「もしトラ」、為替介入、欧州選挙などリスク満載!それでも日本株は見直し買いで上昇!?
トウシル / 2024年7月1日 13時35分
「もしトラ」、為替介入、欧州選挙などリスク満載!それでも日本株は見直し買いで上昇!?
7月第1週となる今週は、「もしトラ」(11月の米大統領選でもしもトランプ氏が再び大統領になったら)のリスク、欧州の選挙が引き起こす政治リスクの台頭、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)の利下げ開始時期や利下げペースに対する見通し表明が株式市場の焦点になりそうです。
7月5日(金)発表の6月雇用統計をはじめ、米国の重要景気・雇用指標も多数発表されます。
先週6月28日(金)には米国の5月個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)が発表。変動の激しい食品・エネルギーを除くコアPCEデフレーターは前月比でわずか0.08%の伸び、前年同月比でも2.6%の伸びにとどまり、前月4月を下回りました。
今週2日(火)にはポルトガルで開催されるECB(欧州中央銀行)のフォーラムで、パウエルFRB議長が講演を行います。
PCEデフレーターの明らかな上昇率の鈍化を受け、パウエル議長が2024年中の利下げ見通しについて、どのような発言をするのかに関心が集まりそうです。
3日(水)には、6月12日終了のFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録も公開されます。同FOMCでは参加理事らが今後の政策金利の水準を予想した「ドットチャート」が発表され、2024年の利下げ回数の中央値が年3回から1回に減りました。理事らが利下げに向けて何を議論したか、その詳細が明らかになります。
6月30日(日)に投票が終了したフランス下院選挙の第1回投票結果も不安要素です。
株式市場が恐れているのは、減税や大規模な財政出動を掲げる極右の国民連合、大幅な賃上げを主張する左派連合のどちらが存在感を増しても、フランスの財政赤字が拡大し、フランス国債が売られて金利が急上昇するリスクです。
先週末28日(金)の日経平均株価(225種)終値は前週末比986円(2.6%)高の3万9,583円と2週ぶりに大幅上昇。
機関投資家が運用指針にする米国のS&P500種指数が前週末比0.08%安とほぼ横ばいで推移する中、日本株に対する見直し買いが広がりました。
28日(金)に判明した米国物価高の鈍化や、東京市場で一時38年ぶりとなる1ドル161円20銭台をつけた円安を好感して、週明け7月1日(月)の日経平均終値は前週末比47円高の3万9,631円でした。TOPIX(東証株価指数)は34年半ぶりの高値を付けました。
インバウンド(訪日外国人客)向けの販売が好調な高島屋(8233)やJ・フロントリテイリング(3086)が先週末に今期の業績予想の上方修正を発表したことを受けて値を上げました。保険株には、日本銀行の追加利上げ観測から運用収益の改善を見込んだ買いが入りました。
日経平均は午前一時4万円に迫る場面もありましたが、午後に入って半導体株など利益確定売りに押され、前週末終値を下回る場面もありました。TOPIXや日経平均に連動するインデックス型ETF(上場投資信託)の分配金を捻出するために売りへの警戒感も上値を重くしたようです。
先週:TOPIX急反発でバブル後最高値更新!日銀7月利上げ観測で銀行・保険株が強い!
4月以降、一時3万6,700円台の安値をつけるなど停滞が続いていた日経平均株価でしたが、先週は「再び4万円台に浮上か」と思わせるような上昇トレンドが復活しました。
その立役者になったのは、国内の金利上昇が収益増加につながる保険株や銀行株、そして6月に車両認証の不正問題で急落した自動車株でした。
邦銀最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)は6月25日(火)に顧客情報の不正共有で金融庁から業務改善命令を受けたものの、悪材料出尽くしで前週比11.8%高の大幅上昇。
日本一の時価総額を誇るトヨタ自動車(7203)も7.0%高とリバウンド上昇しました。
時価総額の大きな重厚長大産業の影響力が強いTOPIXは3.1%高と、1990年1月以来となるバブル経済後の最高値を超える水準に急浮上しました。
業種別上昇率ランキングトップの保険業や2位の銀行業の急騰は、日銀が円安や物価高に対抗して7月に利上げを行うのでは、という観測が強まったことが原動力でした。
一方、2023年以降、日本株上昇のけん引役となっていた半導体株の多くは、AI(人工知能)相場の主役である米国高速半導体メーカー・エヌビディア(NVDA)が2.39%安と最高値圏から調整局面入りしたことを受けて、弱含みました。
26日(水)にはAI投資ブームで株価上昇が続いていた米国半導体メモリメーカーのマイクロン・テクノロジー(MU)が2024年6-8月期の売上高見通しを発表。その上限値が、一部の強気投資家の予想に達せず、翌27日(木)に前日比7.12%急落したことも響きました。
ただ、半導体検査装置のアドバンテスト(6857)は11.1%高と、半導体株の中で独歩高。25日(火)発表の2026年度までの中期経営計画で示された純利益目標が市場予想以上だったことが好感されました。
総じて、最高値圏からいったん急落した大型割安株など、見直し買いによるリバウンド上昇が先週の大幅な日本の株価指数上昇の支えでした。
一方、米国では27日(木)、11月5日に控えた大統領選挙で初となる民主党のバイデン大統領と共和党候補のトランプ前大統領によるテレビ討論会が開催。
お互いを「史上最悪の大統領」とののしり合った内容以上に問題視されたのは、頻繁に言葉に詰まり、力強さや精細を欠いた81歳のバイデン現大統領の高齢問題でした。
28日(金)の米国市場ではこれを受けて、トランプ前大統領が大統領選に勝利するのではという思惑が台頭。
トランプ前大統領が掲げる減税や海外からの輸入品に対する高額関税といった政策は、ようやく鎮火し始めた米国の物価高に再び火をつける可能性が高いもの。そのため、28日(金)の米国債券市場では、長期金利の指標となる10年国債の利回りが4.2%台から一時4.4%台まで急上昇。
物価指標の伸び鈍化にもかかわらず、28日の米国主要3株価指数が全て下落する要因となりました。
今週:日米ともに需給悪化。「もしトラ」リスクで金利上昇。弱含む米国株に日本株もツレ安or構わず上昇?
今週は6月30日(日)のフランス下院選挙の第1回投票結果、7月4日(木)に行われるイギリス総選挙の結果による相場急変動に注意が必要です。
具体的には、仏英ともにポピュリズム(大衆迎合)的な減税やばらまき型の財政出動を掲げる極右勢力が選挙で躍進すると、財政悪化や国債に対する信用不安が起こり、金利が上昇。
金利上昇が大敵の株価が急落するというリスクが意識される可能性があります。
さらに今週は米国の早期利下げ観測に影響を与える米国の景気・雇用関連指標も相次いで発表されます。
1日(月)にはISM(全米供給管理協会)の6月製造業景況指数。
2日(火)にはECBフォーラムでのパウエルFRB議長発言に加えて、5月雇用動態調査(JOLTS)の求人件数。
3日(水)には、給与計算代行会社のADP(オートマチック・データ・プロセッシング)社発表の6月民間雇用統計も発表。前回の5月ADP雇用統計の民間雇用者数は製造業を中心に予想を大幅に下回ったことで利下げ期待が高まり、米国株上昇に火を付けただけに今回も注目です。
同じ3日には、6月のISM非製造業景況指数や6月FOMC議事録も発表されます。
5日(金)には6月雇用統計も発表。
前回5月の非農業部門新規雇用者数は前月比27.2万人増と予想を大幅に上回り、平均時給の伸びも前月比0.4%増と加速。
今回6月雇用統計で強すぎる労働市場が多少落ち着くようだと米国株にとってポジティブでしょう。
ただ、今週の米国景気・雇用指標が予想以上に急激に落ち込むと、米国経済が長引く高金利政策でハードランディング(景気後退)に陥るリスクが想起されるため、順風満帆だった米国株の急落につながる恐れもあります。
米国では2024年4-6月期の企業決算の発表が7月中旬から始まります。決算発表の5週間前からはインサイダー(内部情報)取引防止の観点から自社株買いが禁止されています。
米国株の上昇を下支えしているのは自社株買いだといわれており、前回の禁止期間にあたる4月には、S&P500種指数が前月比4.16%安と一時的に調整局面入りしました。
これまで5月、6月と非常に順調に上昇してきただけに、自社株買い禁止による需給悪化が利食い売りの口実になるかもしれません。
日本ではTOPIXや日経平均に連動するインデックス型ETFの分配金の支払基準日が7月10日(水)前後に集中しているため、分配金捻出の売りに注意が必要でしょう。
為替市場では28日(金)に一時1ドル=161円台をつけるなど円安が進行。
前回、4月29日祝日に日本政府・日銀が5兆円規模の為替介入に踏み切った円安水準をすでに超えているため、今週、いつ何時、為替介入があっても何の不思議もありません。
前回同様、為替介入については当初ノーコメントを続ける可能性が高いため、突然の円高進行による日本株急落に注意しましょう。
先週6月28日(金)には約3年間にわたって日本政府の為替政策の実務を取り仕切ってきた財務省の神田真人財務官が7月31日(水)付けで退任することが発表されたばかり。
神田氏は2022年秋と今回2024年4~5月の為替介入を陣頭指揮してきただけに、在任中3度目となる介入に踏み切るかどうかに注目です。
(トウシル編集チーム)
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