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中国の5月主要統計発表。迷走続ける景気と出口の見えない不動産不況

トウシル / 2024年6月20日 7時30分

中国の5月主要統計発表。迷走続ける景気と出口の見えない不動産不況

中国の5月主要統計発表。迷走続ける景気と出口の見えない不動産不況

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の加藤 嘉一が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
中国の5月主要統計発表。迷走続ける景気と出口の見えない不動産不況

中国経済5月の主要統計が発表。景気を巡る各データは錯綜の様相

 中国国家統計局が6月17日、5月(1~5月)の経済統計を発表しました。

 主な結果は以下の通りです。

工業生産 5.6%
小売売上 3.7%
固定資産投資(1~5月) 4.0%
不動産開発投資(1~5月) ▲10.1%
輸出入 8.6%(うち輸出11.2%/輸入5.2%)
失業率(調査ベース/農村部除く) 5.0%
CPI(消費者物価指数) 0.3%
PPI(生産者物価指数) ▲1.4%
中国国家統計局の発表を基に筆者作成、数字は前年同月(期)比
▲はマイナス

 工業生産は4月の6.7%増から減速した一方、小売売上は4月の2.3%増から伸びが加速しています。市場予想との比較でいうと、前者(6.0%増)は下回り、後者(3.0%増)は上回っています。固定資産投資は1~4月の4.2%増から減速。また、デフレリスクという意味で懸念されてきたCPI(消費者物価指数)とPPI(生産者物価指数)は一時期に比べれば回復しているように見受けられますが、「デフレ基調」から脱却したとはいえないでしょう。

 投資の内訳を見ると、製造業投資が9.6%増となり、「中国製造2025」をはじめとした産業政策、イノベーション、科学技術振興を掲げる中国政府のこの分野に対する重視を表しているといえます。一方、民間投資は0.1%増にとどまり、1~4月の0.3%増からさらに減速、国有機関による投資の7.1%増に大きく差を付けられています。

 私が見る限り、習近平(シー・ジンピン)政権として、明らかな「国有重視、民間軽視」を掲げているわけではなく、民間企業や民間経済を重視する、支援しようとする政策も垣間見えますが、これらの数字が物語るように、結果的に民間セクターによる投資が落ち込んでいる現状は、中国経済の持続可能な成長、および信用担保という意味ではリスク要因であると考えます。

不動産開発投資はマイナス2桁に下落、不動産不況は続く

 やはり目を引いたのは不動産関連の数値です。上の図表にもあるように、1~5月の不動産開発投資は10.1%減(うち住宅10.6%減)となり、1~4月の9.8%減から下げ幅が拡大しています。

 地域別に見てみると、東部地区が8.8%減、中部地区が10.6%減、西部地区が12.6%減、東北地区が19.2%減ということで、経済発展が遅れている、あるいは成長が鈍化している地域ほど数字が悪い現状が見て取れます。中国経済を巡る「格差」問題を象徴する現状だといえます。

 また、同時期における不動産販売は床面積ベースで前年同期比20.3%減(1~4月は20.2%減)、新規着工(同)は24.2%減(1~4月は24.6%減)、不動産開発会社が調達した資金は24.3%減(1~4月は24.9%減)ということで、依然として不動産不況が続いている、少なくとも数字から見る限り、そこから脱却できる兆候は見いだせないと言わざるを得ません。

中国政府の現状認識と今後の見通し

 このような現状を、中国政府はどう認識しているのでしょうか。

 主要統計が発表された6月17日、国家統計局は会見を開き、劉愛華報道官が記者からの質問に答えています。まず、5月の景気全体について次のように述べています。

「5月はマクロ政策による効果が持続的に表れており、外需にも回復が見られた。ゴールデンウイーク休暇といった要素もあり、サービス業、消費、輸出入は回復。工業生産も比較的速い成長を保持し、雇用や物価も安定している(中略)。と同時に、外部環境の複雑性と深刻度は上がっており、国内における有効な需要も依然不足している。経済成長に必要な内的原動力も増強される必要がある」

 期待値と危機感が両立、共存、交錯している現状認識が読み取れるでしょう。物価に関しては、「(生産者物価指数に関わる)海外におけるコモディティ価格を巡る状況に不確実性が存在する」としつつ、「消費者物価指数は徐々に上がっていく趨勢(すうせい)を見せている」と指摘し、デフレリスクに対する火消しに走っているように見受けられました。

 約1カ月前に発表された「大胆な不動産規制緩和策、市場支援策」に関して、その効果が出ているのかという質問に対しては、「政策の効果が出るまでには一定の時間が必要であり、不動産市場は依然として調整のプロセスにある」と回答。問題はどのくらいの時間を要するかでしょう。私自身は、2024年いっぱいを観察、様子見の期間にしようと考えており、今年末の段階で、前述した不動産関連の数値がどの程度まで回復するのかを見た上で、中国不動産市場の今後を判断したいと思っています。

 今後の見通しとして、最大の焦点はやはり7月に開催すると発表された三中全会を巡る動向です。現時点では具体的な日程や詳細な議題など発表されていません。経済情勢・政策がアジェンダに入ることは間違いなく、三中全会の前後で、中国経済、市場動向がどう推移するのかに注目していきたいと思います。

(加藤 嘉一)

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