ドル円方向感失う、米利下げは物価次第で年内2回の可能性!?日銀は7月国債購入減額と同時に利上げも
トウシル / 2024年6月19日 16時0分
ドル円方向感失う、米利下げは物価次第で年内2回の可能性!?日銀は7月国債購入減額と同時に利上げも
FOMC年内利下げ見通し1回となるも、今後の物価次第で2回の可能性も
先週の重要イベント、米国の5月CPI(消費者物価指数)公表とFOMC(連邦公開市場委員会)、日本銀行の金融政策決定会合を終えて、ドル円は上下に乱高下しました。しかし、その値幅は少なく、結局は若干の円安となったものの、ほとんど水準は変わっていません。
ただ、イベントの内容で方向感が定まらなかった一方で、今後の先行きを示す重要な内容でした。まずは、12日から14日のドル円の動きをイベントとともに振り返ってみたいと思います。
12日のFOMCの結果発表前に米5月CPIが発表されました。米5月CPIの上昇率は前月比0.0%、前年同月比3.3%と市場予想を下回りました。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアCPIも4月より伸びが鈍化しました。このことから、年内の利下げ観測が強まってドル売りとなり、1ドル=157円台前半から155円台後半の円高となりました。
しかし、その後、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)がFOMCで政策金利(5.25~5.50%)の予想通り据え置きを決定した一方、今年末の政策金利見通しが前回3月時点の4.6%から5.1%に上方修正しました。これは年内の利下げ想定が3回から1回に減ったことになります。
市場では、年内の利下げ回数が3回から2回に減るとの見方が大半だったことや、参加者のうち4人が年内利下げゼロを予想したことから、1ドル=156円台半ばに上昇しました。さらに、FRBのパウエル議長は記者会見でタカ派色は薄めたものの、ハト派姿勢を強めることもなかったため、米金利が上昇する中、1ドル=156円台後半に上昇しました。
このようにCPIの低下で利下げ観測が強まり、一時はドル売りの動きとなっていましたが、FOMCの引き続き利下げに慎重な姿勢を受けて再びドル売りは後退しました。これによりドル円は「往って来い」の相場となり、CPI、FOMC前後で50銭程度の円安にとどまりました。
今回の金利見通しで、年内利下げ回数が3回から1回に引き下げられた点について、あくまで中央値が1回ということです。FOMC参加者では、年内利下げを2回と見込むのが19人中8人と最も多く、1回は7人であったため、今後のデータ次第ではこの見通しが変わりやすいことが予想されます。
パウエル議長はCPI発表後も、多くの参加者が金利見通しを発表しなかったと述べており、今回のCPIの伸び鈍化に対して、かなり慎重姿勢になっていることがうかがえます。
つまり、来月のCPIも鈍化傾向を示せば、FOMC参加者の見方が変わる可能性が大いにあるということです。年内利下げ回数は2回にすぐ変わる可能性もありそうなので、年内1回というよりも、年内1~2回とみた方がよさそうです。
また、来年2025年の利下げ回数は3月の3回から4回、2026年も3回から4回に増えています。2024年と合わせた利下げ回数は、3月時点から変わらず9回という点は留意しておく必要があります。足元では利下げに慎重姿勢ですが、利下げ方針に変化はないことが読み取れます。
日銀、国債買い入れ減額方針決定も具体策先送り、円安に
14日の日銀金融政策決定会合では、政策金利は現行の0~0.1%の据え置きを決定し、注目された月6兆円程度の国債買い入れについては減額方針を決めました。次回7月30~31日の決定会合で今後1~2年程度の具体的な減額計画を決定するとのことです。
市場は今回の会合で減額を期待していたため、減額がなかったことへの失望感から1ドル=158円台前半へと円安が進みました。
しかし、植田和男総裁は記者会見で、減額は「相応の規模」と述べたことや、7月利上げの可能性を否定しなかったため、早期利上げを示唆させる内容と捉えられて円買いが進み、一時1ドル=157円割れとなりました。
今回、減額方針を決定したことは、大規模な金融緩和の転換を示す大きな一歩となりました。国債買い入れの減額は量的引き締めとなるため、通常であれば円高要因になりますが、今回の会合で直ちに始めなかったことから、市場は引き締めに慎重な「ハト派」的な決定と受け止め円安が進行しました。
日銀総裁7月利上げ示唆?国債買い入れ減額と同時の可能性も
国債買い入れ減額が事前に報道され、市場も期待していたにもかかわらず「先送り」となったことで市場は肩透かしを食らい、来月に買い入れ減額するなら利上げは同時にないだろうとの見方が増えてきています。
しかし、植田総裁は会合後の記者会見だけでなく、18日の参議院財政金融委員会でも7月利上げを示唆しています。植田総裁は、「次回(7月会合)までに入手可能になる経済物価金融情勢に関するデータや情報次第だが、場合によっては政策金利が引き上げられるということも十分にあり得る」と発言し、国債買い入れの減額計画を決める予定の7月の金融政策決定会合で利上げを決める可能性があることを示しました。
その一方で、「国債の買い入れ減額と政策金利の引き上げは別のもの」とも強調しており、国債購入の減額規模については「今後1カ月間の検討の結果決まる」と述べました。
今回、国債買い入れ減額の決定先送りに加え、長期的には「相応」の減額規模になるという不確実要因が市場に提供されたことから、円売りしにくくなるかもしれません。また、実際の決定を先送りしたことから、年後半のどこかで予想されるFRBの利下げ局面に少しでも近づける努力をしたとも考えられます。その理由としては、利上げと利下げの時期が近いほど市場に与える影響が大きくなることが予想されるからです。
しかし、市場にはかなりの不確実要因が増えたことになります。慎重姿勢で進めてきた金融正常化を一気に進めることになるかもしれないので、市場の期待通り、あるいは期待以上の内容となれば、円高に大きく反転することが予想されます。
果たして、減額と利上げを同時に変更できるのかどうか、不確実性を払拭(ふっしょく)するために日銀のコミュニケーション能力がますます必要な局面になってきました。どちらにしろ、7月までは円売りも円買いも大きく動きにくくなりそうです。
(ハッサク)
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