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米国株式が世界株式より優勢?好決算エヌビディアがけん引(香川睦)

トウシル / 2024年5月24日 8時0分

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米国株式が世界株式より優勢?好決算エヌビディアがけん引(香川睦)

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の香川 睦が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
S&P500が高値圏で推移!米国株高の要因と上値余地

S&P500種指数は今年24回目の最高値更新を果たした

 前週は米国市場でダウ工業株30種平均が史上初めて4万ドルに到達するなど、主要株価指数は高値圏で推移しています。機関投資家がベンチマークにすることが多く個人投資家の注目度も高いS&P500種指数は、今年に入り24回にわたり過去最高値を更新。年初来上昇率は+11.3%となっています(22日時点)。

 4月の持ち高調整で株式ポジションを減らした機関投資家(特にアクティブ・マネジャー)は、株式相場のブレークアウト(高値更新)にキャッチアップするため追従買いを迫られる局面となっています。

 なお、円建てS&P500指数(為替ヘッジなし)の年初来上昇率は+23.5%に達しています(22日)。22日引け後に決算を発表したエヌビディアの業績は市場予想を上回る好調で、同社のジェンスン・ファンCEOは「次の産業革命が始まった」と述べました(後述)。こうした中、米国株式の世界株式に対する優勢が目立ちます。

 図表1は、米国株式、世界株式(オールカントリー)、米国を除く世界株式のパフォーマンス(ドル建て)を比較したものです。米国株がリードし、米国を除く世界株式は劣勢となっています。米国株の堅調は、GAFAMとエヌビディアなど大手テック株がリードしています。

 こうした企業群は圧倒的な収益力と財務基盤でAI(人工知能)の収益化を目指した設備投資を強化させ、そのことがさらなる利益成長期待につながっています。時価総額(≒市場が評価する企業価値)の増勢は、時価総額加重平均型株価指数であるS&P500の堅調をけん引し、時価総額ウエートで米国株が6割超を占める世界株式の堅調トレンドも支えています。

<図表1>米国株、世界株、「米国を除く世界株」の推移

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2024年5月22日)

ナスダック100指数の利益成長期待が高まっている

 振り返ってみると、半導体、コンピュータ、インターネット、スマートフォンなどほとんどのイノベーション(技術革新)は米国で生まれ進化してきました。スタートアップ企業の資金需要を支えるベンチャーキャピタル(リスクマネー)も潤沢な資本主義経済大国です。もちろん、その間には「新陳代謝」が繰り返され、それぞれの時代の主役は入れ替わってきました。

 例えば、1995年に「Windows 95」と呼ばれる画期的なOS(オペレーティングシステム)を発売したマイクロソフトは、その後の浮沈を経た後にクラウド事業や生成AI分野でリード役を担うに至り、時価総額は「世界首位」に返り咲きました。

「一握りの大手テック株が米国の業績拡大と株価指数の堅調をけん引するのは不健全」との見方もありますが、時価総額加重平均型株価指数であるS&P500や世界株式(MSCI指数)におけるウエート(時価総額比率)拡大傾向は現実的な事象です。

 筆者個人の見解では、ダウ平均(30銘柄で構成される修正後株価単純平均指数)の半導体企業にエヌビディアが選ばれず、いまだインテルが入っていることに違和感もあります(ダウ平均の構成銘柄はS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが選出します)。

 実際、近年はダウ平均のパフォーマンスがS&P500に劣後している状況が顕著です。なお、米国や日本でダウ平均をベンチマークに採用しているアクティブ・マネジャーはほぼ皆無です。

 図表2は、上記したGAFAMにエヌビディアを加えた大手テック銘柄6社の時価総額ウエートが約6割を占めるナスダック100指数とS&P500それぞれをベースにしたEPS(1株当たり利益)の実績と市場予想平均を示したものです。

 ナスダック100のEPSは2024年と2025年にそれぞれ約2割増益で過去最高益を更新していく見通しです。利益成長期待が高い大手テック株のEPS拡大予想が市場平均(S&P500)ベースの業績拡大(最高益更新予想)をけん引するトレンドが続くことが見込まれていることに注目したいと思います。

<図表2:ナスダック100指数ベースの最高益更新が見込まれる>

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2024年5月22日)

エヌビディアは決算発表で「次の産業革命が始まった」と宣言

 こうした中、今週最大のイベントとされていたエヌビディア(NVDA)の2-4月期決算発表(22日)が注目されました。生成AIやデータセンター向けGPU(画像処理半導体)で圧倒的シェアを誇るエヌビディアを、関連株への影響や波及度を勘案してゴールドマン・サックスは「世界で最も重要な銘柄」と呼んでいました。

 図表3は、エヌビディアの株価(左軸)と同社の予想EPS(Bloomberg集計による市場予想平均:右軸)の推移を示したものです。2022年に200ドル未満で推移していたエヌビディア株は、同年11月にマイクロソフトが提供した「ChatGPT」の革新性が火をつけ、エヌビディア株は2023年に3.3倍に。2024年に入っても90%超の上昇となりました。

 その要因としてAI向けGPUに対する急速な需要拡大、売上増加、利益成長見通しが挙げられます。同社の当期予想EPS(右軸)は2022年末当時に5ドル程度でしたが、現在(2024年予想EPS)は25ドル超に拡大。利益見通しが5倍以上になってきた経緯が分かります。

 エヌビディアが発表した2-4月期決算では、売上高が前年同期比3倍強の増収、EPSは同5倍強の大幅な利益成長を示し、ガイダンス(業績見通し)も市場予想平均を上回る絶好調でした。「ブラックウェル」と呼ばれる新製品の受注拡大も期待されています。

 同社のファンCEOは「次の産業革命が始まった(The next industrial revolution has begun)」と指摘。「AIはほぼ全ての産業に大幅な生産性向上をもたらし、収益機会の拡大に役立つだろう」と述べました。

 23日の日本市場(東証)では、2月にみられた「エヌビディア祭り」(同社の好決算を受けた半導体関連株の活況)に倣い、日経平均株価の寄与度が高い値がさ半導体関連株が上昇しました。

 エヌビディアはAI革命が進展する中での「中核銘柄」と見なされています。23日の米国株市場では業績拡大に期待する買いが集まり、エヌビディアの株価(終値)が初めて1,000ドルを超えました。日本のAI・半導体関連株も上値にチャレンジして日経平均の戻り基調に追い風となりやすいと考えています。

<図表3>エヌビディアの株価動向が日米株式の動向を左右する

*上記した予想EPSはBloomberg集計による市場予想平均
(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2024年5月22日)

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(香川 睦)

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