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米雇用統計、ここ半年で152万人増、78万人減、どっちが本当?

トウシル / 2024年6月13日 7時30分

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米雇用統計、ここ半年で152万人増、78万人減、どっちが本当?

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の白石 定之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
米雇用統計、ここ半年で152万人増、78万人減、どっちが本当?

5月米雇用統計は、事業所調査と家計調査で異なる結果に

 米国労働省が6月7日に発表した5月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が市場予想を大幅に上回る前月比27万2,000人のプラス、ここ半年間の累計でも152万9,000人ものプラスとなっていて、「米国の雇用は引き続き強い!」との声が多く聞かれます。

 しかし、一方で同じ米国労働省が発表している別の公表値では、5月の就業者数が前月比40万8,000人のマイナス、ここ半年の累計では78万3,000人ものマイナスとなっていて、冒頭の数字とは真逆の状態となっています。

 一方は強い数字で、もう一方は弱い数字。果たして、どちらが本当なのでしょうか。今回、この点についてお伝えしていきたいと思います。

 まず、米国労働省が発表している雇用統計は、「Establishment data(事業所調査)」と「Household data(家計調査)」の二つがあり、事業所調査においては非農業部門雇用者数や平均賃金が、家計調査の方では失業率や労働参加率が注目されています。

 今回、発表された27万2,000人増は、事業所調査における非農業部門雇用者数の数字で、この非農業部門雇用者数はニュースでも多く報道されているので、特に注目している方も多いと思います。

 ここ1年の非農業部門雇用者数の推移を見てみると、次のようになっています。

(表1)米国労働省「Establishment data(事業所調査)」非農業部門雇用者数の推移

出所:米国労働省労働統計局(BLS)公表データよりマネーブレインが作成

 この表を見ると、毎月プラスが続いていて、5月は27万2,000人増、昨年12月から今年5月までのここ半年間では152万9,000人もの大幅な増加と、この表からは、「労働市場は堅調!」と言えます。

 一方で、ニュースではあまり報道されることのない家計調査の就業者数の推移を見てみると、次のようになっています。

(表2)米国労働省「Household data(家計調査)」就業者数の推移

出所:米国労働省労働統計局(BLS)公表データよりマネーブレインが作成

 こちらは、表1の事業所調査の非農業部門雇用者数の推移とは全く異なり、5月は40万8,000人の減少、ここ半年間ではマイナス78万3,000人となっています。こちらの表からは、「労働市場は弱くなっている」と見受けられ、どう見ても「労働市場は堅調!」とは言えない状況にあります。

事業所調査が152万9,000人増、家計調査は78万3,000人減

 どちらが本当なのかですが、ともに米国労働省が発表している数字なので、どちらも本当と言えるでしょう。

 ちなみに、ここ半年間の増減数に着目してみると、事業所調査が152万9,000人増、家計調査は78万3,000人減で、その差は231万2,000人で事業所調査の方が多くなっています。

 ここまで差がついたことは、過去50年をさかのぼってみても、コロナショックのイレギュラーな時期を除くとありません。強いて言えば、同じ傾向にあったのは2年前、2022年の米国中間選挙の前の時期のみとなっています。

 また、家計調査の方で直近の就業者数の6カ月前比増減率を見てみると、マイナス0.48%となっています。さかのぼってみるとこの数字は、コロナショック時、リーマン・ショック前、ITバブル崩壊時と、株式市場が大きく下落したときにしか出ていない数字ですが、今回その数字が出ているということになります。

 米国株の堅調な動きや、注目されている事業所調査の非農業部門雇用者数から「米国経済は堅調!」という声も多いように思います。しかし一方では真逆の、しかも、過去に株式市場が大きな下落を伴ったときにしか出ないような弱い数字が出ていることも併せて認識しておかないと、資産運用をする上では危ういのではないかと私は考えています。

 投資はあくまでも自己責任で。

(白石 定之)

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