[今週の日経平均&株式市場]今週のエヌビディア決算を要チェック!米国株市場と為替市場のはざまで
トウシル / 2024年8月26日 12時7分
[今週の日経平均&株式市場]今週のエヌビディア決算を要チェック!米国株市場と為替市場のはざまで
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「今週の日本株 米株市場と為替市場のはざまで ~米エヌビディア決算が分水嶺か~」
先週末8月23日(金)の日経平均株価は3万8,364円で取引を終えました。前週末終値(3万8,062円)からは302円高、週間ベースでも2週連続の上昇となっています。
3万8,000円台に乗せてからの上値は重たさも感じられ、前週の戻り幅(3,037円)と比べると、かなり勢いは弱まっている印象ですが、下値は意外にもしっかり切り上げていて、全体的に戻り基調は続けていると言えます。
ただし、今週もこのまま戻り基調を続けられるかについては、イマイチ自信が持ちにくい状況でもあります。
というのも、注目されていた23日(金)のジャクソンホール会議(カンザス連銀主催の経済シンポジウム)でのパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演が、市場の予想通り、9月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げ開始をほぼ決定づけるような内容だったことで、米国株市場の主要株価指数が揃って上昇しました。
一方、為替市場では円高ドル安に振れており、こうした動きを受けた日経225先物取引の終値が、大阪取引所で3万8,280円、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で3万8,300円となるなど、為替市場が微妙に足を引っ張る格好となっています。
8月の最終週となる今週は、28日(水)に米半導体大手企業のエヌビディア(NVDA)が決算を発表するほか、週末の30日(金)にはFRBが金融政策の判断材料として注目する7月個人消費支出(PCE)が公表されるスケジュールとなっており、今週の国内株市場は、為替とエヌビディア決算をにらみながらの展開が予想されます。
3万8,000円台の攻防となった日経平均。上値トライのハードルは変わらず
まずはいつもの通り、先週の日経平均の値動きから確認していきます。
図1 日経平均(日足)の動き(2024年8月23日時点)
上の図1や冒頭でも述べた通り、先週の日経平均は週を通じて3万8,000円台を挟んだ値動きが続いたわけですが、ローソク足では陽線(終値が始値よりも高い線)の方が多くなっているだけでなく、5日移動平均線よりも上の位置をキープしていたこともあり、相場の足取り自体は意外としっかりしていました。
また、今後の日経平均が上値を試すのに超えるべきハードルは、図1の75日移動平均線をはじめ、引き続き前回のレポートでも指摘していた週足チャートの13週もしくは26週移動平均線であることに変わりありません(下の図2)。
図2 日経平均(週足)の動き(2024年8月23日時点)
上の図2を見ると、足元の日経平均がこれらの移動平均線に届くまで「あと少しの距離」と言えるところまで迫っていることが分かりますが、先週の東証プライム市場の売買代金は週初の19日(月)こそ4兆円台だったものの、以降は週末までずっと3兆円台にとどまっており、売買が盛り上がりに欠けていたため、移動平均線の上抜けを積極的にトライするほどの勢いが出てこなかったと思われます(下の図3)。
図3 東証プライム市場の売買代金と騰落銘柄数
先週の米国株市場はパウエルFRB議長の講演を好感。だが気になるサインも
「戻り基調ではあるものの、力強さがイマイチ感じられない」日本株に対して、順調に戻りを進めていていたのが米国株です。
図4 日米の主要株価指数の「戻り」の状況(2024年8月23日時点)
上の図4にもあるように、日米の主要株価指数の直近高値から安値までの下げ幅に対する「戻り率」の状況を確認すると、日本株よりも米国株の戻り率が高くなっているほか、とりわけNYダウとS&P500については下げ幅の9割以上も戻しており、直近高値へのキャッチアップや、さらにその先の高値更新の期待も感じさせているようにも見えます。
とはいえ、気掛かりな点がないというわけでもありません。S&P500とNASDAQの日足チャートを見ると、週末にかけての3日間のローソク足の並びが、22日(木)の大きめの陰線を中心に、前日の21日(水)とでは「包み足(抱き線)」、翌23日(金)とでは「はらみ足」となっています。
包み足とはらみ足はともに「天井をつける際に現れやすい形」とされているため、一応注意しておく必要があります(下の図5と図6)。
図5 米S&P500(日足)の動き(2024年8月23日時点)
図6 米NASDAQ(日足)の動き(2024年8月23日時点)
そもそも、9月の米FOMCで利下げを実施する見通しであったことは、株価が急落する前と変わっていません。すでに前提として織り込んでいた材料で高値を更新するのは無理があります。
「9月の次の利下げ」、もしくは「9月の利下げ幅の拡大(0.25%から0.5%)」などが意識されているのかもしれませんが、継続的な株価上昇にはさらなるポジティブな材料が欲しいところです。
やっぱり、今週の相場を左右するのはあの銘柄
そのため、今週以降も買いの勢いが続くかが米国株市場の焦点となるわけですが、その行方を左右しそうなのが、28日(水)に決算発表予定の米半導体企業のエヌビディアです。
図7 米エヌビディア(日足)の動き(2024年8月23日時点)
先週末23日(金)のエヌビディア株の終値は129.37ドルでした。ここ2~3週間の株価は戻り基調を描き、25日や50日移動平均線を上抜けてきましたが、ここ数営業日は6月20日と7月11日の高値どうしを結んだ「上値ライン」を意識する攻防戦の値動きとなっています。
恐らく決算発表日の28日(水)まではこのような値動きが続き、決算を受けて上下のいずれかの方向へ動き出す展開が想定されます。
直近の過去2回の同社決算では、「市場の高い期待をさらに上回る業績見通しを示す」ことで、決算発表後の株価が大きく上振れてきましたが、今回の決算も同様の展開が繰り返されるのかが注目されます。
とはいえ、決算の度に期待のハードルが上がってきていることもあり、決算がかなり良い内容だったとしても、市場がネガティブに反応してしまうことも考えられます。そのため、エヌビディア決算に対する市場のスタンスは、結構「出たとこ勝負」な面で、決算後の株価の値動きが大きくなるかもしれません。
日本株は円高の重石に抗えるかが焦点
また、足元の日本株については、こうした米国株市場の動きに加え、「為替市場の円高の重石にどこまで抗えるか?」が焦点になります。
先週末のパウエルFRB議長の講演を受けた為替市場は1ドル=145円台から144円台へと円高が進行しました。
しかし、トヨタ自動車(7203)の想定為替レートが145円前後で、7月に公表された日銀短観での2024年度のレートが144.77円(全規模・全産業)となっているため、ここからさらに円高が進んでしまうと、企業業績の円安効果が剥落することから、現在の為替レートは株式市場が敏感に反応しやすい水準であると言えます。
図8 ドル円(日足)の動き(2024年8月23日時点)
このほか、米国では先週の21日(水)に、米労働省が雇用統計の年次改定を行い、この1年間の就業者数の増加が下方修正される見込みであることが発表され、労働市場が思ったよりも良くない可能性が浮上してきました。ひとまず、先週末23日(金)のパウエルFRB議長の講演は無難に通過できましたが、最大のヤマ場は来週末9月6日(金)の米雇用統計(8月分)になります。
さらに、再来週の10日(火)、米大統領選挙戦のトランプ共和党候補とハリス民主党候補の討論会が開催され、13日(金)には国内先物取引の「メジャーSQ日」であることなど、市場のスケジュールはかなり慌ただしくなります。
市場がひとつひとつのイベントに過敏に反応していくのか、それとも、材料が多過ぎるためにかえって動きにくくなるのか、相場環境はとても読みにくくなり、地味にカオスっぽくなっている点には気をつけておきたいところです。
(土信田 雅之)
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