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日経平均を動かす外国人投機筋の動きが丸分かり、裁定買い残の変化を読む(窪田真之)

トウシル / 2024年6月11日 7時0分

日経平均を動かす外国人投機筋の動きが丸分かり、裁定買い残の変化を読む(窪田真之)

日経平均を動かす外国人投機筋の動きが丸分かり、裁定買い残の変化を読む(窪田真之)

今週の重大イベント:日米の金融政策発表へ

 今週は、日米それぞれの金融政策発表があります。その内容次第では、日経平均株価(225種)が大きく動くきっかけとなる可能性もあります。6月12日(日本時間では13日未明)にFOMC(米連邦公開市場委員会)、14日(金)昼ごろに日本銀行金融政策決定会合の結果発表があります。

 日米ともに重要な政策変更はないと考えられますが、先行きの金融政策についてどのような示唆があるかが重要です。注目ポイントは二つ。

【1】株式市場は9月にも米利下げが始まることを期待していますが、その期待に対して、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)がFOMCでどういうメッセージを出すかが注目点です。

【2】日銀については、7月にも利上げがあるか注目されています。今回の6月会合では先行きについて、どれくらいタカ派トーンの話が出るかが、注目点です。

 日米ともタカ派トーンならば株式市場にマイナス影響が及ぶ可能性があります。日米ともハト派トーンならば、プラス影響になる可能性があります。日米の金融政策発表後に、どういう反応があるか注目されます。

日本株を動かす外国人の先物売買

 本欄で繰り返しお伝えしている通り、日本株を動かしているのは外国人投資家です。外国人が買い越す月は日経平均が上昇し、外国人が売り越す月は日経平均が下落する傾向が30年以上、続いています。

日経平均と外国人の売買動向(買い越しまたは売り越し額、株式現物と先物の合計):2022年1月4日~2024年6月10日(外国人売買動向は2024年5月31日まで)

出所:東京証券取引所データ、QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 2022年は、日経平均は狭いレンジのボックス圏で推移していました。外国人投資家の売買動向が定まらず、買ったり売ったりを繰り返していたからです。2023年に入ると、ボックスを上放れして、大きく上昇しました。2024年も年初からさらに上昇しました。外国人投資家の買いが上昇をけん引しました。

 中でも、外国人投機筋による株価指数先物(日経平均先物・TOPIX[東証株価指数]先物など)の売買は大きな影響力を持っています。過去の急落急騰は、ほとんど外国人の先物売買で演出されてきました。

 その動きをくっきりと表しているのが、裁定買い残高の変化です。詳しく説明すると難解になるので、説明は割愛して結論だけ述べます。

 東京証券取引所が発表している「裁定買い残」の変化に、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「買い建て」の変化が表れます。外国人の先物買い建てが増えると裁定買い残が増え、買い建てが減ると裁定買い残が減ります。

2021年7月以降の日経平均の動きと、投機筋の先物売買

 2021年7月以降の日経平均と裁定買い残高の動きは、以下の通りです。

日経平均と裁定売り残・買い残の推移:2021年7月4日~2024年6月10日(裁定売買残高は5月31日まで)

出所:QUICK・東京証券取引所データより楽天証券経済研究所が作成

 日経平均の上昇下落に合わせて、裁定買い残高が増加減少していることが分かります。相場が大きく動くときは、以下【1】【2】のどちらかが起こっていることが多いことが分かります。

【1】外国人の日経平均先物買いの増加→裁定買い残の増加→日経平均上昇

【2】外国人の日経平均先物売りの増加→裁定買い残の減少→日経平均下落

 2021年7月から2023年12月までは、裁定買い残高が1.5兆円(紫の線を引いたところ)に近づくと、減少に転じることが多かったことが分かります。つまり、裁定買い残高が1.5兆円まで増加したら、日経平均反落を警戒した方が良かったことになります。

 2024年に入ってから、裁定買い残はさらに大きく増加しました。足元、2.6兆円近くまで増えています。投機的な先物買い建てが増えていることには注意が必要です。

 ただ、裁定買い残高がいくらになったら反落に向かうという、特定の警戒水準はありません。過去には、買い残が3.5兆円まで増加してから反落に向かうことを繰り返したこともあります。その時々で、どこがピークとなるか異なります。

 説明が少し難しくて分からなかったかもしれません。結論だけ理解してください。結論は、「日経平均の短期的な値動きは、投機筋、主に外国人の日経平均先物売買が先導している」ということです。

裁定残高5月末で2兆5,850億円、投機筋の先物買い建て増加に警戒を

 裁定買い残は5月31日時点で、2兆5,850億円です。外国人投資家による日経平均先物の投機的な買い建てが増えてきていることには、注意が必要です。ただし、裁定買い残高がいくらになったらピークアウトするかは、その時々の投資環境によって異なります。ここから減少に転じるのか、あるいは、さらに3兆超えまで増えていくのかは分かりません。

 裁定残高から分かることは、投機筋の先物買い建てが増えてきていて、少し警戒を要するということだけです。これだけで、短期的な日経平均が予想できるわけではありません。先行きを予想するためには、ファンダメンタルズ(景気・企業業績)の変化と、投機筋の動きを両方見ていく必要があります。

▼著者おすすめのバックナンバー

2020年2月26日:[世界株安]日経平均も急落続く見込み。裁定買い残から日本株は押し目買い方針
2019年1月9日:「裁定買い残」から外国人売買動向を読み解く:6,000億円割れ→売られ過ぎ?
2015年5月8日:裁定買い残が3.5兆円にこれは売りシグナルか?

(窪田 真之)

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