高配当株ランキング~営業益が連続2桁増見通しの高配当利回り銘柄
トウシル / 2024年5月23日 7時30分
高配当株ランキング~営業益が連続2桁増見通しの高配当利回り銘柄
決算発表本格化の中、中東情勢の落ち着きや金融引き締めへの警戒感後退で反発
直近1カ月(4月22日~5月17日)の日経平均株価(225種)は終値ベースで3.6%の上昇となりました。ゴールデンウイークを挟む期間となったほか、2024年3月期の決算発表が集中したタイミングでもありましたが、4月19日にかけて大きく調整した反動も強まり、期間中は緩やかな上昇トレンドが続く形になっています。
決算発表を受けての個別物色に関心が集中したことで、全体相場の変動率(ボラティリティ)は低下する方向ともなっています。なお、この期間(4月22日~5月17日)のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は4.6%の上昇で、初の4万ドル台乗せを達成しています。
4月後半から5月の4連休前にかけては、米国の金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会、4月30日、5月1日)で想定以上のハト派姿勢が示されたほか、日本銀行の金融政策決定会合(4月25、26日)でも「金融政策の現状維持」が決定されました。中東情勢の落ち着きもあり、買い安心感の強まりによってリバウンドの展開となりました。
また、外国為替市場では、日銀の政策決定会合直後に円売りが強まり、一時34年ぶりとなる1ドル=160円台にまでドル高円安が進んだことなども話題になりました。連休明け後は3万8,000~3万9,000円のボックスレンジでの推移となっています。5月15日にかけて主要企業の決算発表が連日続いたことで、日経平均の方向性は乏しくなりました。
年内利下げ期待再燃に伴う米国の長期金利低下、株高などは日本株にとっても支援材料となりました。注目された15日発表の米CPI(消費者物価指数)が市場予想通りに伸び率の鈍化傾向を示したこともプラス材料と捉えられました。
一方、日本政府・日銀による為替介入実施の観測によって、円安ドル高が一服したことは、日本株の上値抑制要因につながったとみられます。なお、2024年3月期の上場企業の純利益は前期比18%増と3年連続で過去最高となった一方、2025年3月期は4%減と5年ぶりの減益が予想されると試算されています。
好決算や株主還元強化の銘柄は上昇、増益記録途絶えたニトリは失望売り
個別株ではこの期間、決算発表を受けて明暗が分かれる展開になっています。想定以上の好決算発表のほか、増配や自社株買いなど株主還元強化を打ち出した銘柄などに評価が高まりました。
半導体関連ではレーザーテック(6920)、ディスコ(6146)、ルネサスエレクトロニクス(6723)などが上昇、決算内容もポジティブに捉えられたほか、前回期間中に下げ幅が大きかった反動も強まったもようです。住友林業(1911)、ダイキン工業(6367)、コーセー(4922)、アシックス(7936)、コナミグループ(9766)、三越伊勢丹ホールディングス(3099)なども決算がポジティブサプライズにつながりました。
半面、住友ファーマ(4506)、ジェイテクト(6473)、ヤマトホールディングス(9064)、コニカミノルタ(4902)、スクウェア・エニックス・ホールディングス(9684)などは決算が嫌気されて大きく売られました。ニトリホールディングス(9843)も連続経常増益記録が途絶えたことで、失望感が強まる形になりました。
日米の金融政策が引き続き焦点、ネガティブインパクトに注意
4月22日には米半導体大手エヌビディアが決算発表を予定しています。エヌビディアの決算発表後の株価動向は、日米の半導体株の動向、ひいては全体相場の行方を左右するものとなり得ます。仮にサプライズを伴うポジティブ決算となれば、東京株式市場でも再度、半導体株が市場を席巻するような相場展開になるものと考えられます。
ただ、エヌビディア株は年初から8割強の上昇、ここ1カ月でも約2割の上昇となっており、決算のハードルは極めて高い印象があります。短期的な出尽くし感が先行することで、物色の矛先がハイテク・グロース株から内需・バリュー株にシフトしていく状況は想定しておきたいところです。
なお、年内には半導体市況の好転、関連企業の収益回復が本格化していくとみられることから、中期的な半導体株のポジティブな見方に変化はありません。
日米の金融政策も引き続き焦点となってきます。米国では6月11~12日にFOMCが開催されます。6月利下げ開始の可能性は極めて低くなっている状況ですが、市場では、年内には利下げが行われるとの見方がコンセンサスになっています。
6月FOMC後のFRB(米連邦準備制度理事会)議長会見などで、可能性は低いとみられるものの、仮に年内利下げ開始が否定されるようならば、ネガティブサプライズとなるでしょう。
6月13~14日には、日銀の金融政策決定会合が開催されます。6月会合での利上げ実施の可能性は低いとみられますが、長期国債の購入減額などがアナウンスされる可能性は残ります。その場合、タカ派志向の強まりとして市場ではネガティブに捉えられる可能性が高いでしょう。また、足元ではイエレン米財務長官が為替介入に否定的な見解を示しているため、為替介入が行いにくくなってきている印象があります。
一段の円安が進行する状況となれば、円安抑止策として利上げが実施される可能性は高まるでしょう。また、食品インフレが目先一段と強まるようであれば、9月の自民党総裁選を控えて円安是正への政治圧力も高まるものとみられます。
2024年3月期の決算発表が一巡しましたが、セクター別でみると、今期の収益が改善して高い増益率が計画されているものとして、電気機器、化学、医薬品、精密機器、非鉄金属などが挙げられます。一方、今期経常利益が減益に転じる予想となっているのは、電力・ガス、石油、鉄鋼、輸送用機器、空運などとなっています。
中期的な株価の方向性を見る上で、この点は押さえておく必要があるでしょう。とりわけ、前期までの決算では株主還元策の強化が焦点となっていましたが、今期以降は還元策改善の動きも一巡して、業績そのものの注目度が高まるものとみられます。日銀政策リスク(円高反転リスク)を考慮すると、化学、医薬品、非鉄金属などのセクターが妙味と考えます。
2桁の収益成長継続見通しの高配当利回り銘柄
2024年3月期の決算発表が一巡したタイミングは、機関投資家も一通りの業績精査を終え、あらためて好決算発表が買い直される局面であると考えます。とりわけ、収益拡大が続く見通しであるにもかかわらず、株価の割安感の残る銘柄などは格好のポートフォリオ組入対象候補となってくるでしょう。
2024年3月期に続き、2025年3月期も2桁の営業増益を続ける見通しの高配当利回り銘柄をスクリーニングしています。
3.5%以上の配当利回り(2025年3月期ベース)がある銘柄の中で、2024年3月期実績、2025年3月期見通しともに2桁の営業増益銘柄を選定しています。選定銘柄は総じて、利下げ先送りによる米長期金利高止まりリスク、日銀の今後の政策変更による円高反転リスクなどにも耐え得る銘柄と判断されます。
(表)連続2桁営業増益見通しの高配当利回り銘柄
コード | 銘柄名 | 配当利回り (%) | 5月17日終値 (円) | 時価総額 (億円) | 前期増益率 (%) | 今期増益率 (%) |
---|---|---|---|---|---|---|
5076 | インフロニア・ホールディングス | 4.26 | 1,407.5 | 3,868 | 15.0 | 15.6 |
6406 | フジテック | 3.88 | 4,257.0 | 3,507 | 25.4 | 24.2 |
8174 | 日本瓦斯 | 3.78 | 2,447.5 | 2,853 | 15.3 | 14.7 |
4208 | UBE | 3.76 | 2,928.0 | 3,109 | 38.5 | 20.2 |
8425 | みずほリース | 3.69 | 1,085.0 | 2,658 | 24.4 | 19.0 |
注:増益率は営業増益率、今期は会社計画 |
銘柄選定の要件
- 配当利回りが3.5%以上(5月17日現在)
- 時価総額が2,500億円以上
- 2024年3月期実績、2025年3月期見通しともに営業2ケタ増益
- 3月期本決算
厳選・高配当銘柄(5銘柄)
1 インフロニア・HD(5076・東証プライム)
インフロニア・ホールディングスは2021年に前田建設工業、前田道路、前田製作所が経営統合して発足した準大手の建設会社です。積極的なM&A(買収や合併)で事業領域を拡大し、建設のほか、道路舗装、建設機械、インフラ運営事業などを手掛けています。
公共インフラを民間企業が運営するコンセッション事業のトップランナーとも位置付けられ、仙台空港など現在6事業を展開しています。1月31日には、風力発電事業を展開する日本風力開発を完全子会社化しています。
2024年3月期営業利益は510億円で前期比15.0%増となりました。受注回復や利益率の向上で土木セグメントが大幅増益になったほか、価格転嫁効果などで舗装セグメントも増益に大きく寄与した形です。2025年3月期は590億円で15.6%増の見通しとしています。土木分野は前期の反動減を見込んでいますが、大型工事の完工などで建築事業が大幅増益に転じる予想です。
ちなみに、建築工事の受注高は2024年3月期に過去最高水準となっています。また、再生可能エネルギー案件と開発案件の売却予定から、インフラ運営事業も大幅増益となる見込みです。
2024年3月期年間配当金は前期比5円増の60円とし、2025年3月期は60円配の継続を計画しています。配当性向は30%以上を目標としており、今期予想配当での配当性向は39.0%となります。2025年3月期までの中期計画では、自己株式取得400億円以上としていましたが、2024年3月期までに取得計画を前倒し達成しています。
政策保有株の売却進展などがあれば、追加の自社株買いなども期待できるでしょう。建設セクターの中では、高水準の受注残などに裏打ちされた業績への安心感が強い銘柄といえます。
2 フジテック(6406・東証プライム)
フジテックはエレベーターをはじめとした昇降機の専業企業です。国内では第4位と位置付けられているようです。24の国と地域で事業を展開しており、アジア市場に強みを持っています。営業利益の7割強はアジアで稼いでいます。
また、売上の5割強は改造・修理、メンテナンスなどのストック売上で占められているため、収益の安定感が強いことも特徴となります。とりわけ、インド全土への販売拡大に向けて現地生産能力の増強などに注力しています。
2024年3月期営業利益は145億円で前期比25.4%増となっています。売上高・利益ともに過去最高を更新しました。価格改定効果なども加わり、日本やインドを含む南アジアが増益となって全体をけん引する形となったようです。2025年3月期は181億円で24.2%増の見通しとしています。
新中期計画開始に伴う固定費増で日本が減益となる見込みですが、南アジアや前期引当金計上の反動による東アジアでの収益拡大、欧米の収益回復などを想定しているようです。日本では新標準機種開発に伴う先行投資がかさむもようです。
2024年3月期配当金は前期比80円増の155円、2025年3月期は10円増の165円を計画しています。配当性向は80.5%の高水準となりますが、新中期計画では、配当性向80%を目安とし、機動的に自己株式取得なども行っていく計画です。ストック売上による強固なキャッシュフロー創出力が高い株主還元を実施できる要因といえるでしょう。
ちなみに、中期計画では、2029年3月期の営業利益を440億円とする高い水準を目標にしています。短期的には、中国市場の回復などが株価のカタリスト(相場を動かすきっかけ)になり得ると考えられます。
3 日本ガス(8174・東証プライム)
日本ガスは、LPガス、都市ガス、電力の小売販売を展開しています。販売エリアは関東、山梨・静岡となっています。2024年4月現在、顧客数は194万6,000件、2024年3月期のLPガス販売量は29万79トン、都市ガスは36万2,890トンです。物流コストが他社比で低く、競争力の源泉ともなっています。
電気事業では東京電力とリレーションシップを構築し、相対で電源を安定調達しています。既存ガス顧客におけるセット販売の拡大などに注力しているようです。
2024年3月期営業利益は174億円で前期比15.3%増になりました。記録的高温の影響でガスの販売量は減少しましたが、原料価格の低下で粗利益率が改善しました。電気事業は販売量、利幅ともに拡大しました。2025年3月期は200億円で14.7%増の見通しと過去最高益更新を見込んでいます。
LPガスは高気温のマイナス影響軽減で販売数量の増加を見込んでおり、電気は引き続き顧客数の増加を想定しています。顧客獲得費用の減少など販管費の減少も見込んでいるようです。
2024年3月期年間配当金は75円で前期比10円増。2025年3月期は92.5円で17.5円増を計画しています。配当性向は73.0%の水準となります。会社側では、2024年3月期から2026年3月期までの3年間で、株主還元475億円(配当300億円+自社株買い175億円)を計画しています。1年目は配当金85億円、自社株買い59億円で、そのうち約30%を還元しました。
会社側では、不必要な株主資本は持たずに株主還元するという資本政策であり、2026年3月期以降にかけても、高水準の株主還元が期待できると考えます。
4 UBE(4208・東証プライム)
UBEは、コンポジット、ナイロンポリマー、カプロラクタム、ファインケミカル製品、合成ゴムなどの樹脂・化成品事業を主力とした化学メーカーです。ディスプレイ材料に用いられるポリイミド、リチウムイオン電池材料となるセパレータなどの機能品事業、プラスチック成形機などの機械事業、医薬中間体製造なども手掛けています。
海外ではスペインやタイに主要な製造拠点を構えています。マクセルとの合弁会社、宇部マクセルで、リチウムイオン電池用セパレータの設備を増強すると5月に発表しています。
2024年3月期営業利益は224億円で前期比38.5%増となっています。主力の樹脂・化成品事業は全般的な販売価格の低下で減収減益となりましたが、バイオメタン製造向け脱炭酸膜の販売が好調だった機能品事業、アフターサービスが堅調だった機械事業、医薬のロイヤリティ収入増加などがけん引役となりました。
2025年3月期は樹脂・化成品事業の大幅な回復から、営業利益は20.2%増の270億円を見込んでいます。ナイロンポリマーは食品包装用フィルムなどの需要回復、コンポジットは自動車生産の回復効果が期待できるようです。ライセンス収入増加なども織り込んでいるようです。
2024年3月期年間配当金は前期比10円増の105円、2025年3月期は5円増の110円を計画しています。配当性向は36.2%となります。株主還元に関して、安定的な配当の継続を基本方針とし、DOE(株主資本配当率)2.5%以上、3カ年平均の総還元性向30%以上を目標としています。
2024年3月期のDOEは2.6%であり、今後、大幅な減配の可能性は低いと考えられるでしょう。ほか注目点としては、2024年度~2025年度に機能品事業で増産目的の設備投資計画が多く予定されています。その後の売上成長の高まりが意識されます。
5 みずほリース(8425・東証プライム)
みずほリースは、みずほフィナンシャルグループの持分法適用会社となるリース大手企業です。2024年3月期末営業資産残高は2兆8,589億円、バランスの取れた資産ポートフォリオとなっています。設備投資に対する財務ソリューションに強みを持ち、船舶・鉄道車両のリースや建設機械のベンダーファイナンスプログラムなど、他社に先駆けた取り組みなども多く行っています。
2024年5月、業務提携関係にあった丸紅に対して第三者割当増資を実施、丸紅は20.0%の株式を保有することになり、同社は丸紅の持分法適用会社にもなります。
2024年3月期営業利益は395億円で前期比24.4%増となりました。営業資産の着実な積上げ継続によって不動産・環境エネルギー事業を中心に大幅増益となったほか、2023年6月に連結化したRent Alpha社の寄与で海外・航空機事業も伸長しました。2025年3月期は470億円で19.0%増の見通しです。
不動産などのコア分野、環境エネルギーや航空機などのグロース分野を中心に営業資産残高を積み上げ、また、アライアンス戦略などの新たな取組推進によって、増益基調を続ける計画となっています。
2024年3月期年間配当金は前期比45円増の192円配当、2025年3月期は1:5の株式分割を考慮すると、1.6円増配の40円配当を計画しています。長期間連続増配を続けており、現在の配当利回り水準の高さは特筆できます。この点ではNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の有望な投資対象とも捉えられます。
目先の注目ポイントは、丸紅との資本業務提携効果の表面化でしょう。総合商社の国内外のネットワークや人財・事業開発力などを活用することで、事業機会や投資機会の拡大を図っていく可能性は高いでしょう。
(佐藤 勝己)
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