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日経平均、強弱材料で膠着。目先は下値を警戒(窪田真之) 

トウシル / 2024年6月3日 8時0分

日経平均、強弱材料で膠着。目先は下値を警戒(窪田真之) 

日経平均、強弱材料で膠着。目先は下値を警戒(窪田真之) 

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
日経平均、やや膠着 。目先は、下値警戒

強弱材料きっこう、日経平均は上下とも大きく動かず

 先週(営業日5月27~31日)の日経平均株価は、1週間で158円(0.4%)下がって3万8,487円となりました。強弱材料がきっこうして、日経平均にやや膠着(こうちゃく)色が出ています。

 米国株が強いことが、日経平均の下値を支えていますが、米国株はここまでの上昇ピッチがやや速すぎ、足元少し息切れ感があります。米国株が下がると、日本株も下がる可能性があることに、注意が必要です。

日経平均・ナスダック総合指数の週次推移比較:2021年末~2024年5月31日

出所:2021年末の値を100として指数化、QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 以下が、日本株の強弱材料の中で、今、一番注目されているポイントです。

強材料

【1】米国株強い、エヌビディア祭り【注】続く

弱材料

【1】米インフレ・米金利高止まりで、生成AIラリーが一服する可能性も
【2】日本の長期金利にも上昇圧力
【3】日本企業の企業業績モメンタム低下。今期(2025年3月期)予想が保守的

【注】エヌビディア祭り
 エヌビディア(NVDA)を中核とした、米国の生成AI関連株のラリー(上昇)を、「エヌビディア祭り」と呼んでいます。

 エヌビディアは、生成AI向け半導体の9割以上を独占的に供給、生成AI向け半導体の需要急増に供給が追い付かない中で、異例の高い利益率を得ています。生成AIが世界中のビジネスを変革させる期待から、株式市場ではその関連銘柄が急騰して世界の株式市場をけん引しています。

 ただし、生成AIそのものは現時点でまだ開発段階で、大きな利益を生んでいるわけではありません。生成AI関連で実際に高い利益をあげているのは、生成AIへの投資急増で恩恵を受けるエヌビディアなどに限られることから、エヌビディアが生成AIラリーの中核となっています。

米国株強い、エヌビディア祭りが続いている

 足元の米国株および日本株にとって最も重要な材料は、米半導体大手エヌビディア株の値動きと思われます。米国株を今、けん引しているのは、生成AI関連株です。その中核にあるエヌビディアの株価がどう動くかによって、米国株ひいては世界中の株の動きが決まるとすら、思われています。

 そのエヌビディアが5月22日に発表した2024年2-4月(2025年1月期第1四半期)決算は、売上高が前年同期比3.6倍の260.4億ドル、純利益は7.3倍の148.8億ドルで、市場予想を大幅に上回るポジティブ・サプライズ(良くて驚き)でした。

 株価は決算を好感して、急騰しました。決算発表前に、そろそろエヌビディア祭り(注)が終わると見る向きもありましたが、杞憂(きゆう)でした。

エヌビディア株の週次推移:2022年末~2024年5月31日

出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成

 エヌビディア株の時価総額は5月末時点、日本円換算で約420兆円です。東京証券取引所(東証)の時価総額が975兆円ですから、エヌビディア1社で東証全体の43%に匹敵します。エヌビディア株の急騰が、米国株にとっても日本株にとってもいかに大きなインパクトがあるか分かります。

 ところで、エヌビディア株は、割安でしょうか? PER(株価収益率)で判断するのが一般的です。同社の、実績PER(2024年1月期の利益実績から計算するPER)は、92倍で、割高とみえます。より重要なのは、今期(2025年1月期)の予想PERです。楽天証券予想に基づく、今期予想PERは43倍です。割安とは言えませんが、高成長株として割高ではありません。

米インフレ・金利高止まり

 米インフレ・金利が高止まっていることが、米国株および日本株にとって重大な悪材料となっています。9月と考えられている利下げがなければ、高金利によって米国株が調整する可能性が高まります。

米インフレ率(CPI(消費者物価指数)総合・コア指数の前年比上昇率)推移:2020年1月~2024年4月

出所:米労働省より楽天証券経済研究所が作成

 米インフレが2%に向けて低下してこない限り、FRB(米連邦準備制度理事会)は利下げをしにくいと示唆していることから、このままだと9月の利下げが実現しないとの懸念があります。

 一方、日本のインフレ率も上がってきています。米国ほど高くはありませんが、以下の通り、2%台のインフレ率が実現しつつあります。

日本のインフレ率(CPI総合・コアコア指数の前年比上昇率)推移:2020年1月~2024年4月

出所:総務省統計局より楽天証券経済研究所が作成

 日米の総合インフレ率を比較すると、日本も米国と同じようにインフレが高まっていることが分かります。その割には、米国と比べ、日本の長期金利はかなり低い位置にあります。

日米の総合インフレ率比較:2020年1月~2024年4月

出所:総務省・米労働省より楽天証券経済研究所が作成

 日本も米国と同じようにインフレ率が高くなってきていることを考えると、日本の長期(10年)金利が1%台に乗せてきましたが、さらなる上昇の余地があると考えられます。日本銀行(日銀)は、いずれ利上げを行うと予想しています。

今期の企業業績予想が保守的

 足元、懸念されているのが、日本の企業業績のモメンタム低下です。ちょうど、2024年3月期決算が出そろいました。前期(2024年3月期)実績は想定以上に強かったのですが、今期(2025年3月期)の企業業績(会社予想)が保守的(低め)であることが、日本株の上値を抑えています。

東証プライム上場3月期決算、主要841社の連結純利益(前期比%):2020年3月期~2025年3月期予想

出所:楽天証券経済研究所が作成、2025年3月期について会社予想を発表しない一部企業については市場予想を使用

 いつもの通り、企業の業績予想は保守的でいずれ上方修正されてくると、予想しています。それにしても、前期と比べて業績のモメンタムが低下する見通しであることは、日本株の上値を抑える要因となっています。

日本株の投資判断

 日本株は割安で、長期的には上値余地が大きいと考えていますが、目先、米国株が反落するときは、ショック安となるリスクもあり、注意が必要です。短期的には、警戒が怠れないと思います。

 時間分散しながら、割安な日本株を買い増ししていくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えています。

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(窪田 真之)

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