは前回からさらに鈍化する一方で、為替については円安見通しが強まるDIの結果となりました。これまでの調査では、「株高と円安」の見通しがセットとなることが多かったのですが、今回については「株安と円安」見通しという組み合わせになっていることが印象的です。
次回もぜひ、本アンケートにご協力をお願いいたします。
日経平均の見通し
「DI悪化も中期の見通しは変わらず?」
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之
今回調査における日経平均の見通しDIは1カ月先がマイナス4.96、3カ月先は+11.94となりました。
前回調査の結果がそれぞれ+28.85、+12.43でしたので、1カ月先DIの低下の大きさが顕著となっています。ちなみに、1カ月先DIがマイナスに沈むのは2023年10月調査以来です。
ここ数カ月間の1カ月先DIの値の推移をたどっていくと、+36.48(1月調査)、+52.40(2月調査)、+28.85(3月調査)、そして今回のマイナス4.96と、値の変動がかなり荒っぽくなっています。
もっとも、上の内訳グラフを見ても分かるように、強気派の割合は23.94%と目立って縮小しているわけではなく、相場の見通しが極端に悪化したような印象はありません。むしろ、これまで小さすぎた弱気派の割合が増えたことで、過度な強気の偏りが修正されたと考えるのが自然です。
実際に、3カ月先DIの値は前回調査よりもわずかな低下にとどまっていますので、中期的な強気見通しは維持されていると思われます。
足元の株式市場は国内大型連休明けで本格的な5月相場へ突入しましたが、日経平均はこれまでのところ、75日移動平均線を挟んだ推移となっています(5月8日時点)。
75日移動平均線は約3カ月間の値動きの中心線ですので、今回の調査結果が示す通り、中期の強気見通しが維持できるのかを試しつつ、「シナリオの方向性を探っている」状況といえます。
そこで、現在の相場環境を整理すると、日米の決算シーズンがピークアウトしつつありますが、これまでのところ、決算内容に個別で反応する動きは見られるものの、相場全体としてはムードを大きく変えるような流れは今のところ生じておらず、結局は日米の金融政策への思惑によって株価指数が上下している展開となっています。
また、大型連休前に日本銀行金融政策決定会合が開催されましたが、足元の急ピッチな為替相場の円安に対して、けん制するような発言が植田和男総裁から出なかったことから、1米ドル=160円台まで円安が進む場面があり、その後の為替介入観測などで円高に振れるなど、慌ただしい値動きを見せています。
円安はこれまで「輸出企業が多く上場している日本株市場にとって追い風」とされてきましたが、最近では輸入物価の上昇による内需企業や国民生活への圧迫など、「自国通貨の価値低下がもたらす国内経済への影響」を懸念する視点も高まっています。
もちろん、「日本経済がイマイチでも海外で稼いでいる日本企業の株は買える」という切り口で、引き続き円安を好感する銘柄の選別が進むと思われますが、以前とは異なり、円安がそのまま株高に直結する動きにはなりにくくなっています。
一方、5月あたまの1日に終了した米国のFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利の据え置き、予想以上のQT(量的引き締め)のペース減速が決定され、その後のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の記者会見でも今後の利上げシナリオの可能性が否定されたことなどによって、総合的に「ハト派」として受け止められて、米国株市場は大きく上昇する反応となりました。
米金融政策当局からのメッセージが市場に安心感をもたらした格好ですが、ただし、インフレについては、想定していたよりも根強く、地政学的情勢の悪化によるインフレ進行も考えられるほか、景況感についても減退を匂わせるような米経済指標が増え始めていること、そして、これまでの相場のけん引役だった米半導体企業の株価も決算を受けて下落するものが目立ち始めています。
このように、実際に起きている現実に目を向けると、米国株市場はポジティブな材料が少なくなっているため、中期シナリオの再構築の行方を見極める上で、米国株市場の動向と日本株市場の反応が重要な焦点になっていくかもしれません。
今月の質問「金(ゴールド)価格、今後どうなると思いますか?」
楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲
ここからは、テーマを決めて行っている「今月の質問」について書きます。4月のテーマは「金(ゴールド)価格、今後どうなると思いますか?」でした。国内外の金(ゴールド)価格が記録的な高値圏で推移する中、日本の個人投資家の皆さまがどのような考えをお持ちかを尋ねてみました。
図:質問1
質問1では、国内の小売価格が年初比で約24%、海外の現物価格が約15%(ともに4月18日時点)上昇していることを示した上で、国内外の金(ゴールド)価格が歴史的な高値水準で推移していることを知っているかどうかを尋ねました。およそ9割が知っている、残り1割が知らない、という結果でした。
個人投資家の皆さまのほとんどが、金(ゴールド)価格が記録的な高値圏で推移していることを認識されていることが、分かりました。
この数カ月間、価格が高騰していることだけでなく、都内で開催された金(ゴールド)の展示会で展示品が盗難にあったことや、株価が不安定化しているときに騰勢を強めている金(ゴールド)が運用状況を改善する期待を高めることなどが、広く報じられたことが要因であると考えられます。
図:質問2
質問2は、足元の金(ゴールド)価格が高値水準で推移している背景をどのように考えているかを問うものでした(複数回答可)。
「有事ムード(戦争激化)」(34.2%)が最も多く選択されました。アンケートを実施した時期が、イスラエルとイスラム武装組織の一つであるハマスをめぐる情勢が一段と悪化した時期と重なったことが、当該選択肢の回答割合が高くなった一因であると考えられます。
昨年10月にハマスの急襲で始まった戦闘は沈静化の兆しが見られません。これまで複数回、停戦への期待が高まる場面があったものの、停戦への確かな手ごたえを確認できないまま、今に至っています。
先月から今月にかけて、停戦合意が近いことを示唆する報道がありましたが、イスラエルとハマス、それぞれが認識している合意内容が異なっていたことが判明し、やはり合意に至りませんでした。
現在の金(ゴールド)価格は、短期的には有事ムードの強弱のほか、株価の動向、FRBによる利下げが行われるかどうかの議論などによって、上下していると考えられます(有事ムードだけが、金(ゴールド)価格を動かしているわけではありません)。
とはいえ、1970年代後半の高騰劇を知っている方が一定数おられる可能性があることや、ニュースの見た目のインパクトが大きいことなどにより、「有事ムード」が足元の価格高騰の大きな要因であると考えている方が多いようです。
図:質問3・4
質問3と4は、金(ゴールド)価格が今後どうなりそうかを尋ねる質問でした。質問3では半年後、質問4では10年後を想定し、それぞれ「今よりも高い」「今よりも安い」「わからない」のいずれかを選択していただきました。
全体として、「今よりも安い」を選択した方の割合は質問3・4ともに約20%でした。残りの約80%について、質問3では「今よりも高い」に約60%、「わからない」に20%、質問4では「今よりも高い」に55%、「わからない」に25%となりました。
「わからない」において、10年後の割合が半年後よりも高くなったのは、10年後という長期視点で見通すことそのものが難しいことを反映していると考えられます。
やはり注目するべきは「今よりも高い」です。半年後も10年後も、回答者の半数以上が、金(ゴールド)価格は高くなると回答しました。
質問2で個人投資家の皆さまの多くが、「有事ムード」が金(ゴールド)価格を押し上げる大きな要因であると認識していたことを確認しました。金(ゴールド)価格が半年後、10年後、いずれも今よりも高くなることを想定しているということは、有事ムードが半年後も、10年後も、続いていることを想定している可能性が浮上します。
世界から不安がなくなる日が到来することをイメージすることは、なかなか難しいかもしれません。
ここまで、「金(ゴールド)価格、今後どうなると思いますか?」というテーマで行った各種質問の回答結果をまとめました。今後もさまざまなテーマを用意し、個人投資家の皆さまのお考えを伝えていきます。
為替DI:5月のドル円、個人投資家の予想は?
楽天証券FXディーリング部 荒地 潤
楽天DIとは、ドル円、ユーロ円、豪ドル円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスのときは「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示します。
DIは「強さ」ではなく、「多さ」を測ります。DIは、円安や円高の「強さ」がどの程度なのかを示しているわけではありませんが、個人投資家の相場観が正確に反映されていると考えるならば、DIの「多さ」は同時に「強さ」を示すことになります。
「5月のドル円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」
楽天証券がドル円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の79%が「円安/ドル高」に動くと予想していることが分かりました。円安見通しは前月の68%からさらに増加しました。
円安見通しから円高見通しを引いたDIは+58になりました。前月は+36でした。DIの+は4カ月連続となりました。
高インフレ時代、少子化時代こそ在宅勤務
世界の主要経済圏では、所得から消費者物価上昇率を差し引いた「実質所得」がマイナスになっています。給料以上に物価が上昇しているからです。実質所得の落ち込みぶりは激しく、不況時にしかみられないような水準まで落ち込んでいます。
厚生労働省発表の2月の毎月勤労統計調査によると、実質賃金は前年同月比マイナス1.8%でした。実質賃金のマイナスは23カ月連続で、リーマン・ショックによる景気低迷期と並び過去最長となりました。名目賃金が下がったのが要因で、物価上昇に賃金の伸びが追いつかない状態が続いています。
物価上昇の大きな理由とされているのは、エネルギー価格の上昇です。それに34年ぶりの円安が追い打ちをかけています。政府は、2022年1月に始めた燃油価格抑制策を5月以降も継続することを決めましたが、補助金の予算総額は6兆円を超え、財政負担は重くなっています。
しかし油田を持っていない日銀が、ガソリンの「供給を増やす」ことはできません。円安も止まりません。必定、エネルギーの「需要を減らす」ことがインフレを抑制する唯一の選択肢となります。
例えば自家用車の運転の自粛を求め公共交通機関の利用を促進させる、あるいは節電や工場の休業を要請するなどです。しかし、実質所得がすでに不況レベルにあるときに、需要を減らしすぎるのは危険な賭けです。
エネルギー節約という意味では、WFH(在宅勤務)も効果があります。一般的な会社のオフィスの使用時間は、平均すると1日約5時間ですが、照明や冷暖房はそれよりもはるかに長時間使用されています。週末で無人のフロアにこうこうと明かりがついている会社を見かけたことはないでしょうか。
エネルギーの無駄遣いを止めて従業員が週に3日自宅で仕事をすることで、1日数十万バレルもの石油を節約できるのです。毎年夏になると、日本政府は家庭のエアコン設定を28度に上げて節電対策しろと言いますが、その前に、全日出社の企業を指導するべきでしょう。
在宅勤務は、通勤時間を業務のために使うことができて効率的です。それだけではなく、子育て中の女性にとっては、通勤時間や通勤距離を気にすることなく、自分のスキルに見合った仕事を探すことが可能になります。長期的に見れば、少子化対策として児童手当や給付金よりもはるかに効果的です。
これからの時代、仕事上特段の必要がないのに全日出社を強制する会社は、アンチエコで少子化問題無視というレッテルが貼られることでしょう。
ユーロ円
楽天証券がユーロ円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の72%が「円安/ユーロ高」に動くと予想していることが分かりました。円安見通しは前月の64%から増えました。
円安見通しから円高見通しを引いたDIは、+44になりました。円安/ユーロ高見通しは、前月の+28から大幅に増加しました。
豪ドル円
楽天証券が豪ドル円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の73%が「円安/豪ドル高」に動くと予想していることが分かりました。円安見通しは前月の62%から増えました。
円安見通しから円高見通しを引いたDIは、+46になりました。円安/豪ドル高見通しは、前月の+24から大幅に増加しました。
今後、投資してみたい金融商品・国(地域)
楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲
今回は、毎月実施している質問「今後投資してみたい金融商品」で「金やプラチナ地金(じがね)」を選択した人の割合に注目します。各質問の選択肢は、ページ下部の表の通り、13個です(複数選択可)。
図:「金やプラチナ地金」を選択した人の割合の推移
2024年4月の調査で、「金やプラチナ地金」を選択した人の割合は21.41%でした。上図の通り、2009年11月に次ぐ、14年5カ月ぶりの高水準です。
2009年11月は、前年(2008年)に発生したリーマン・ショックをきっかけに始まった世界的な景気低迷が続いていました。景気を回復させる策として主要国の中央銀行が一斉に金融緩和を行い、この金融緩和によって主要国の通貨の価値が希薄化する懸念が生じ、主要国の通貨と異なり信用の裏付けが必要ない金(ゴールド)の価値が高まる観測が生じました。
こうした中、金(ゴールド)相場は1トロイオンス当たり900ドル台から1,000ドル台へと水準を切り上げ、「1,000ドル超え」や「1,000ドル定着」を演じた金(ゴールド)相場に投資家の皆さまの注目が集まりました。
14年5カ月ぶりの高水準となった足元にも、主要中央銀行の金融政策が関わっていると考えられます。足元、米国の中央銀行にあたるFRBが、年内にも緩和的な政策の一つである金利引き下げを実施する可能性が浮上しています。米国の雇用情勢がやや弱くなっていることを受けて、現在の高金利状態を是正する思惑が強まっているためです。
中央銀行の動向のほか、イスラエルとハマスの戦闘やウクライナとロシアの戦争をきっかけに強まっている「有事ムード」が資金の逃避先需要を大きくしていることもまた、金(ゴールド)に注目が集まる要因になっていると考えられます。
今後、FRBの利下げのタイミングが予想よりも早まったり、有事ムードが一層強まったりした場合、「金やプラチナ」を選択する人の割合が上昇する可能性があります。引き続き主要中央銀行の動向、そして各種有事の動向に、注目していきたいと思います。
表:今後、投資してみたい金融商品 2024年4月調査時点 (複数回答可)
表:今後、投資してみたい国(地域) 2024年4月調査時点 (複数回答可)
(楽天証券経済研究所)
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