外国人投資家を見て動くコバンザメ戦略、どうなる日経平均?(窪田真之)
トウシル / 2024年5月21日 7時0分
外国人投資家を見て動くコバンザメ戦略、どうなる日経平均?(窪田真之)
上がるも下がるも外国人次第の日本株
今日は、日本株を動かしている外国人の売買動向を解説します。いつもお話ししている通り、日本株は過去30年以上、外国人投資家が動かしています。外国人は、買う時は上値を追って買い、売る時は下値をたたいて売る傾向があるので、短期的な動きは外国人次第です。
年初から外国人投資家の大量買いで大きく上昇してきた日経平均株価(225種)ですが、外国人は3月の後半より、日本株を売り越すようになりました。そのため、日経平均は3月下旬から4月中旬にかけて下落しました。
ところが、日経平均は4月下旬以降、戻りを試しつつあります。5月20日には3万9,000円台を回復し、3万9,069円まで上昇しました。米国株(ダウ工業株30種平均、ナスダック総合指数、S&P500種指数)が史上最高値を更新したことを受けて、外国人が日本株を少し買い越している可能性もあります。
<日経平均と外国人の売買動向(買越または売越額、株式現物と先物の合計):2022年1月4日~2024年5月20日(外国人売買は5月10日まで)>
上のグラフを見ると分かる通り、日本株は、外国人が買うと上がり、外国人が売ると下がる傾向が、30年以上、続いています。
ただし、時に外国人の買い越し・売り越しと日経平均の上下が合っていない週もあります。外国人の市場外取引【注】が大きいと、そうなることがあります。
【注】海外および国内の機関投資家は、証券会社に売買を代行させることがあります。例えば、海外機関投資家が日本株の買いを実行したい時、証券会社に買いを取引所で代行させることがあります。証券会社は、取引所が閉まってから、市場内で買い付けた玉を、市場外取引で、外国人にクロス取引で引き渡します。これだと、取引所の統計では、買っているのは証券自己となり、外国人であることが分かりません。
裁定買い残高に表れる海外投機筋の動き
ひとくくりに外国人投資家といっても、いろいろな種類があります。大ざっぱな分類ですが、日経平均先物を中心に短期売買を繰り返す外国人「投機筋」と、日本株の現物を中心に売買する「長期投資家」(欧米年金基金、中東オイルダラー、アジアなどのソブリンウェルスファンドなど)があります。
日本株の短期的な動きに一番影響が大きいのが、日経平均先物を中心に売買する投機筋の動向です。その投機筋の動きを、一目で見られるデータがあります。それが、東京証券取引所の「裁定買い残高」の変化です。
詳しい説明は割愛しますが、投機筋が日経平均などの先物を買い建てると「裁定買い残高」が増加し、投機筋が日経平均先物を売ると「裁定買い残高」が減少します。
<日経平均と、裁定買い残高の推移:2021年7月1日~2024年5月20日(裁定買い残高は5月10日まで)>
上のグラフをご覧いただくと、日経平均は裁定買い残が増える時に上昇し、減る時に下落していることがよく分かります。投機筋の日経平均売買が、日経平均の短期的な動きを決めていることが分かります。
裁定買い残高は、上のグラフでは、5月10日までのデータしか出ていません。ピーク(3月29日の2兆5,487億円)から減り続けて、5月10日には1兆8,841億円となっています。日経平均がその後、上昇していることを考えると、その後、裁定買い残はまた増加している可能性もあります。短期的な相場変動を理解するためには、裁定買い残の増減も見ていく必要があります。
日本株の投資判断に「コバンザメ戦略」が有効
日本株は割安で、日経平均は4万円を超えて長期的に上昇していくと判断しています。
ただし、外国人の売買動向によって、短期的には調整する可能性もあります。時間分散しながら割安な日本株を買い増ししていくことが、長期の資産形成に寄与すると考えています。
外国人がここからさらに日本株を買ってくるか売ってくるか、知るすべはありません。私がファンドマネジャーの時は、外国人の売買を予測するのではなく、外国人の動きを見ながら、なるべく、それにぴったりついていくことを心掛けていました。
それを、大型の生き物に吸着しておこぼれを食べるコバンザメにちなんで、「コバンザメ戦略」と呼んでいました。情けない表現かもしれませんが、それが短期的な相場動向を間違えない最も堅い戦略です。
外国人の売買動向について、今後分かることがあれば、本欄で報告いたします。
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